親子そろって悪役令嬢!?

マヌァ

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白魔法の文献編

197話『砦の現状 1』

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兵舎へ案内される間、兵士の人に詳しい状況を聞いた。



なんでも3日前に到着した医師では治療に限界があるらしく、

重度の患者の治療は炎症を抑えるのがやっとの事だと説明を受けた。



「着きました」



案内された兵舎の廊下に到着した。

長い廊下の左右にある部屋全部に床にせった兵士達がいるという。



扉は取り外し、出入りが簡単にできるようにされていた。

部屋の広さは、コルト街の宿舎の部屋と同じくらいの広さだ。

2段ベッドは解体されて1段になり、2段部分を隣に並べられていた。

1つの部屋に4人~6人の患者が寝かされている。

先に到着した医師とサポーター達が、あわただしく

部屋を行ったり来たりしていた。

その手には汚れた包帯や赤くなった水の入った桶を持っていたりと

現状の悲惨さが伝わってくる光景だった。



廊下で棒立ちしている私達に気づいた医師の1人が

私達に声をかける。女性の医師だった。



「あなた達、何をボーっとしているの!

 遅れてきた分を取り戻そうとは思わないの!?」


「あ……」



「口でのいい訳はいい。

 とっとと治療に当たりなさい!」



「「「は、はい!」」」



私とベリアル様、ナナリーとマリク君は

それぞれ左右に分かれて部屋へ入った。



私が入った部屋の人は症状は落ち着いていて、包帯も新しく替えられていた。

部屋に入った私を怪訝な顔で見つめている。



(この部屋の中には、重症の人はいないみたい……)



私は違う部屋に向かった。



(ここも、治療が終わってる……! ここも…… ここも……!)



次々に部屋に入っては見たものの、治療が終わった兵士達が

部屋に入っては出るを繰り返す私に怪訝な表情を向ける。

あせりが私をさいなむ。

「エミリア、落ち着け!」



ベリアル様に声を駆けられた。



「落ち着いてなんていられません。

 遅れを、取り戻さないと……」



「ちょっと、貴女……

 もしかしてエミリア様……? 

 うろちょろするくらいなら、外に出ていて頂いても構いませんよ」



さっきの女性医師に声をかけられる。

医師の言葉が胸に刺さる。



「エレノア様とこうも違うとは……」



落胆の篭った言葉だ。

分かっている。 遅れて来た私が悪いんだ。

この人達は、今までずっと兵士達を癒していたのだから……。



「患者を探して回る暇があるのなら、人に聞こうとは思わないの?」



医師の言葉に、私は自分の視野が狭くなっていた事に気づく。

きゅっと口を結んで、私は頭を下げた。



「遅れてやってきて、私達が邪魔なのは承知しています。

 ですが、私を重症の患者の元へ連れていって下さい」



「貴女に治せると?」



腕を組んで、睨みつけるように鋭い視線で医師は問いかける。

きっと、私はこの人に試されている。

もしかしたら、本当は馬鹿にしているだけで、見当違いかもしれない。

それでも、私にしか出来ない事をしにここに来たのだから……



私は頭を上げ、真正面から女性医師を見つめて言った。



「治せます」


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