親子そろって悪役令嬢!?

マヌァ

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仮装パーティ編。

70話『貴様のような妖精がいてたまるか!』

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毒々しいラフレシアの化け物、マリエラは、

優雅にこちらに向かってくる。 威圧感が半端ない!!!



私の親友は何処に向かって突き進んでいるのだろうか?

まったくもって謎だった。



「皆さん、ごきげんよう」



マリエラが優雅に挨拶してくるが、皆は愕然とした表情で、

誰一人反応できずに居た。



「もー! マリエラー。 先に行かないで下さいよー」



後ろからマリエラを追っかけてきたのは、レヴァンヌだった。

彼女の格好は、ゲームのときの私の格好だ。

だけど、彼女のスラリとした長身のおかげで、存在が際立っていた。



マーメイドラインのドレスにあしらわれたミニリンゴは

金と赤で動くたびにキラキラと煌めいている。

肌は緑、髪は金色に染めて、赤リンゴを散らばせている。

マリエラと並ぶとすっごい……。クリスマスツリーかな……?



「あ! エミリア! ……と、皆さん、ごきげんよう」



彼女は礼儀正しく挨拶してくれた。

どぎつい2人の登場に周囲の生徒達はいろんな意味で愕然としていた。

目立つにはいい。だけど、その格好どうなの? という視線だ。


うわー……私達のときと違う反応だー……白目。

まさに、ないよりのあり! な格好だよねー。


私は意を決して答える。



「ま、マリエラ、レヴァンヌ、なんだかすっごい格好ね。

 と、とても、目立っているわ……素敵よ」



最後の言葉は社交辞令である。



「そうでしょう!? 先週からデザインを考えていたのよ。

 今日は、レヴァンヌと一緒に参加するの。 テーマは『森の妖精』よ」





「えっ!? よ、妖精??」





私と同じ疑問を持ったのだろう。みんな困惑していた。

貴様のような妖精がいてたまるか! とは思ったが口には出すまい。



「そうなの! でも、困ったことに妖精感が少ししかないのよね」



「少ししか!? 化け物感しかな――うっ」



ぎゅっと靴を踏む。



ベリアル様、今何を言おうとしたんですかねぇー!?



私は、ベリアル様に視線を向ける。アイメッセージは『黙ってろ』だ。

ベリアル様は、目を丸くして小さく何度も頷いた。通じたようだ。


マリエラは、気にもしていない様子で、心底どうしましょうという表情を

浮かべる。そして、ふとナナリー達に視線をむける。

わざとらしくパアアアと顔をほころばせる。





あ、この後の展開見えたわ……。





「ねぇ、あなた達。 その格好、妖精よね?

 ちょうどいいわ。私達わたくしたちと一緒に参加なさい」



断ろうとするナナリー。



「……なっ!? い、いゃ―――」



「もちろん、断らないわよね?」



言わせねーよモードになったマリエラが言葉を挟む隙なく続ける。


「私達、もうテーマの応募用紙、出してきちゃったの。

 それに、下級貴族である貴女が私のお願いを断るなんてしないわよね?」



うわー……黒いわー……。



こう言われては、断ることができるのはカイン様だけだ。

身分を傘にした言い合いには平等性が発生する。

この場合は、カイン様という同じ身分がいるので問題ないのだ。



「そ、そんなの、酷いわ!!

 断る権利くらい、私にだってあるはずだもの!」



ナナリーはそれを分かっていないのか、断ろうとしている。

コンラート様とカイン様は焦った表情だ。

ベリアル様とエドワード殿下は空気になっている。

私も、そっと心の中で実況していよう。





「何を言っているの?断る権利なんて貴女には無いわよ。

 それと、カイン様、コンラート様。

 ラナー様から私とレヴァンヌをエスコートするようにとのお達しよ。

 貴方達も、私達を断るのかしら?」



ニヤニヤ顔のマリエラの言葉にイケメンs2人が愕然とし、うなだれた。



あー。 これはもうナナリー達は勝てませんわ。



こうして、5人は妖精部門の会場に入って行った。



カイン様はマリエラを、コンラート様はレヴァンヌをエスコートして。

後ろからは、俯いた姿勢でナナリーが連れて行かれている。

そう。連れて行かれている。逃げないように、蔓で巻き巻きにされて。

そのうしろ姿は肉食植物に囚われた哀れな妖精達の姿であった――。



グッドラック……ナナリー達!!






ちなみに、モンスター部門じゃないのかよ?! って思うじゃん?

あれはあくまでも妖精らしいよ。ラフレシアの精。



どっちでもいける系のテーマ。



あんな妖精いてたまるか!! とは、のちの審査員のセリフだった。


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