親子そろって悪役令嬢!?

マヌァ

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お茶会編。

84話『奇妙な関係の2人 1』

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私の目の前にいる金色の髪をもつ貴公子は前世の兄だった件。



「それにしても、お父さん大丈夫かな?

 一応医者だけど、自分の体には無頓着だからなぁ。

 糖尿病とかになってたらどうしよう!?」



「いや、心配するとこ、そこだけじゃないよね!?

 お父さんの件は一旦置いておこうよ?」



エドワード殿下、あらため、兄は私の言葉に困惑している。

もちろん、私も困惑している。



奇妙な表情の2人が微妙な空気を作り出している。



「なんで、私のお兄ちゃんが婚約者なわけ?

 すっごい嫌なんですけど……」



ボソっとつぶやいた声をちゃんと拾っていた兄は少し落ち込んだ。



「僕もビックリしているから、あんまりお兄ちゃんを虐めないで」



なんというか、運命の神様が鬼畜すぎる。

これ、お互いに打ち明けないまま結婚とかになってたら……

想像するだけでもマジ嫌なんですけどー。



「エミリアの記憶はいつからなの?」



兄は頬杖をついて人差し指と中指で横の髪を弄る。

あー、なつかしいなー。 その癖。



「私は今年入って、ベリアル様を召喚した瞬間」


私の言葉に兄は「ん?」という表情だった。



「お兄ちゃんは?」



「僕は赤ん坊のころ……かな……?」



神様、不公平すぎるし!

じゃあ、兄は前世の記憶を持った状態で今まで生活してきたのか……。

そういえば、兄はこの世界についてどの程度知っているのだろうか?



「お兄ちゃんはこの世界のこと、どう思う?」



「どうとは?」



「前世の記憶で見聞きしなかったかってこと。

 この世界って私の前世でやってたゲームの世界に似てるんだけど」



頬杖をついた手の人差し指をこめかみに当てて考える仕草も健在だった。

そういえば、中身が兄だと気づく前から殿下のこういう仕草は

私は好きだったように思う。



前世の兄と同じ仕草だったからか……。

うわー迂闊だった。



というか私、昨日兄に以前まで愛してました宣言したんだっけ。

軽く死にたくなった。



「何か失礼なこと考えてないかい?」


「いいえ」



私は無表情でトボけた。



「前世の知識には無いかな。

 でも、お前が家に置き忘れていたゲームの攻略本なら読んだよ。

 モテない妹の秘密を垣間見たお兄ちゃんは悲しくなったよ」



原因それじゃん。てか、勝手に見ないでほしい。



私はめっちゃ睨みつけた。

くそう、タレ目のせいで泣き顔になってるか! ちくしょう!!



「全部読んだの?」



「読んでない。 適当に見ただけ」



じゃあ、お兄ちゃんはこの世界がゲームの世界だって気づいていない?



私は、兄にこの世界について話した。 ついでに、ベリアル様の正体も。



「つまり、僕はゲームの中の攻略キャラの王子様。

 そして、ナナリーがヒロイン?

 ベリアルは悪役令嬢エミリアが召喚した魔王って、何の冗談なの?」



「そう言われても……」



事実なんだよなぁ。

私の表情で言っていることが真実だとわかった兄は微妙な顔になった。



「ナナリーはヒロインだから、攻略対象の異性に好かれやすいんだけど

 そこんところどうなの?」



「悪いけど、今のナナリーは僕の好みではないよ。

 けれど、そうだね……不思議な魅力は感じるかな。

 一緒にいて楽しいしね」



前世の兄の好みのタイプはお姉さん系だった気がする。

自分を引っ張ってくれる人が好みなのだ。

尻にしかれたいとか、罵られたいとか言ってたきがする。うわぁ。



「何か失礼なこと考えてないかい?」



「いいえ」



私は無表情で兄にちょっとだけ引いた。


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