9 / 32
9. こんなのがエルフの里の秘術なのか?
しおりを挟む
「せっかくです、今日は泊まっていって下さい。友人として歓迎しますよ?」
俺たちを見送ろうとしたエマとリーシアを、ティファニアが引き止めた。エルフの里の外で待つ者のために、近くで宿も用意してあるとのこと。
「でも、ほかのエルフはよそ者を嫌がるんじゃないですか?」
「たしかに嫌がる人もいますけど……。いつまでもそんなことを言っていては、時代に取り残されてしまいます」
リーシアが不安そうに口にしたが、ティファニアはすでに決意を固めている様子。
(ティファニアがそう言う以上、俺から口を出すことは何もないな)
これはエルフの問題だろう。部外者の俺が、口を挟むべきことではないな。
そうして俺たちは、エルフの里に足を踏み入れた。
「旦那さま、なにをしてるんですか?」
「約束しただろう? 着いたら結界の修繕を手伝うって」
里に入るなり俺はあたりを見渡し、結界の観察をはじめる。修繕を手伝うつもりなら、あらかじめ結界の造りを理解しておく必要があるだろう――というのは建前で、俺を動かしたのは純粋な好奇心だった。
(あの国では、なかなか他人の作った結界を目にすることは無かったからな)
エルフの秘術ともなれば、さぞかしすごい技術が使われているに違いない! ワクワクしながら、里を覆う結界の術式を観察する。
ふむ、入口に置かれた制御台から結界を制御する方式か。古来から使われてきたオーソドックスな造りだな。俺はエルフの里の中を歩いて、結界を見て回ることにする。
「ティファニア、この里には何人ぐらい住んでるんだ?」
「5000人、といったところでしょうか」
なるほど? 人数の割には、随分と大規模な術式を使っているんだな。首を傾げながら、俺は結界の観察を続ける。
「おかしいな。とくに綻びは見当たらないぞ……?」
結界の術式に異常はなく、思った通りに動作しているようだった。まともに動作してこの程度の効果しかないなら、その方がはるかに大問題だがな。
「当然です。この秘術のおかげで、私たちはこれまで生き永らえてきたんですから。一目でここに里があると見抜いてしまった、旦那さまがおかしいのですよ!」
「完全に同意しますが、早く慣れておいた方が身のためですよ? 師匠がおかしいのは、今に始まった事ではありませんから」
ティファニアたちはそんなことを言っているが、これぐらいは誰だって見抜けるだろう。単属性の魔力のみで成り立つ、なんとも古風な結界だ。
こんなのがエルフの里の秘術なのだろうか?
「この結界は、外からの認識を遮断するものだったよな?」
「はい! モンスターだけでなく、ほかの種族との接触も極力防ぎたいので……」
俺にちょこまかと付いて歩くティファニアが、勢いよく答えた。なるほど、そんなことも言っていたな。余計な争いを避けるためエルフが人前に姿を現すことはとても珍しく、その住み処を知る者は誰もいないとか。
そう考えると、人間・獣人族・ドワーフまでもがエルフの里に足を踏み入れたのは、歴史的瞬間と言えるのではないだろうか。
「ところで、この術式を最後に更新したのはいつだ?」
「え、術式を――何ですか?」
(え、冗談だよな?)
そう思ってティファニアの様子をうかがうも、彼女はきょとんとした表情を浮かべたままだった。
俺たちを見送ろうとしたエマとリーシアを、ティファニアが引き止めた。エルフの里の外で待つ者のために、近くで宿も用意してあるとのこと。
「でも、ほかのエルフはよそ者を嫌がるんじゃないですか?」
「たしかに嫌がる人もいますけど……。いつまでもそんなことを言っていては、時代に取り残されてしまいます」
リーシアが不安そうに口にしたが、ティファニアはすでに決意を固めている様子。
(ティファニアがそう言う以上、俺から口を出すことは何もないな)
これはエルフの問題だろう。部外者の俺が、口を挟むべきことではないな。
そうして俺たちは、エルフの里に足を踏み入れた。
「旦那さま、なにをしてるんですか?」
「約束しただろう? 着いたら結界の修繕を手伝うって」
里に入るなり俺はあたりを見渡し、結界の観察をはじめる。修繕を手伝うつもりなら、あらかじめ結界の造りを理解しておく必要があるだろう――というのは建前で、俺を動かしたのは純粋な好奇心だった。
(あの国では、なかなか他人の作った結界を目にすることは無かったからな)
エルフの秘術ともなれば、さぞかしすごい技術が使われているに違いない! ワクワクしながら、里を覆う結界の術式を観察する。
ふむ、入口に置かれた制御台から結界を制御する方式か。古来から使われてきたオーソドックスな造りだな。俺はエルフの里の中を歩いて、結界を見て回ることにする。
「ティファニア、この里には何人ぐらい住んでるんだ?」
「5000人、といったところでしょうか」
なるほど? 人数の割には、随分と大規模な術式を使っているんだな。首を傾げながら、俺は結界の観察を続ける。
「おかしいな。とくに綻びは見当たらないぞ……?」
結界の術式に異常はなく、思った通りに動作しているようだった。まともに動作してこの程度の効果しかないなら、その方がはるかに大問題だがな。
「当然です。この秘術のおかげで、私たちはこれまで生き永らえてきたんですから。一目でここに里があると見抜いてしまった、旦那さまがおかしいのですよ!」
「完全に同意しますが、早く慣れておいた方が身のためですよ? 師匠がおかしいのは、今に始まった事ではありませんから」
ティファニアたちはそんなことを言っているが、これぐらいは誰だって見抜けるだろう。単属性の魔力のみで成り立つ、なんとも古風な結界だ。
こんなのがエルフの里の秘術なのだろうか?
「この結界は、外からの認識を遮断するものだったよな?」
「はい! モンスターだけでなく、ほかの種族との接触も極力防ぎたいので……」
俺にちょこまかと付いて歩くティファニアが、勢いよく答えた。なるほど、そんなことも言っていたな。余計な争いを避けるためエルフが人前に姿を現すことはとても珍しく、その住み処を知る者は誰もいないとか。
そう考えると、人間・獣人族・ドワーフまでもがエルフの里に足を踏み入れたのは、歴史的瞬間と言えるのではないだろうか。
「ところで、この術式を最後に更新したのはいつだ?」
「え、術式を――何ですか?」
(え、冗談だよな?)
そう思ってティファニアの様子をうかがうも、彼女はきょとんとした表情を浮かべたままだった。
0
お気に入りに追加
2,448
あなたにおすすめの小説
拝啓、お父様お母様 勇者パーティをクビになりました。
ちくわ feat. 亜鳳
ファンタジー
弱い、使えないと勇者パーティをクビになった
16歳の少年【カン】
しかし彼は転生者であり、勇者パーティに配属される前は【無冠の帝王】とまで謳われた最強の武・剣道者だ
これで魔導まで極めているのだが
王国より勇者の尊厳とレベルが上がるまではその実力を隠せと言われ
渋々それに付き合っていた…
だが、勘違いした勇者にパーティを追い出されてしまう
この物語はそんな最強の少年【カン】が「もう知るか!王命何かくそ食らえ!!」と実力解放して好き勝手に過ごすだけのストーリーである
※タイトルは思い付かなかったので適当です
※5話【ギルド長との対談】を持って前書きを廃止致しました
以降はあとがきに変更になります
※現在執筆に集中させて頂くべく
必要最低限の感想しか返信できません、ご理解のほどよろしくお願いいたします
※現在書き溜め中、もうしばらくお待ちください
婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。
ダンマス(異端者)
AN@RCHY
ファンタジー
幼女女神に召喚で呼び出されたシュウ。
元の世界に戻れないことを知って自由気ままに過ごすことを決めた。
人の作ったレールなんかのってやらねえぞ!
地球での痕跡をすべて消されて、幼女女神に召喚された風間修。そこで突然、ダンジョンマスターになって他のダンジョンマスターたちと競えと言われた。
戻りたくても戻る事の出来ない現実を受け入れ、異世界へ旅立つ。
始めこそ異世界だとワクワクしていたが、すぐに碇石からズレおかしなことを始めた。
小説になろうで『AN@CHY』名義で投稿している、同タイトルをアルファポリスにも投稿させていただきます。
向こうの小説を多少修正して投稿しています。
修正をかけながらなので更新ペースは不明です。
異世界巻き込まれ転移譚~無能の烙印押されましたが、勇者の力持ってます~
影茸
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれ異世界に転移することになった僕、羽島翔。
けれども相手の不手際で異世界に転移することになったにも関わらず、僕は巻き込まれた無能と罵られ勇者に嘲笑され、城から追い出されることになる。
けれども僕の人生は、巻き込まれたはずなのに勇者の力を使えることに気づいたその瞬間大きく変わり始める。
『王家の面汚し』と呼ばれ帝国へ売られた王女ですが、普通に歓迎されました……
Ryo-k
ファンタジー
王宮で開かれた側妃主催のパーティーで婚約破棄を告げられたのは、アシュリー・クローネ第一王女。
優秀と言われているラビニア・クローネ第二王女と常に比較され続け、彼女は貴族たちからは『王家の面汚し』と呼ばれ疎まれていた。
そんな彼女は、帝国との交易の条件として、帝国に送られることになる。
しかしこの時は誰も予想していなかった。
この出来事が、王国の滅亡へのカウントダウンの始まりであることを……
アシュリーが帝国で、秘められていた才能を開花するのを……
※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています。
私を裏切った相手とは関わるつもりはありません
みちこ
ファンタジー
幼なじみに嵌められて処刑された主人公、気が付いたら8年前に戻っていた。
未来を変えるために行動をする
1度裏切った相手とは関わらないように過ごす
婚約破棄されたけど前世が伝説の魔法使いだったので楽勝です
sai
ファンタジー
公爵令嬢であるオレリア・アールグレーンは魔力が多く魔法が得意な者が多い公爵家に産まれたが、魔法が一切使えなかった。
そんな中婚約者である第二王子に婚約破棄をされた衝撃で、前世で公爵家を興した伝説の魔法使いだったということを思い出す。
冤罪で国外追放になったけど、もしかしてこれだけ魔法が使えれば楽勝じゃない?
婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな
カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界
魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた
「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね?
それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」
小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く
塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう
一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが……
◇◇◇
親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります
(『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です)
◇◇◇
ようやく一区切りへの目処がついてきました
拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる