上 下
10 / 14

10. これ以上、恥の上塗りをするのは止めて頂きたい!

しおりを挟む
「何をしている!
 これは命令だ。今すぐそこの無礼ものを捕らえよ!」

 宰相が苛々と兵士に命じますが従う者はおらず。

「兵士長!
 誰がお前をその地位まで導いてやったと思っている。
 楯突くなら、どうなるか分かっているよな?」

 ついには権力を盾に脅しだす始末。


「国外追放という不当な扱い。
 そんな仕打ちを受けたにも関わらず、国の危機に駆けつけて下さった聖女様に何を言うか!
 これ以上、恥の上塗りをするのは止めて頂きたい!」

 兵士長は、断固として拒否。

「おのれ。どいつもこいつも、不満ばかり言いよって!
 なら黙って見ておれ。貴様の心酔する『聖女』の幻想が崩れるのをな!」

 この場に味方がいないと悟り。
 宰相は顔を真っ赤にする、こちらに向き直りました。



◇◆◇◆◇

「どんな仕掛けを使って兵たちの心を掴んだのか分からないが。
 アルシャ、貴様を詐欺罪で捕える。
 国外追放では生温い。まともな死に方ができるとは思うなよ」

 宰相は持っていたゴテゴテした杖を向け、私を脅します。
 傍にいた兵士が、私を庇うよう間に入ろうとしますが――

「大丈夫ですよ。立場上、真っ向から逆らうのもまずいですよね?」

 私は一歩前に出ます。
 この偉そうな人には、帝国で働かされていた時から言いたい事がありましたから。

「あなたが聖女の力を信じないのは構いませんが。
 故郷には、聖女の帰りを待ってる人がいます。
 私に杖を向けるなら――それなりの抵抗はさせてもらいますよ」

『これまでのうっぷんを晴らすよ~』
『やってやるの!』

 妖精さんたちもやる気十分。

「面倒なことになると、あとで村に迷惑がかかる。
 こちらからは、手を出したらダメよ」

『ぎちょんぎちょんにしてやろうよ~』
『つまらないの~』

 張り切りすぎて、やり過ぎないように。
 念のため釘をさすと、妖精さんは不満たらたらな様子。


「ええい、そのような演技は私には通用せぬぞ。
 覚悟は良いな!」

 ――これが帝国の魔法技術の最先端だ

 そう言いながら、宰相は自慢の杖を振り抜きました。

 魔法技術の最先端ですか。
 こちらに向かってくる土塊を見ながら失笑してしまいます。
 不意打ちでも通用しないヘナチョコ魔法で、私と妖精さん達を相手にするつもりですか?


『え~いっ!』

 そんな気楽な声とともに、飛来する土塊は向きを変え

「なっ!?」

 自慢の魔法が跳ね返され、啞然とする宰相を直撃。
 吹き飛ばされ背後の岩に叩きつけられ、すっかり戦意を喪失した様子。


「こ、こ、こ、こんなことをして。
 た、タダで済むと思ってるのか!」

 ちらっと宰相の息子を見ると、ガタガタ怯えながらも杖を抜きました。
 そんなに怯えなくとも、取って食ったりしませんってば。

 それにしても面倒なことになりました。
 なるべく故郷に迷惑はかけないように、と思っていましたが。
 これは恨まれますね……。

 そんなことを考えていると――



「さてと。ただで済まないのはどちらかな……?」

 兵たちの中から出てきたのは、高貴な服に身を包んだお方。

「ち、父上!?」

 第三皇子は、呆然と呟くのでした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

神に逆らった人間が生きていける訳ないだろう?大地も空気も神の意のままだぞ?<聖女は神の愛し子>

ラララキヲ
ファンタジー
 フライアルド聖国は『聖女に護られた国』だ。『神が自分の愛し子の為に作った』のがこの国がある大地(島)である為に、聖女は王族よりも大切に扱われてきた。  それに不満を持ったのが当然『王侯貴族』だった。  彼らは遂に神に盾突き「人の尊厳を守る為に!」と神の信者たちを追い出そうとした。去らねば罪人として捕まえると言って。  そしてフライアルド聖国の歴史は動く。  『神の作り出した世界』で馬鹿な人間は現実を知る……  神「プンスコ(`3´)」 !!注!! この話に出てくる“神”は実態の無い超常的な存在です。万能神、創造神の部類です。刃物で刺したら死ぬ様な“自称神”ではありません。人間が神を名乗ってる様な謎の宗教の話ではありませんし、そんな口先だけの神(笑)を容認するものでもありませんので誤解無きよう宜しくお願いします。!!注!! ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾もあるかも。 ◇ちょっと【恋愛】もあるよ! ◇なろうにも上げてます。

完)まあ!これが噂の婚約破棄ですのね!

オリハルコン陸
ファンタジー
王子が公衆の面前で婚約破棄をしました。しかし、その場に居合わせた他国の皇女に主導権を奪われてしまいました。 さあ、どうなる?

芋くさ聖女は捨てられた先で冷徹公爵に拾われました ~後になって私の力に気付いたってもう遅い! 私は新しい居場所を見つけました~

日之影ソラ
ファンタジー
アルカンティア王国の聖女として務めを果たしてたヘスティアは、突然国王から追放勧告を受けてしまう。ヘスティアの言葉は国王には届かず、王女が新しい聖女となってしまったことで用済みとされてしまった。 田舎生まれで地位や権力に関わらず平等に力を振るう彼女を快く思っておらず、民衆からの支持がこれ以上増える前に追い出してしまいたかったようだ。 成すすべなく追い出されることになったヘスティアは、荷物をまとめて大聖堂を出ようとする。そこへ現れたのは、冷徹で有名な公爵様だった。 「行くところがないならうちにこないか? 君の力が必要なんだ」 彼の一声に頷き、冷徹公爵の領地へ赴くことに。どんなことをされるのかと内心緊張していたが、実際に話してみると優しい人で…… 一方王都では、真の聖女であるヘスティアがいなくなったことで、少しずつ歯車がズレ始めていた。 国王や王女は気づいていない。 自分たちが失った者の大きさと、手に入れてしまった力の正体に。 小説家になろうでも短編として投稿してます。

私の代わりが見つかったから契約破棄ですか……その代わりの人……私の勘が正しければ……結界詐欺師ですよ

Ryo-k
ファンタジー
「リリーナ! 貴様との契約を破棄する!」 結界魔術師リリーナにそう仰るのは、ライオネル・ウォルツ侯爵。 「彼女は結界魔術師1級を所持している。だから貴様はもう不要だ」 とシュナ・ファールと名乗る別の女性を部屋に呼んで宣言する。 リリーナは結界魔術師2級を所持している。 ライオネルの言葉が本当なら確かにすごいことだ。 ……本当なら……ね。 ※完結まで執筆済み

聖女として全力を尽くしてまいりました。しかし、好色王子に婚約破棄された挙句に国を追放されました。国がどうなるか分かっていますか?

宮城 晟峰
ファンタジー
代々、受け継がれてきた聖女の力。 それは、神との誓約のもと、決して誰にも漏らしてはいけない秘密だった。 そんな事とは知らないバカな王子に、聖女アティアは追放されてしまう。 アティアは葛藤の中、国を去り、不毛の地と言われた隣国を豊穣な地へと変えていく。 その話を聞きつけ、王子、もといい王となっていた青年は、彼女のもとを訪れるのだが……。 ※完結いたしました。お読みいただきありがとうございました。

もう、終わった話ですし

志位斗 茂家波
ファンタジー
一国が滅びた。 その知らせを聞いても、私には関係の無い事。 だってね、もう分っていたことなのよね‥‥‥ ‥‥‥たまにやりたくなる、ありきたりな婚約破棄ざまぁ(?)もの 少々物足りないような気がするので、気が向いたらオマケ書こうかな?

辺境地で冷笑され蔑まれ続けた少女は、実は土地の守護者たる聖女でした。~彼女に冷遇を向けた街人たちは、彼女が追放された後破滅を辿る~

銀灰
ファンタジー
陸の孤島、辺境の地にて、人々から魔女と噂される、薄汚れた少女があった。 少女レイラに対する冷遇の様は酷く、街中などを歩けば陰口ばかりではなく、石を投げられることさえあった。理由無き冷遇である。 ボロ小屋に住み、いつも変らぬ質素な生活を営み続けるレイラだったが、ある日彼女は、住処であるそのボロ小屋までも、開発という名目の理不尽で奪われることになる。 陸の孤島――レイラがどこにも行けぬことを知っていた街人たちは彼女にただ冷笑を向けたが、レイラはその後、誰にも知られずその地を去ることになる。 その結果――?

病弱を演じていた性悪な姉は、仮病が原因で大変なことになってしまうようです

柚木ゆず
ファンタジー
 優秀で性格の良い妹と比較されるのが嫌で、比較をされなくなる上に心配をしてもらえるようになるから。大嫌いな妹を、召し使いのように扱き使えるから。一日中ゴロゴロできて、なんでも好きな物を買ってもらえるから。  ファデアリア男爵家の長女ジュリアはそんな理由で仮病を使い、可哀想な令嬢を演じて理想的な毎日を過ごしていました。  ですが、そんな幸せな日常は――。これまで彼女が吐いてきた嘘によって、一変してしまうことになるのでした。

処理中です...