親子そろって悪役令嬢!?

マヌァ

文字の大きさ
上 下
82 / 231
お茶会編。

82話『私の想い。』

しおりを挟む


馬車の中の居心地の悪さを我慢して、私たちは貴族食堂前に降り立った。

いやー……。 苦痛でしかなかった。

ベリアル様への気持ちを自覚した私でも、アレには嫉妬しなかったくらいだ。



馬車の中の様子はどうだったか…… さかのぼる事10分前。

馬車内のナナリーはベリアル様にベッタリだった。

嫌悪感を抱いていたベリアル様は、ナナリーを一瞬も見なかった。

目の前に座る私をずっと見ていた。見られていた。助けを乞われていた。

そんな中、馬車のホストであるエドワード殿下は必死に

皆を楽しませる話をしなきゃいけない。ほぼ作り笑いの白い目の殿下がいた。



ここまで酷いとは思わなかったが、ナナリーのあからさまな態度に

エドワード殿下もかなり呆れていた。



そして今に至る。

貴族食堂の中には王族専用の個室の隣に、別室がある。

ここは、王族の家族が入りきらないとき用の場所だ。

それぞれの個室に私と殿下、ベリアル様とナナリーが入って行く。



ちゃんと防音効果のある個室なので、内緒話にピッタリなのだ。

四角いテーブルに国のシンボル、

ノームの葉模様の刺繍がされたテーブルクロス。

イスは芸術的な彫り調で、机の脚にも同じ彫り込みが、されている。



部屋全体も小窓にステンドグラスを使われていて、窓から差し込む

日の光が美しく部屋を照らしていた。



きっと隣の部屋も同じようなものだろう。



私と殿下は先に食事をすませることにした。

順番に運ばれてくる食事を丁寧に平らげて、食後の紅茶タイムで

話し合いをする予定だ。


今日のメニューは全体的にサッパリめにしてあるようだ。



1品目

桃とかぼちゃをミキサーにかけて生クリームと混ぜ合わせた

ムース状の前菜。



2品目

じゃがいもとほうれん草のスープ。



3品目

サッパリとした焼いた白身の魚と海老をパリパリに焼いたチーズで

ミルフィーユ状にされた魚料理。



4品目

鹿肉をベーコンで巻いて焼き丸型にカットされた肉料理。

数種類のきのこも添えてある。



私は料理にまったく詳しくないので、料理長に説明されても

わからなかった。

というか、特殊用語が多すぎるのだ……。



食後のデザートはレアチーズケーキに苺ジャムが乗っていた。

ストレートの紅茶を給仕に入れてもらう。

レアチーズケーキをおいしく平らげて、会話開始だ。



私は立って、もう一度殿下に丁寧に謝ることにした。


「エドワード殿下、昨日は本当に申し訳ありませんでした」



殿下は少し驚かれたけど、やさしい微笑みで返してくれる。



「いいや。僕のほうこそ、昨日はエミリアに失礼なことを言ってしまった。

 人形だなんて言って、本当に申し訳ないと思っているよ。

 君は人間なんだ。表に出していない感情をちゃんと持っている。

 そんなことに気づけない僕は本当に愚かだった。

 昨日言ってくれた言葉は僕の過ちを打ち砕いてくれた。

 僕は、君に感謝している。 そして尊敬もしている」



エドワード殿下は、そこで言葉を区切って、

姿勢を正してまっすぐに見つめてきた。



「エミリアの今の気持ちを聞かせてもらってもいいかい?」



私の気持ち。

私の気持ちとは、ベリアル様への気持ちだろうか。



「私は、もう殿下の事をお慕いしてはいません」



「今のエミリアは、ベリアルに夢中?」



おっと!?



直球に言われてしまった。

というか、マリエラの時といい、私、態度に出すぎじゃない?

どう答えようか考えていたら、先にエドワード殿下が口を開いた。



「どう答えようか考えているね。

 大丈夫だよ。 怒ったりしないから」



私は、赤くなって俯いて小さい声で肯定した。



「そ、その通りです……」



エドワード殿下はやさしく微笑んでくれた。



「昨日のエミリアの言うとおりだった。

 僕の君への思いは独占欲だ。

 君が僕の婚約者として当たり前に育って来たように、

 僕にとっても君は婚約者として当たり前になっていた。

 それは、僕の恋愛という感情の意味を歪ませたんだ」



殿下は、私を見つめる。

その表情は晴れやかで、私を見る目はベリアル様を見るそれに近かった。



「僕も、エミリアに恋愛感情を抱いていない。

 それがはっきり分かったよ」



私は、殿下の本心を聞けて、少しだけ嬉しかった。

彼の成長を間近で見てきたからこそ、そう思ったのかもしれない。



もっと早く殿下とこうして話し合っていれば、私たちの関係が

こじれることもなかったのかもしれないね。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

幸せな結末

家紋武範
恋愛
 私の夫アドンはしがない庭師だった。しかしある時、伯爵であるシモンの目にとまった。  平民の私が貴族の妻になれるなんて夢のようだ。私たちは不倫の末に結ばれたのだった。 ※前編→後編→その後1~13→エピローグという不思議構成です。

一家の恥と言われた令嬢ですが、嫁ぎ先で本領を発揮させていただきます

風見ゆうみ
恋愛
ベイディ公爵家の次女である私、リルーリアは貴族の血を引いているのであれば使えて当たり前だと言われる魔法が使えず、両親だけでなく、姉や兄からも嫌われておりました。 婚約者であるバフュー・エッフエム公爵令息も私を馬鹿にしている一人でした。 お姉様の婚約披露パーティーで、お姉様は現在の婚約者との婚約破棄を発表しただけでなく、バフュー様と婚約すると言い出し、なんと二人の間に出来た子供がいると言うのです。 責任を取るからとバフュー様から婚約破棄された私は「初夜を迎えることができない」という条件で有名な、訳アリの第三王子殿下、ルーラス・アメル様の元に嫁ぐことになります。 実は数万人に一人、存在するかしないかと言われている魔法を使える私ですが、ルーラス様の訳ありには、その魔法がとても効果的で!? そして、その魔法が使える私を手放したことがわかった家族やバフュー様は、私とコンタクトを取りたがるようになり、ルーラス様に想いを寄せている義姉は……。 ※レジーナブックス様より書籍発売予定です! ※本編完結しました。番外編や補足話を連載していきます。のんびり更新です。 ※作者独自の異世界の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。 ※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです。

『 使えない』と勇者のパーティを追い出された錬金術師は、本当はパーティ内最強だった

紫宛
ファンタジー
私は、東の勇者パーティに所属する錬金術師イレーネ、この度、勇者パーティを追い出されました。 理由は、『 ポーションを作るしか能が無いから』だそうです。 実際は、ポーション以外にも色々作ってましたけど…… しかも、ポーションだって通常は液体を飲むタイプの物から、ポーションを魔力で包み丸薬タイプに改良したのは私。 (今の所、私しか作れない優れもの……なはず) 丸薬タイプのポーションは、魔力で包む際に圧縮もする為小粒で飲みやすく、持ち運びやすい利点つき。 なのに、使えないの一言で追い出されました。 他のパーティから『 うちに来ないか?』と誘われてる事実を彼らは知らない。 10月9日 間封じ→魔封じ 修正致しました。 ネタバレになりますが、イレーネは王女になります。前国王の娘で現国王の妹になります。王妹=王女です。よろしくお願いします。 12月6日 4話、12話、16話の誤字と誤用を訂正させて頂きました(⋆ᴗ͈ˬᴗ͈)” 投稿日 体調不良により、不定期更新。 申し訳有りませんが、よろしくお願いします(⋆ᴗ͈ˬᴗ͈)” お気に入り5500突破。 この作品を手に取って頂きありがとうございます(⋆ᴗ͈ˬᴗ͈)まだまだ未熟ではありますが、これからも楽しい時間を提供できるよう精進していきますので、よろしくお願い致します。 ※素人の作品ですので、暇つぶし程度に読んで頂ければ幸いです。

婚約破棄よりも私は婚約者の頭が気になります

荷居人(にいと)
恋愛
「君とは婚約破棄する」 私の婚約者アルアル・ナシナシは私にそう告げる。しかし、これは知っていた未来だから私は特に驚きはしなかった。 不思議なのは隣に何故かいないヒロインの存在と………… 荷居人婚約破棄シリーズ第九弾!今回もギャグめいた新しい展開を与えられたらと思います! 第八弾までは番外編を除いて完結済み! 話はそれぞれ違うためこれだけを読むも大丈夫!他の婚約破棄シリーズの作品をさっくり読みたい方は荷居人タグで検索!

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?

木山楽斗
恋愛
公爵家の妾の子であるクラリアは、とある舞踏会にて二人の令嬢に詰められていた。 彼女達は、公爵家の汚点ともいえるクラリアのことを蔑み馬鹿にしていたのである。 公爵家の一員を侮辱するなど、本来であれば許されることではない。 しかし彼女達は、妾の子のことでムキになることはないと高を括っていた。 だが公爵家は彼女達に対して厳正なる抗議をしてきた。 二人が公爵家を侮辱したとして、糾弾したのである。 彼女達は何もわかっていなかったのだ。例え妾の子であろうとも、公爵家の一員であるクラリアを侮辱してただで済む訳がないということを。 ※HOTランキング1位、小説、恋愛24hポイントランキング1位(2024/10/04) 皆さまの応援のおかげです。誠にありがとうございます。

不死王はスローライフを希望します

小狐丸
ファンタジー
 気がついたら、暗い森の中に居た男。  深夜会社から家に帰ったところまでは覚えているが、何故か自分の名前などのパーソナルな部分を覚えていない。  そこで俺は気がつく。 「俺って透けてないか?」  そう、男はゴーストになっていた。  最底辺のゴーストから成り上がる男の物語。  その最終目標は、世界征服でも英雄でもなく、ノンビリと畑を耕し自給自足するスローライフだった。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー  暇になったので、駄文ですが勢いで書いてしまいました。  設定等ユルユルでガバガバですが、暇つぶしと割り切って読んで頂ければと思います。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

処理中です...