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テスト期間編。
148話『中央宿舎へ』
しおりを挟む朝6時ごろ、ナナリーがゆっくりと広間にやってきた。
「お、おはようございます」
「おはようございます。ナナリー様」 「おはよう」
「おはよう、ナナリーさん。良く眠れたかしら?」
お母様は私のときと同じようにナナリーに触診した。
「うん。良く眠れたみたいね」
お母様は優しく微笑んで、ナナリーの頭を撫でた。
「……はい。
昨日は、その……ありがとうございました」
ナナリーは少しだけ頬が赤くなっている。
何でも昨夜、私が寝静まった後のナナリーは、いろいろ考えてしまい、
寝付けずに宿の広間で時間を過ごしていたのだと。
そのときお母様が、明日の朝一で手紙を出す手配をするために、
宿のロビーに向かっている途中でナナリーを見かけたらしい。
話しかけてナナリーの悩みや不安を聞いたお母様は、
手紙をロビーの給仕に渡して、2階にある自分の部屋へナナリーを誘った。
ナナリーはお母様に泣きながら全て吐き出し、泣き疲れて眠ったのだと。
お母様に抱っこしてもらって眠ったとは……うらやます!
「では、ご飯にしましょう」
お母様の掛け声で、皆で食堂に移動した。
朝食の内容はカボチャのスープとコッペパン2つにチーズ、
鶏肉と野菜をボイル焼きにしたものだった。
朝食を食べていると、ナナリーがお母様にたずねる。
「あの、エレノア様。
今日はこのあと、私は中央の宿舎へ戻ってもいいんですか?」
ナナリーの不安げな顔を見たお母様は考える仕草のあと、頷いて答えていた。
「ええ、そうね。
貴女だけじゃないわ。エミリアとベリアル王子も、
一緒に宿舎に戻ってもらいましょうか。
この後、副院長に手紙を書くから、中央宿舎に戻ったら渡して欲しいの」
「「わかりました」」
お母様の言葉に、私達は頷く。
そして、言い忘れていたことがあったのを思い出す。
「そうでした!」
急に大声を出した私に、怪訝な表情を向けるお母様。
「し、失礼しました。
えっと、お母様に伝えておかなければいけないことが」
私は、王都の治癒学校で特定の生徒による横暴な態度があることを伝えた。
「一部の生徒達のみしか私達は見ていませんが……」
ベリアル様とナナリーも頷いていた。
「あなた達、よく伝えてくれたわね。
その件についても手紙にしたためておくわ」
私の話を聞いていたお母様は、
怒っているのが分かるほど、冷たい目をしていた。
食事後、中央宿舎から私達を迎えに帆馬車が到着した。
なんと、帆馬車の御者をしていたのはシュゼルツ様だった。
シュゼルツ様は、私にお母様を助けてもらったことについて、
お礼を言いたかったそうだ。
家族だから助けるのは当たり前なのに、申し訳ないね。
お母様が復活したからこそ、西門に集まっていた魔物を
全て退治することが出来たのだと喜んでいた。
ベリアル様曰く、ベリアル様がちょっと苦戦した魔物を、
不意打ちとはいえ、一撃で屠るお母様は
まさに剣聖に相応しい姿だったと……。
自分必要なくね? と、ちょっとショックを受けたようだった。
お母様から副院長への手紙を受け取る。
シュゼルツ様が御者をする帆馬車に乗り込み、
私達は中央宿舎へと移動したのだった。
中央宿舎では、庭と裏にある訓練場から
兵士たちの威勢のいい掛け声が聞こえていた。
今日、兵士が到着するのなら明日には魔物退治だもんね。
訓練にも身が入るよね。
出迎える教師の一人にお母様からの手紙を渡す。
副院長に必ず渡してもらうように言った。
その後、私達は他の生徒と同じように部屋で待機になった。
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