親子そろって悪役令嬢!?

マヌァ

文字の大きさ
上 下
149 / 231
テスト期間編。

149話『弟君だった。』

しおりを挟む



午前8時頃、けっこう早い時間に学生達は先生から

中央広場に集まるように指示があった。



中央広場前には、続々と生徒達が集まり、班分けで集まり談笑していた。

私達も固まって待機する。



兵士達の姿もあり、大きな荷車から木箱を取り出して

順番に広場に並べていた。



「何が行われるんでしょうか?

 エミリア様は、エレノア院長様から何かうかがっていませんか?」



キャシーさんが集まってくる生徒達を見つめながら私に聞いてきた。



「テスト研修に関しては、宿舎にいる教師陣と話し合って、

 昨日、西門で起きた騒動などを生徒達に説明してから決めると聞きました」


「生徒達に集まる様に指示があったのは、その説明の為なのですね」



納得の表情になったキャシーさんはセンラ君と共に頷いていた。



「エミリア様、おはようございます。

 今日も、お美しいですね」



キャシーさん達と談笑していると、ネットリとした笑顔のライナーが、

取り巻きの護衛サポーターとマリク君を連れて一緒にやってきた。

自分の荷物をマリク君に全て持たせている。



「お二人共、おはようございます。

 ライナー様、ご自分の荷物をマリク君に持たせるのはどうかと思いますよ。

 学園の治癒科、並びに治癒学校の学生は平等性を謳っています。

 貴族の身分差を傘に、目立った行動は慎んだほうがよろしいかと」



私の指摘に、ライナーは一瞬だけ面白くなさそうな顔をしたが、

すぐにネットリ笑顔に戻った。



「そうでしたね。

 しかし、荷物を持ちたいと言い出したのはマックです。

 そうだろう? マック」



ライナーはマリク君に視線を向ける。

その視線には、「頷け」 という意思が込められていた。



マリク君は、一瞬 「え?」 という顔をして、しぶしぶ頷いていた。



「そ、その通りです……」



マリク君の言葉に満足したライナーは笑顔をこちらに向けて

ほらね? と言っている。



ほらねじゃないわよ、まったく。



フツフツと湧く苛立ちを押さえ込んで、

さて、どうしようかと考える。



すると、ベリアル様がライナーに声をかけた。



「ライナー殿。

 その辺にしておけ。マリク殿が嫌がっている」



「おいおい……お前、正気か?

 護衛の分際で……

 ライナー様はホスケンス伯爵家の子息だぞ。

 お前の様なものが簡単に口出ししていい相手ではない。口を慎め!」



取り巻きのライナーの護衛が一歩前に出た。



「ホスケンス家……

 ホスケンス家……!

 もしやカーラ・ホスケンスは、ライナー殿の姉か?」



ベリアル様の言葉に、ライナーと護衛は驚いている。

私も驚いたけど、顔には出さないよ。



カーラ!?

えっ……カーラって、私の侍女じゃん。

そういえば、ホスケンス家って聞き覚えがあると思っていたんだよー。

ライナーは、カーラの弟くんだったのね。

良く見ると、目が似てる……かも。


カーラは以前は王妃様ラナーさま付きの侍女だったけど、

王妃様が、将来王妃になる私の侍女にと早めに付けてくれたのだ。

エドワード殿下との婚約解消後、王妃様の元へ戻るか相談したら

このまま私の傍で働きたいということだったので、そのままになっている。



「な、何故、護衛ごときが姉様の名前を知っている!?

 姉様は王妃様付きの侍女のはずだ!

 お前、姉様とはどういう関係だ!?」



何か勘違いを起し始めたライナーに、

ベリアル様は無表情のまま、私に視線を向けた。

そういえばベリアル様を紹介してなかったね。



「ライナー様、口を謹んで下さいね。

 こちらはヴェルマ国の王子、ベリアル・ヴェルノーマ様です。

 訳あって、今は私の護衛をして下さっています。


 それと、貴方のお姉様であるカーラは現在、私の侍女をしていますよ。

 ホスケンス伯爵家には連絡済みのはずですが……。


 学園でも私の護衛であるベリアル様が、カーラを知っているのは当然です」





私の言葉にライナーはさらに驚いた顔になっている。

それと護衛も驚いて、ライナーの後ろの位置に静かに引き返した。



「お、おうじ……!?

 そ、それに姉様が……」



この後のライナーは、私とベリアル様への態度が激変した。

ネットリとした笑顔や媚びた態度が消えうせた。

指摘したマリク君への態度も改め、荷物も受け取り自分で持つようになった。




しおりを挟む

処理中です...