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14. お断りです。故郷に帰って妖精さんたちと幸せに暮らしますから
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便宜を図るなどといっても、所詮は人ごとですよね。
同じような言葉を5年前にも聞きましたよ。
もう帝国はコリゴリです。
『恥知らず!』
『アルシャがそんな話を受ける筈がないの~』
全くもってその通りです。
人をバカにするのも大概にして欲しい。
「以前、私は嫌がる娘を帝国に送りました。
聖女として人の役に立って、今後の糧になるならと。
その結果、娘はボロボロに傷つけられて帰ってきた。
――帝国がしでかしたことを、忘れたとは言わせませんよ」
お母さんも厳しい表情で皇帝を睨みます。
「私たちも鬼ではありません。
帝国で万が一があれば、これからも依頼はお受けしますよ。
もちろん適正価格で」
――この国に訪れる大災厄は、決して終わってはいない
お母さんが発した言葉は、皇帝を絶望させるには十分すぎるほどのもので。
「アルシャ様。
国賓扱いします。
ついでに我が第一皇子の婚約者としましょう。
未来の皇妃です。誰もが憧れるシンデレラストーリーですよ!」
お母さんの決意が固いと見るや、皇帝は説得相手を私に切り替えたようで。
私に考える暇を与えてなるものか、とでもいうように矢継ぎ早に言葉を続けます。
――なるほど? 未来の皇妃ですか
微塵も心が揺らぎませんね。
だって私は――
「お断りです! 故郷に帰って妖精さんたちと幸せに暮らしますから」
故郷で楽しく暮らせるだけで幸せですから。
◇◆◇◆◇
邪竜の侵入事件から数か月が経ち。
帰った直後は、お母さんに憧れてちょっとだけ大げさな聖女の儀式を行ったりもしましたが。
『暇だよ!』
『見てるだけで退屈なの~』
妖精さんにはすこぶる不評なので断念。
それでも妖精と仲良くなることは出来ていて、今では更に多くの妖精さんとお喋りできるようになりました。
『次は何して遊ぶよ?』
『毎日アルシャが楽しそうで嬉しいの~』
ぶんぶん、と小さな手を上下させる妖精さんに
「今日は、近くの河で遊びましょう。
魚がいっぱい取れるように。みんなが幸せに暮せるように!」
『わ~い!』
『村の人たち、みんな陽だまりみたいなの~』
遊び感覚で手を貸してくれてます。
「アルシャ、また腕を上げたんじゃない?」
「そんなことないよ。
お母さんみたいに上手に演舞は舞えないもん」
「ふふ。そこだけは譲れないわね。
そこまで妖精に愛されて、本当にこれからが楽しみだわ~」
お母さんはそう言いながら、私の髪を撫でてくれます。
そんな様子を微笑ましく見守ってくれるのは、5年ぶりに帰ってきた私を暖かく迎えてくれた村人たち。
妖精さんたちに、お母さん。
一緒に暮らす村人たちも、何の打算もなく親切で。離れていた時を感じさせない程に暖かい。
大好きな人たちに囲まれて、毎日の生活がとても楽しいです。
――私は今、とても幸せです
同じような言葉を5年前にも聞きましたよ。
もう帝国はコリゴリです。
『恥知らず!』
『アルシャがそんな話を受ける筈がないの~』
全くもってその通りです。
人をバカにするのも大概にして欲しい。
「以前、私は嫌がる娘を帝国に送りました。
聖女として人の役に立って、今後の糧になるならと。
その結果、娘はボロボロに傷つけられて帰ってきた。
――帝国がしでかしたことを、忘れたとは言わせませんよ」
お母さんも厳しい表情で皇帝を睨みます。
「私たちも鬼ではありません。
帝国で万が一があれば、これからも依頼はお受けしますよ。
もちろん適正価格で」
――この国に訪れる大災厄は、決して終わってはいない
お母さんが発した言葉は、皇帝を絶望させるには十分すぎるほどのもので。
「アルシャ様。
国賓扱いします。
ついでに我が第一皇子の婚約者としましょう。
未来の皇妃です。誰もが憧れるシンデレラストーリーですよ!」
お母さんの決意が固いと見るや、皇帝は説得相手を私に切り替えたようで。
私に考える暇を与えてなるものか、とでもいうように矢継ぎ早に言葉を続けます。
――なるほど? 未来の皇妃ですか
微塵も心が揺らぎませんね。
だって私は――
「お断りです! 故郷に帰って妖精さんたちと幸せに暮らしますから」
故郷で楽しく暮らせるだけで幸せですから。
◇◆◇◆◇
邪竜の侵入事件から数か月が経ち。
帰った直後は、お母さんに憧れてちょっとだけ大げさな聖女の儀式を行ったりもしましたが。
『暇だよ!』
『見てるだけで退屈なの~』
妖精さんにはすこぶる不評なので断念。
それでも妖精と仲良くなることは出来ていて、今では更に多くの妖精さんとお喋りできるようになりました。
『次は何して遊ぶよ?』
『毎日アルシャが楽しそうで嬉しいの~』
ぶんぶん、と小さな手を上下させる妖精さんに
「今日は、近くの河で遊びましょう。
魚がいっぱい取れるように。みんなが幸せに暮せるように!」
『わ~い!』
『村の人たち、みんな陽だまりみたいなの~』
遊び感覚で手を貸してくれてます。
「アルシャ、また腕を上げたんじゃない?」
「そんなことないよ。
お母さんみたいに上手に演舞は舞えないもん」
「ふふ。そこだけは譲れないわね。
そこまで妖精に愛されて、本当にこれからが楽しみだわ~」
お母さんはそう言いながら、私の髪を撫でてくれます。
そんな様子を微笑ましく見守ってくれるのは、5年ぶりに帰ってきた私を暖かく迎えてくれた村人たち。
妖精さんたちに、お母さん。
一緒に暮らす村人たちも、何の打算もなく親切で。離れていた時を感じさせない程に暖かい。
大好きな人たちに囲まれて、毎日の生活がとても楽しいです。
――私は今、とても幸せです
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ストレスフリーでざまぁも決まり、サクサク読めて面白かったですぜ!
個人的に気になったのは、宰相等の部下が糞なのは当然として、皇帝の不手際の多さですかねぇ...w
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あと、ここからは自分の想像ではありますが...宰相が嘘を織り混ぜて書いたであろう報告書を見て、聖女がどう扱われてるとか知れなかったにしても、裏を取らなかった皇帝の責任はだいぶ大きいだろうなぁと感じました。
面白かったです。
最後が恋愛要素がなく、陛下のお誘いもスパッとお断りしてたのが良かったです。
これでいきなり他の王子が出てきてエンドだったら在りきたりなので、そういうのがなくて、お母さんと妖精さんと幸せにってのが、好感持てました♡
今後聖女に仕事を頼む時の値段も相応のものになるから帝国の財政がきつくなるだろうなあ責めて宰相の財産を賠償金にしていたら値段も安くて済んだんだろうなあ(魔法研究が打ち切りになれば今までの研究成果も台無しになるしやらかした事がバレたら皇帝も無事では済まないでしょうね)と言うか魔法の研究打ちきりは出来ないかな今後聖女に何か頼めば財政にダメージが来るからある程度は魔法研究の成果で対応するしかないと思います(宰相の息がかかった計画なのでイメージが悪いを理由に貴族は反対しそうですが)