親子そろって悪役令嬢!?

マヌァ

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動き出す新たなる運命編。

119話『2人に増えた乙女。』

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「新主人公は、リーテ・バイゼイン伯爵令嬢。赤い髪の女性です。

 年齢は15歳。勇猛果敢で律儀な性格。

 来年4月に王立オリジム学園に入学されます。



 リーテは、騎士家のご令嬢で、選択授業は騎士科。

 そして、『聖霊の2人の乙女』では新機能として主人公を選べます。

 その選べる主人公の一人です。

 もう一人の主人公は前作からのヒロインであるナナリーです」





乙女が2人に増えちゃったよ。





「攻略対象は前作の僕を含めた全員と新メンバーが5人います。



 新メンバーの1人目はシークレット。

 当時のベリアル様のようなキャラクターですね。

 いつ登場するのか、どういったキャラかは分かっていません。



 新メンバーの2人目は、両陛下の2人目のご子息、クレス殿下です。

 3人目は、姉様と僕の弟ジェネスです」



両陛下とお母様はジョシュアの話を聞いてかなり疲れた表情になった。

そして、ジェネスは確実に治癒学校行きに決まりました。



ジョシュアの話は続く。



「最後に、残りの新メンバーの2人ですが……。

 彼らは、オリジム学園には通わないようです」





「どういうこと?」





「僕は彼らに会いに行きました。話を聞いてみると、2人は転生者でした。

 彼らはヒロインであるナナリーとリーテから全力で逃げたがっていました。

 理由を尋ねると、口をそろえて言うんです。



 『自分は今回で2回目の人生だ。

  あんなイカレタ女達にはもう関わりたくない』と。



  この理由は、僕より他の皆さんのほうが分かっていると思います」



そういうことね。

新しい攻略者2人は2回目経験者の転生者か。



シークレット1人、クレス殿下、ジェネス、他2名は転生者でゲーム離脱と。



てゆーか、来年の学園が波乱万丈すぎるんだけど……。

今から気が重いよー。



お茶会にいる全員が同じ疲れた表情になった。







「それで、エミリアが悪役令嬢というのは、ナナリーが主人公だから。

 それは分かるが、さっきジョシュアはエミリアに任せると言った。

 何をエミリアに決断させるというのだ?」





ベリアル様がジョシュアに疑問をなげかける。

私も頷く。

私もそれは気になっていた。



「それは、2人の主人公によって、姉様のラストが変わるからです」



ラストが変わる?



「主人公がナナリーの場合は、前作と同じです。

 リーテの場合は、悪役令嬢エミリアは姿を消します」


おおお!?

まさかの生存ルートか!?

雲隠れルートか!?



「ですがそれは、ベリアル様とリーテのルートのみです。

 他の攻略対象のルートは僕は知りません。

 続編では、前作で出現率が低かったベリアル様は、

 最初から攻略対象として存在しているんです。

 もちろん、学年は2年生として。



 この前、会って来た新攻略対象のお二人は、

 悪役令嬢エミリアの存在を知りませんでした。

 これが、どういう意味を持つのかは僕は知りません」





ジョシュアの言葉に胸が痛んだ。



そうか。続編では最初からベリアル様が存在しているのか。

チラリと隣のベリアル様を窺うと難しい表情だった。



不安げな私に気づいたベリアル様は机の下でそっと手を握ってくれた。







ジョシュアは続編のゲームで、

前回好評だったベリアル様のルートだけを遊んだそうだ。

しかも続編は1回クリアしただけで、

転生する原因の事故に巻き込まれてしまったのだった。





「すこし、いいかしら?」





と挙手したマリエラに皆が注目する。



「私、思うのだけれど。

 エミリアの最後が変わるのはどちらか一方の主人公の場合でしょ?

 今回はヒロインが2人いるのよ?その場合はどうなるの?」



マリエラのその問いに答えられる者は、このお茶会には居なかった。





とりあえず決まった新しいゲームの開幕とその対策は、

極力、新しいヒロインには近づかないし、関わらない。

それしか考え付かなかった。



最悪の場合は転学も考えておこう。

最速でも転学出来るのは来年の1月かららしいけれど……

それまで耐えねばならぬ。

転学しても、エドワード兄の文献探しなど手伝えるしね。

お茶会の後半でベリアル様がアスト陛下に別室に呼ばれて行った。



戻ってきたのはベリアル様のみで、アスト陛下は公務のために

そのまま政務室に戻ったそうだ。

そのあとのお茶会はだんだんゲームの話だけじゃなく、

他愛ない話に移ろいでいき、12時を知らせる時計の鐘の音で終了したのだった。









お茶会が終了し、帰りの馬車の中でベリアル様が真剣な表情で提案してきた。



「エミリア。 もしエミリアが望むなら、ヴェルマへ来ないか?」



ベリアル様の提案で心臓が飛び跳ねる。



「先日、エミリアは国外に出たほうがいいのではないかと言ったな?

 ヴェルマはドルステンの国の外だ。

 国外に出たければ、ヴェルマに来てもいい。

 アストからもエミリアの意思を尊重してもいいと言葉をもらった。

 決めるのはエミリアに任せる。

 学園を卒業したいと言うのなら、それでも構わない」



ベリアル様の提案は、さっきアスト陛下と話し合った内容だそうだ。

ベリアル様や陛下の心遣いが嬉しかった。



でも、私は……。

ベリアル様の提案に私は素直に頷けなかった。

エドワード兄やナナリーのことが気になっているからだろうか?

転学の件は考えても良いと思うけれど、いきなり国外か……。



「すこし、考えさせてください」



その後、私達は寮に着くまで静かだった。

いろいろありすぎて、考える事も増えてしまった。



この時、私が素直に頷いていれば1年後、

辛い思いをしなくてもすんだのかもしれないのに―――。










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