親子そろって悪役令嬢!?

マヌァ

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仮装パーティ編。

65話『新魔法開発事業』

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※エミリア視点です。


学園祭が終わり、私は空いた時間に、魔王ベリアル様に学園を案内し、

寮では新魔法の開発を続けていた。



季節は11月。

ベリアル様が編入してきて濃い1ヶ月間だったなぁ。



ただいまベリアル様と私は、私の寮部屋で新魔法の開発中だ。

新魔法を使って新しい製品を作る予定なのだ。



「エミリア。この魔法は使えないぞ。

 魔法陣に、もともとある維持の効果と重なるからな。

 前に作ったやつがあるだろう。

 保存の魔法陣だ。そっちに魔法を移し変えるといい」



容赦のないベリアル様が私の作ったレポートに指摘する。

皆さん、お気づきだろうか?

ベリアル様は学園際後から、2人きりの時だけ私を呼び捨てにしている。



最近グイグイ来られて困っています。

いや、困ってないな。うれしいんだけどね。なんかね……。



「こっちはどうでしょうか?」



私は、自分の感情をごまかすためにレポートに集中した。



「これはいい案だ。ヴェルマにも取り入れたいな。

 だが、治癒の使い手が少ないのが問題だな」



「では、これらをうちの領から輸入するというのは?」



魔王ベリアル様はしばらく考えたあと頷いた。



新魔法の技術は現在、ヴォルステイン家の私とベリアル様しか知らない。

ゆくゆくは、我が領の治癒院で技術を独占し、王都に流す手はずだ。

王都で技術開発はしない。スクロールに至っては魔法陣を作れるのは

ベリアル様だけだもん。ベリアル様と私の共同開発だけど、

技術知識は私にしか考案できぬのだ。くっくっく。



「エミリア。 悪い顔をしているぞ」



コホン。



「失礼しました」



呆れられてしまった。





コン! コン!

ドアノッカーの音がした。来客が来たようだ。



今日の来客はレヴァンヌと彼女の父親であるバザール・ホットネン伯爵だ。


ホットネン家はもともとは商家の家だ。

彼女のお母様は東国のご令嬢で、東の国の文化を商品として売り出し、

大成功したのだった。それで陞爵しょうしゃくした正真正銘の

実力派の商会だ。正直言って、かなりのキレモノという噂だ。



私は、素早くスクロールとその書類やレポート類を片付けて

2人を招き入れた。



「お邪魔いたします」 「ごきげんようエミリア」



「お二人とも、いらっしゃいませ。

 ホットネン伯爵様、今日はご足労頂きありがとうございます」



「初めまして。 ホットネン伯爵。

 私はヴェルマ国、王子ベリアル・ヴェルノーマです。お見知りおきを」



私とベリアル様はあいさつをそこそこにすませる。

最初は簡単なおべっかの言い合いだ。

正直言って、私は苦手だ。

お妃様仕込みの微笑みと所作でうやむやにする作戦でいく。



ホットネン伯爵は、少しだけふっくらした中年の男性だ。

レヴァンヌ様より明るい紺色の髪は少しだけ頭部が薄い。瞳はブルーだ。

清潔感のある緑のロングコートとハンチング帽、深緑のズボンだ。

いかにも商人って感じの人だった。



さて、ここからが本番だ。

私はホットネン伯爵にお願いしたいことがあるのだ。

その商談を今からがんばって取り付けねばならぬ。



私は、これから始まる商談に気を引き締めるのだった。


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