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深山 相一朗の憂鬱

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「お疲れ様でしたー」
「お疲れ様~」
    アフレコが終わり声優陣は各々、帰宅準備をしてスタジオを後にする。
僕も、早く愛しのみーちゃんの元へ帰る用意をして「お疲れ様でしたー」と帰ろうとすると……
「深山先輩っ」
げっ、ぶりっ子甘々女(僕が勝手に心の中で呼んでいる、朝乃さんのあだ名)から声を掛けられてしまった!
どうしよう……同じ事務所の後輩だし、無下には出来ない。
「朝乃さん、お疲れ様」
「あの……この後って、少しだけお時間ありますか……?」
そんな時間なんてねーーよ!
「ごめんね、溺愛してる彼女が待ってるから」
ぶりっ子甘々女に使う時間など、微塵もないんだよ。俺とみーちゃんのラブラブイチャイチャタイムを邪魔するな。
「えっ……深山さん、彼女居るんですか……」
「うん、そうだよ。事務所からも大々的に発表してもらったし」
「えっ、それって……どういうことですか?」
「あぁ、俺ね……数ヶ月前にストーカー被害に遭ってて……」
「そうなんですか……!?」
「えっと、本当に何も知らないの?」
「えっ?」
「ネットにも取り上げられたし、テレビのニュースでもやってたと思うんだけど……」
「あっ、本人の口から聞いた方が確実かなって……テレビとかネットって、オーバー気味に報道するじゃないですか~」
「まぁ、そうだけど……」
「だったら、深山先輩に直接聞いた方が良いかなって!」
「で、一通り話聞いて満足した?もう帰っていい?」
「今度、ご飯行きましょうよぉ~」
「あのさ、キミ。話聞いてた?」
「はいっ」
「じゃあ、無理だね」
「お茶だけでも……!」
「マネージャーを交えての打ち合わせなら、構わないけど。じゃあね、お疲れ様」

    はぁ~~~!!!
無駄な体力を使ってしまった……早く、みーちゃんに癒やしてもらおう。
でないと僕は、僕は……
いくら後輩とはいえ、これはアウトだろ。
マネージャーと社長に相談だな、これは。
とりあえず、マネージャーには話しておこう。
「お疲れ様」
「お疲れ様です、霧矢きりやさん」
「時間、遅かったな」
「いや、それが……」
「なるほどな……この件は俺から朝乃のマネージャーや社長に伝えておくから」
「ありがとう、霧矢さん」
「とりあえず、家まで安全運転で急ごう」
「感謝します!霧矢様ぁ!」
「やめろやめろ。じゃ、出発するぞ」

「ほれ、着いたぞ」
「ありがとう!じゃあ、明後日!」
「ほい、また明後日な~」
    マネージャーの霧矢さんは、本当に良い人で格好いい。
だけど、霧矢さんのプライベートは謎だ。
彼女が居るとか、結婚してるとかの情報もない。
聞いてみても「そんなこと気になるな」と言われて終わったし……
僕はもっと、霧矢さんと仲良くなりたいのにな。
霧矢さんって、僕にとっては兄貴みたいな存在で歳は確か……みーちゃんと同い年か、もう少し上だったと思う。
声もちょっと渋くて、格好いい……すごく良い声をしている。
それに良き相談相手であり、僕たち声優を大事にしてくれて守ってくれる。
本当に、良い人にマネージャーになってもらえて、僕は幸せだ。
早く、みーちゃんに癒やされよう……


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