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動き出す新たなる運命編。
108話『滑れる! 私は滑れるぞぉ!』
しおりを挟む私とベリアル様は、倒れている木を避けて湖に向かって歩いていた。
制服に施された魔法のおかげで快適に感じるのは嬉しいが、
肌が出ている部分はやっぱり寒い。
私達は、学園で支給される白のロングコートを着ている。
私の手にはミトンタイプの赤い毛糸の手袋、首にも赤のマフラー。
帽子も赤のベレー帽だ。ベリアル様は黒いピッチリとした手袋のみだ。
ちなみに従者達もちゃんと暖かい格好をして付いてきているよ。
5分ほど歩いて、湖が見えてきた。
湖は桟橋の小船はすべて陸地に上げられ裏返して綺麗に並べられている。
歩道が途切れた場所から桟橋にかけて、雪かきもされた状態だった。
私は湖を見て、ガッカリした。
湖は少しも氷を張っていなかった。
「氷が無い……」
そんな私の状態にベリアル様はそれがどうした? という顔だった。
まぁ、私がやりたい事をきちんと理解していないからでしょうけれど……。
私は横に居るベリアル様を見上げる。じーっと見つめてお願いしてみる。
アイメッセージに込めるお願いは『氷張ってちょうだーい』(他意はない)
ベリアル様は仕方ないなぁという顔で、でも嬉しそう指を振るった。
桟橋の先端を中心にやく200メートル四方のスケートリンクが完成した。
オマケにスケートリンクを囲む氷の柵つきだ。
ちゃんと高さが、私の顔あたりまである柵は掴まる事もできる太さだ。
勢いでぶつかっても、壊れないという。なんという親切設計。
「ベリアル様、素敵です! ありがとうございます!!」
嬉しさのあまり、腕に抱きついてしまった。
ベリアル様は、富士山の山頂から景色を見るときの表情になった。
ほわ~~って表情だ。 何言ってるんだ、私。
私は恥ずかしさを誤魔化すために、
いそいそと靴をスケート用ブーツに履き替える。
もちろん、メーデとカーラにかいがいしく世話をやかれて。
今更ながら、前世の記憶があるから、お世話をされるのに、
慣れないんじゃないかって思うじゃん? 私はそんなこと無かった。
これがエミリアの普通なので、前世の常識が邪魔をすることはないのだ。
まぁ、一人でお風呂に入りたい時もたまにはあるけど……アレの日とかね。
私はおそるおそるリンクに足をつけて軽く滑ってみる。
しばらくゆっくり滑って、慣れてきたら
ぐるりと一周するのだ。
そしてテレビでの、見よう見まねだけど、ジャンプと回転を加えてみる。
私はもともと細身で体重も40キロ前後だ。
食べても食べても、どうなっているんだって思うくらい
体重変化があまり起こらない。
155センチで40キロ前後って前世では痩せすぎだと思っていた自分が、
まさかそんな体系に生まれ変われるとは……。
健康的なんですがね。
お母様が言うには平均より低いくらいじゃないかって話だった。
まぁ、何が言いたいかと言うと、体が軽いからジャンプと回転くらい
出来るんじゃないかな? とね……。
閑話休題
回転したりジャンプしたりはちょっと難しかった。
なにせ、スケート用の靴じゃないのだ。
これも課題だなぁ。
まぁ、鍛冶屋に頼んでスケート靴を作ればいいんだろうけど。
詳しい構造とかがわからないんだよなぁ……。
こんど鍛冶屋に頼んでみようかな?
ベリアル様は私を見守っててくれるだけだ。
滑らないの?と声をかけたけれど、見ているほうが楽しいといわれた。
「まるで、雪の妖精のようだ」
と優しい笑顔を向けられてしまった。
眼福です! ありがとうございます!
スケートを堪能した私は少し魔力切れを起こしてきた。
気だるい感覚が襲ってくる。
こんどは、休憩中にポーションを試すのだ。
今回試す効果は気力回復効果で、味はブルーベリー味のポーション。
味は着色も兼ねてるし、味つきのほうが飲みやすいからね。
味と着色のレパートリーはこんな感じだ。
赤のイチゴ味は体力回復系のポーションに。
青のブルーベリー味は気力回復ポーションに。
黄色のオレンジ味は主にバフ系ポーションに。
緑色のミントの香り水は状態異常回復ポーションだ。
グイッと飲み干す。
味は悪くない。薄いブルーベリー水って感じだ。
即効性では無いのか、効果はまだでない。
カーラに時間を計ってもらい、時間計測をする。
1分後、ちょっとだけ体がポカポカしてきた。
1分30秒後、少しだけ気だるさが戻った。
2分後、自分の持つ魔力の半分くらいが回復した感覚がある。
あくまで感覚だが。
「少し、滑って確認してきます」
「ああ。 楽しんでおいで」
その後、私はさっき滑った時間の半分ほど滑ることができたのだった。
気力回復のポーションのお試し実験は大成功だった。
そのあと、ベリアル様の提案で魔力回復ポーションと名前を変更した。
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