親子そろって悪役令嬢!?

マヌァ

文字の大きさ
上 下
42 / 231
学園生活開始~学園祭。

42話『マリエラ2』

しおりを挟む
女性にとってのムナクソ展開があります。
苦手な方はすみません。

※ベリアル様視点です。 




教養の時間が終わり、軽く軽食を食べた後エミリア嬢のお見舞いにと

マリエラ嬢と一緒に寮へ向かう馬車へ乗り込んだ。



「マリエラ嬢。午後の授業は出なくても大丈夫なのか?」



「ええ。私もエミリア様と同じで基礎学科は全て終了していますわ。

 ただ、暇だったり、お友達とおしゃべりしたいから授業に出ていただけで。

 私と同じ考えの方は結構いらっしゃるんですよ」



たしか、この学園の主な目的は貴族の知識を鍛えることと

人間関係の交流を鍛えるためだったか。

あとは、特殊学科の習得だったな。私は納得した。



「マリエラ嬢は転生者だと言ったが。記憶はいつからあるのだ?

 貴女のゲームの知識はどの程度ある?」



マリエラ嬢は、苦虫を噛んだような表情になった。



「言いたくないのなら、無理には聞かないが――」



私の言葉をマリエラ嬢は遮る。



「いいえ――。私の話は、きっと聞くに堪えない内容ですよ。

 それでもいいのならお話しましょう」



そして、決意の眼差しで語りだした。

ただ、その瞳はドス黒く濁っていたが。



「私が記憶を取り戻したのは、この国の公爵家の養子になった時ですわ。


 ハイライト国からの留学生として嫁ぎ、婚約になんらかの支障が

 出た場合、面倒になりますから。

 養子としてコルニクス公爵家預かりになりましたの。

 エレノア様の時にあった事件が切欠のようでしたね。



 記憶を取り戻した時は本当に驚きました。

 私がまさか、前世でやっていたゲームの登場人物になってしまっていて。



 それからは、紹介されたカイン様と友好を深める努力をいたしました。

 私のゲームの知識は、カイン様の知識のみです。

 残念ながら、貴方や他の方たちの攻略はしてないんですの。

 攻略の情報は大体の流れやイベントを把握しているだけですわ。



 ゲームをやっていたときも私はカイン様押しでしたので、

 現実になってとても嬉しゅうございました。



 ですが、ここはゲームではない。現実の世界。

 私は、カイン様の婚約者になり、そう実感したのですわ。



 カイン様は、最低なクズやろうだったんですの。



 ある日カイン様は、私がカイン様に向ける想いを気づいておられました。

 何をしても、私が断るはずはないと。

 そして、私はカイン様に体を許してしまいました。



 その日からの2年間、地獄が始まりました。



 カイン様が連れて来た見知らぬ男達と狭い部屋に閉じ込められました。
 
 私は、彼らに凌辱りょうじょくを受けましたわ。

 助けを叫んでも、誰も来てはくれませんでした。

 それが、週に数回、続きました。

 私を凌辱する男達は、毎回違う人物達でした。

 そんなことを続けていたら、月の物が来なくなるのは必然ですよね。



 カイン様は、仮面会かめんかいという密談の夜会に出席されていました。

 そこで、私を商品として扱っていたのですわ。



 お腹の子供はもちろん、カイン様の御子ではない。

 それを知っているカイン様は、仮面会で私の子供までも商品にしようと

 考えられましたの。



 私は、そんな生活が耐えられなくて。

 自分から命を絶ったのですわ。



 そして、気が付いたら、2年前のカイン様に紹介される前の

 時間に戻っていました。

 その後は極力、カイン様に関わらないようにして過ごしてきました」



「時間が戻った……?」



彼女の話は、想像を絶する内容だった。

エレノア姫の時と同じで、彼女も『やり直し』たということか?



「あまり驚かれないのですね」



「いや、そういう訳では……」



マリエラ嬢は、クスクスと笑ってから、

こちらのほしい言葉をつむぐ。



「私、ラナー様とも面識がありますのよ。

 もちろん、エレノア様のことも存じております。

 『私がここに居る』ということは、『やり直し』たということ」



私は、マリエラ嬢のことと、エレノア姫のことを考える。

2人の共通点が似通っている点が多いことだ。



「ふふふ。ベリアル王子は頭がよろしいのですね」



考えていたことが表情に出ていたのだろうか。



「貴方の考えで合っていますわ。転生者は1度だけ、

 『やり直し』が可能なんですの。

 と言っても、ここは私の2回目の世界の延長線なだけなのですけれど。

 『やり直し』はその人物の命の危険がある場合のみ、本人のみに自覚できる。

 『やり直し』した瞬間は時間がさかのぼる。

 それは、死に至った原因に関わるかどうかの人生の分岐点ですわね」


マリエラ嬢と、エレノア姫の話を含めると、転生者は『やり直し』ができる。

だが、『やり直し』できる限度はどうだろうか?



「『やり直し』の回数はどうなっている?」



「それに関しましては1度までと言いましたでしょう?

 転生者は他にもいらっしゃるんですのよ?」



マリエラ嬢の発言に私は絶句した。

そんなにいるのか?!



「私のハイライト王国のお友達も転生者でした。

 彼女もここはゲームの世界なのだと言っていました。

 私はその時、まだ前世の記憶がありませんでした。

 けれど、彼女の話す様子はとても真撃で。私は、彼女の話を信じましたわ。



 彼女の話す内容は私の知らないゲームの話でしたね。

 婚約破棄されて、殺されると何度も泣いていました。



 そして、ある日、自分は今2度目だと。

 自分は選ばれているのだから何回かやり直すのだと、言っておられました。

 ですが、3回目の彼女に合うことはありませんでした。



 彼女は、帰らぬ人となりました。



 転生者が3回目を生きていた場合、その3回目の記憶を持っている転生者に

 出会えるはずですわ。しかし、2回目までの人しか私は知りません。


 彼女の3回目はもしかしたら続いているのかもしれませんが、

 この世界は2回目の分岐の世界ですので、3回目の彼女に出会えないのは

 当たり前かもしれませんね」



マリエラ嬢の人生の分岐という話はとても興味深かった。

3度目の人生を歩む転生者には出会えない。

つまり、『やり直し』たあとに死を迎えると

この世界では、そのままなのだ。



私は、異世界の人間がこの世界に転生するときに、

神が与えたチャンスが『やり直し』なのではないかと考えた。



「そろそろ寮ですね」



私とマリエラ嬢は、エミリア嬢の部屋へと向かった。
しおりを挟む

処理中です...