猛焔滅斬の碧刃龍

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1章【真実編】

第77話・狂乱、銃口、銀竜

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「──お゛ぁあ゛あ゛ッッ!!」

「チィ⋯。なんだ、お前は」


鬼気迫る形相のヴィルジールから、バルドールは距離を取る。
この時、攻撃を受けそうだった訳でもないバルドールが、ヴィルジールから離れた理由は1つ。

彼のその“狂気”が、あまりに不気味過ぎた為だ。


「ハァ゛─ッ!ハァ゛─ッ!」


顔面に血塗れにし、肩で呼吸をするヴィルジール。
彼は、全身の至る所に傷を負い、最早戦闘の続行は既に不可能に近い容態である。それでも尚、彼を立ち上がらせるのは、彼の中の“執念”だった。

──『ゼクス最強』と呼ばれる男がいる。
その男、ファリド・ギブソンは、明確に『その名』に恥じぬ実力の持ち主だ。そんな彼を打ち負かしたのは、生後1年にも満たない魔物。つまり、銀槍竜である。

そして、その銀槍竜が“圧倒的格上だ”と認識している相手が、バルドールという名の男。『ゼクス最強』ですらないヴィルジールが、『ゼクス最強を倒した魔物』よりも『更に格上』の相手を前に未だ立ち続けているのは、奇跡の様な話だった。

“この男を殺したい”
“銀槍竜を、自分だけの獲物としたい”

彼の中で、“それ”は焔が如く渦巻く。
激しい痛み、肉体の悲鳴、己の理性すらどうでもいいと、彼は立ち上がり続けていたのである。


「──もうやめろよッ!」


その時、ヴィルジールの背後から怒号が響いた。
自身が生み出した血溜まりの中で、彼はゆっくりと振り返る。
視線の先には、額に血管が浮き出た銀槍竜の姿があった。


「よく分かんねぇけど、アンタもう死んじまうぞ!!」

「⋯⋯⋯おぉ。銀槍竜、いつから此処にいたんだ?というか、迎撃戦は終わったのか?⋯⋯あれ。お前、身体燃えてるぞ?」

「は、はぁ⋯!?」


酷い出血が原因か、ヴィルジールは記憶が混濁していた。
独り言の様に言葉を発する彼は、無気力に首を動かす。正面に視線を戻した彼の先には、バルドールが立っていた。


「──テメェ、どこいってやがった」

「⋯⋯。⋯少し、煙草を吸いにな」

「舐めやがって⋯⋯ぶッ殺してやる⋯!!」


ヴィルジールは、構える。
先程から、ずっと戦っていたバルドールの事すらも忘れて。


「死ねえ゛ぇ゛え゛え゛──ッッ!!」


吐血しながら斬り掛かってくるヴィルジールに、バルドールは溜息を零す。半歩分だけ下がったバルドールは、静かに口を開き、そして。

ヴィルジールへ、銃を模倣した右手を向けた。


「──☾邪悪な矢ベゼ・ファル☽」

「⋯ッ!?」


直後、銀槍竜は駆け出す。
その刹那に、彼らは蒼白い光に包まれたのであった。
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