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お茶会編。
101話『決め手はお菓子。』
しおりを挟む皆がそれぞれ『勇敢なる魔術師団』の好きなキャラや話に花を咲かせていると、
食堂の店長が部屋を訪ねてきた。
頼んでいた、お菓子のみ載ったメニュー表ができたようだ。
私は、店長から人数分のメニュー表を受け取って皆に配る。
「皆様、今渡したお菓子類の載ったメニュー表を見てください。
そちらの中から好きなお菓子を、お1人様、2つまで
選んでくださいね。選び方は招待状と同じでペンで丸を書いて、
私のところへ持ってきてください」
ちなみにエドワード兄と私は事前打ち合わせでレアチーズケーキだ。
被らないようにしたいので、兄にレアチーズケーキのホールに
丸をつけてもらう。私は他のを2つ決めるのだ。
皆それぞれメニュー表を見て相談し合っている。
私はそっとナナリーの近くに寄った。
「ナナリー様はどんなお菓子が好きなのですか?」
また私が話を振ってきたのでちょっと驚いている。
ウザそうな視線を送られた。 ショック。
「ショコラケーキとティラミスよ」
でもちゃんと答えてくれた。
顔はプイッとそらすが手だけはメニュー表を渡してくる。
やっぱりこの子、ツンデレか!?
メニュー表にちゃんと丸をつけてくれたようだ。
「ナナリー様はチョコレートケーキ類が好きなのですね。
私もたまにチョコクッキーやガトーショコラを手作りするんですよ」
「えっ? 自分で作れるの!?」
意外な顔をしたナナリーが聞いてくる。
「ええ。 家族や侍女、料理長にも好評なんですよ。
今度お作りして、ナナリー様にも分けてさしあげますね」
私の話を聞いていたナナリーは口元がによによしだしている。
「く、くれるって言うんならもらってあげないこともないわね」
プイッと顔をそらすが、嬉しそうだった。
「ええ。 楽しみにしていてください」
その後、丸を付け終わった人から順番にメニュー表を回収していく。
回収し終わったらもう解散でもいいのだが……
「エド様ぁ! 私、ショコラケーキが食べたいですぅ」
この後、甘えるナナリーの提案でケーキを食べる会になった。
みんなそれぞれ丸を付けたケーキを味見したいと言い出した。
給仕に頼んで、1ピースずつ、運んできてもらう。
これじゃあ、プチお茶会じゃないか。
まぁ、別にいいんだけどね。
お茶とケーキを堪能したマリエラがそろそろ帰る宣言をした。
マリエラが帰ったあと、ケヴィン君とカレン様も帰っていく。
私とベリアル様も残りのケーキを籠詰めにして帰り支度をする。
兄含む、ナナリーとイケメンsはまだ残るようだった。
私達は挨拶をして、部屋を出た。
メニュー表をメーデに持たせて、ポアソン君にはお持ち帰り用の
ケーキ籠を持ってもらった。
「先に、馬車を呼んでくる」
ベリアル様はそう言って早足で先に外へ向かって行った。
さすが紳士。
手持ちフリーなのはベリアル様だけだったもんね。
廊下を進んでオープンテラスになっている貴族食堂の玄関にむかう。
「ちょっとまって!!」
声をかけられたので、振り返るとナナリーが追いかけてきていた。
「ナナリー様、どうかなさいましたか?」
ナナリーはプイッと横を向いている。
私と話す時は、まっすぐ見つめてはくれないのだ。
恥ずかしそうな表情で言った。
「き、今日は、誘ってくれて、あ……あり……ありがと」
ぇ?
「あ、あの……これ……」
そう言ってナナリーが渡してきたのはサロンの招待状だった。
「これを、私に?」
「そ、そうよ。
私のサロンに誘ってあげるんだから、感謝しなさいよね!」
そう言って、プイッと体ごと後ろを向いた。
表情は見えなかったが、僅かに見える頬が少し赤く染まっている。
なんだろう? このトキメキ。
ナナリーの行動に少しだけ感動を覚えた。
「ナナリー様、ありがとうございます。
誘ってもらえて、すごく嬉しいですわ」
首を横に向けて、横目で私を窺うナナリーに
微笑みと最高の淑女の礼をする。
それほどまでに私は感動していた。
ナナリーは目を丸くしてすぐにプイッと顔を戻した。
「それじゃあ、また……あした」
そう言って駆け足で戻っていった。
私はナナリーの後姿に声をかけた。
「ええ。 また明日」
私の心は感動に打ち震えている。
ナナリーが。
あのナナリーが!
私にお礼を言って、サロンの招待状を渡して来たのだ!!
うおおおおおおおおお!!!!
あきまへん!
あきまへんよ、ナナリー!! あんなんもう、ツンデレやん!
ナナリーが可愛く見えてしかたあらへん!!
感動して変な関西弁? が出てしまった。
ナナリーの去った後を見つめる私は、しばらくトキめいていた。
ちなみに、一緒に居たポアソン君とメーデは
すばやく私の後ろの立ち位置に回って、しずかに成り行きを見つめていたよ。
表情には出してないけれど、
それぞれナナリーの行動に感動しているようだった。
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