親子そろって悪役令嬢!?

マヌァ

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白魔法の文献編

200話『砦の現状 4』

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男性患者の治療も無事に終わった。

無くなっていた右腕、右足は完全に元の状態、五体満足の状態に戻った。



治療が終わり、ナナリーと2人で魔力回復ポーションを口に運ぶ。



「これは……すばらしい……!!」



扉から声が聞こえて、視線を向けると、知らない男性医師が

さっきの女性医師の隣に立っていた。

私は2人に近づいた。



「貴女が、エレノア様の愛娘、エミリア様ですね?」



男性医師の言葉に頷く。

私は、女性医師に視線を向けた。

彼女は視線を逸らして、言った。





「……しかた……なかったのよ……」





「しかた無かった……!? 

 本気で言っているのですか!?」





「何があったの?」





ナナリーが私と女性医師に問いかけた。

女性医師はナナリーの問いかけに答える。


「貴女達がここまでできるなんて知らなかったのよ……!

 私達だけじゃ力不足で……。

 こんな事になるなら、もっと延命処置を施しておけばよかった……!!」



女性医師は顔を抑えて泣き出してしまった。



医師たちは私たちがどこまで出来るのか知らなかった。

数あわせで、能力が高いだけの学生が選ばれただけだと思っていたのだろう。 



「何故もっと早く来てくれなかったのよ……」とすすり泣きながら呟く

女性医師の言葉に心が痛んだ。







「申し訳ありません。

 こちらにも、いろいろ事情があるんです。

 この件に関しては、後日、話し合いましょう。



 貴女方がどの程度治療できるかこの目で見させていただきました。

 なので、明日からの予定も組みやすくなります。



 今日は皆さんもお疲れでしょう? 別塔に旅人や商人用の宿舎があります。

 案内はこの兵舎の外にいる兵士に聞いてください」





そう言い残して男性医師は女性医師の肩を抱いて、出て行った。

釈然としない気持ちのまま、私達は兵士の案内のもと、宿舎へと移動した。


私達が寝泊りする宿舎は検問所と同じで宿屋の役割のある

L字の尖った見張り塔が目印の宿舎だった。



利用しているのは、先に着いた医師達と騎士達、それに私達だけだった。



宿舎のエントランスホールには、扉が3つに、2階への階段、

談話スペースには机とソファー、観葉植物があり、

受付のカウンターの隣にはどこかで見覚えのある

商会のマークがついた木箱が置かれている。



その隣には私達の荷物もちゃんと置かれていた。





「エミリア! 待ってたわ!」





マリエラがソファーから立ち上がってこちらに向かう。





「マリエラ、どうかしたの?」





「少し困った事が起こってね……

 みんなにも聞いて欲しいの」





マリエラの真剣な表情に、私達は頷く。


「エミリア、とりあえず部屋を借りましょう」





というナナリーの提案でカウンターにいる兵士にあいさつをする。



小分けの部屋も使えると言われたけれど

断って8人部屋にした。



先に到着している騎士や医師たちも大部屋を使ってるのに、

私達だけ小分けの部屋を使うわけにはいかないもんね。



兵士に宿舎の利用についての説明をうける。





「宿舎内の施設の利用について説明します。

 まず、部屋を借りられたお客様は

 こちらの壁掛けを常に扉にかけておいてください。



 食事は各自でとってください。

 1階の厨房はいつでも自由にお使いいただけます。



 厨房の隣にある湯浴み場も自由にお使い下さい。

 ただ、男女混合ですので女性が利用される場合は

 同性の見張りを立てておくことをオススメします。



 貴女方のお部屋は2階の右側です。

 空き部屋の壁掛けとこちらの壁掛けを交換しておいてくださいね」





私達は頷いて、兵士の指示する部屋へと向かった。




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