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地味ブスはメイクが命

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「はぁ、はぁ、はぁ……」
ヤバい、ヤバい、ヤバい!!!
なんで、夏ってこんなに汗が出るの?
あ、そっか!私、ぽっちゃりだからか。
いや何、自分で認めて納得してんだよ。
悲しいだろーがよぉおおお!
私は多月たつき  明季めい
高校2年生。
アイプチが欠かせない一重ブスです。
一重でも、目が大きくてメイク映えする可愛い、美人な子は存在するけれど……
私の場合は典型的な一重だから、目付きが最高に悪いし、全然可愛くない。
だからこそ、今日もせっせと鏡の前で二重にする。
整形しろよ、とでも聴こえてきそうだけど今の私には、そんな勇気もお金もない。
アイプチで何とか二重に出来れば、今はそれでよいのだ。
「あ゛ぁ゛~!あっっづ!」
私が使っているのは接着式のやつだから、割りと頑丈にくっついてくれるんだけど、汗とか水に弱い。
ウォータープルーフとか書いてんのに。
失敗した時、水つけて擦ったら取れたんだけど。詐欺かな?
だから、汗かきたくないのに。
夏の季節だけは嫌いだ。エアコンの効いた部屋なら大好きだけど。
クラスの人、及び学年の人たちには私がアイプチをしていることは、知られてしまっている。
何故なら、思い起こせば高校1年生の時───
その時も暑い、暑い夏だった。
その時までは、誰しも「ちょっと可愛いかも……」と思っていたらしい。
アイプチで二重にすると当然、目元はパッチリになるから、すっぴんだったとしても多少は可愛らしく見える。
しかし、夏だった為に接着していたはずのノリがだんだん、汗に負けて微妙に剥がれてきていた。
「えっ」
「多月さん……」
「ヤバっ」
友達として付き合っていたクラスの子たちから、アイプチしてたんだ~!
最初から二重なんだと思ってた……
可愛いから一緒に居たのに~
など、馬鹿にしているとも取れるようなことを言われて傷付いた。
割りと可愛い系とか美人系の目立つグループに居たから、かなりいじられたり……いじめられた。
「もう、アイプチしなくて良くない?」
「偽物の目なんて、もう誰も見ないよ?」
「自分、可愛い!なんて思ってんの?」
「もう、一重ブスで居たら?」
「どんなに頑張っても、あたしらみたいにはなれないんだからさぁ!」
だんだん病んできて、学校にも行きたくなくなった。
高校を辞めようとも思った。
    そんな、ある日───
「運が良ければ、留年せずに編入出来るそうよ!」
私のことを心配してか、母がある私立学校の編入試験を勧めてきた。
周りから見れば、そんなことで?と思うかも知れない。
でも私からすれば、それほど重大で重要なことなのだ。
最初は、母も二重なんて止めたら?とか言っていたけれど、そもそも私が元から二重だったら、こんなことになってない!と母を責めてしまった。
生まれてくる赤ちゃんの顔のパーツや、体のパーツなんて好き勝手にカスタマイズ出来ないのに。
母を責めるのは、違うのに。
でも、その時の私は私のコンプレックスを分かって欲しかった。
私だって、可愛くなりたい。目付きの悪くてキツい映えない一重から、柔らかくてパッチリした可愛らしい二重になりたかった……
    アイプチとの出会いは中学生の頃。
たまたま入った、本屋で見つけたメイク雑誌にアイプチメイクの方法が載っていた。
それを知った時は衝撃で、食い入るように見ていた。
一重でも、二重になれるんだ!
接着式から、テープ式、今は非接着式やら目立たないメッシュタイプやら……
今の方が種類も方法も豊富で、どれから試そうか迷うぐらい。
便利な世の中やで。ありがたや、ありがたや……
その当時はテープ式か、接着式のノリを使用したアイプチが主流だったので、母に渋られない程度の値段のアイプチを1個ずつ試した。
ちなみに私のまぶたは皮膚が厚い上に腫れぼったいので、テープでやっても厚くて頑丈な瞼の皮膚が覆い被さり、パッチリにならない。
辛うじて二重になったとしても、数回まばたきしたり、笑ってしまうと元の一重に戻ってしまう。
その為、テープを貼って(支えとして)上からノリで塗って、プッシャーで押さえて二重にしている。
接着式のノリじゃないと、私の瞼は二重になってくれない。
だから、目を閉じたら一発で「アイプチしてるな」とバレてしまう。
動画や記事を見て真似ても、私の瞼が異常なのか、はたまた私が下手くそなのか……なかなか二重にはなってくれない。
だから、私はテープとノリの二刀流を使って二重にしている。
ぽっちゃりは、見たまんま。
食べるのが大好きな私は、痩せることを諦めている。
太っていても、顔が可愛いなら多少はイケるのでは?と思っているので、今は現状維持に努めている。
「私、試験受ける!」
私立の中でも、割りとお金のかからなさそうな学校だったので、学校に行かず自室でずっと試験勉強に専念した。
私だって、ブスだって可愛くなる権利はある!
アイプチしたっていいじゃん!
少しでも自分に自信をつける為、少しでも可愛い自分で居たい為……
全ては自分の為にやることなんだから!!
    必死の猛勉強の末、何とかギリギリで編入試験を合格し、転校することになった。
「今日から、新しい生活……」
編入してからは生活が、ガラッと変わった。
私と似たような悩みや境遇を持った子たちと仲良くなり、細やかながらも楽しい学校生活を送っている。
母に感謝だ。母に勧められていなかったら私はきっと、高校を辞めて引きこもりニートになっていたのかも知れない。


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