親子そろって悪役令嬢!?

マヌァ

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学園生活開始~学園祭。

41話『マリエラ』

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※ベリアル様視点です。


エミリア嬢が高熱にうなされてから5日が経った。

完全に毒が抜けるまでは、あと1~2日はかかる。



ピーラについて詳しく調べると、稚魚から成魚に変わったすぐは、

他の魚に狙われないように体に毒をもつという。



完全に成魚になっていれば毒はない。

幸い、ピーラの毒性は弱く、数日間、高熱にうなされるだけだ。

毒に耐性のあるものならば1日寝込めば治るほどだった。

今回エミリア嬢が長引いているのは、心労や疲れが重なったのが原因だろう。



「今回は、完全に私のミスだな」



護衛として、あんなに近くに居たというのに、危険があるかもしれない場所に

エミリア嬢を連れ回したのだ。

予測できなかったとはいえ、護衛失格ではないのか?

何が、私の傍に居れば物理干渉も防げるだ。

私は、自分の力に驕っていただけはないのか?



部屋の温度が下がり、床が静かに凍り始めた。



「陛下、いい加減、元気だしなって! そんなんじゃ、エミリア様が

 元気になっても心配かけちゃうよ?

 あれは、陛下は悪くないって! 陛下の隠密として何も出来なかった

 僕の責任でしょ」



ポアソンが落ち込む私に声をかける。珍しく慰めの言葉だ。

ポアソンも今回は自分を責めている。

ピーラのことに気づけなかった自分に落ち込んでいるらしい。


「わかっている」



私は、校舎に行く準備をする。

本当は、ひと時もエミリア嬢から離れたくは無い。

だがそういう訳には行かない。自分のわがままで学園に通いだしたのだ。

それに、エミリア嬢の部屋には特殊な魔法をもう一つ仕込んである。

万が一ソレが発動する場合は、私は相手に容赦はしないだろう。



授業は歴史と教養のみ受けてすぐに寮に帰る日々だ。

同じクラスのエドワードと話す回数が増えたので

ナナリー嬢とも接点が増えてしまった。



できれば、関わりあいたくないのが本音だ。





馬車に乗り、教養の教室へ向かう。

広い教室での今日の教養は貴族のパーティ時の所作だ。

先生を王妃様になぞらえての、挨拶や貴族としての仕草を学ぶ時間だ。

婚約者同士のペアで挨拶に向かうのも、護衛にエスコートさせるのも自由だ。

もちろん、一人でも問題ない。



私は、出来るだけエドワードたちと離れた場所にいる。

同じクラスの同性達に混ざる。



「ベリアル王子、少しよろしいでしょうか?」



私に声をかけてくる人物がいた。

振り返ると、サラサラのショートボブの髪型と緑の瞳を持つ少女だった。


「マリエラ嬢。 どうされた?」



マリエラ嬢は、チラリとエドワードのほうに視線をむけた。

ナナリー嬢が怒っているようだ。理由はきっと教養の授業内容にだろう。



「アレらに聞かれたくないお話がございます。

 できれば、私をエスコートしてくださる?」



アレら……とは、ナナリー嬢達のことだろう。



「分かりました。では、レディ、行きましょう」



パーティ会場と化した教室を優雅に歩き回る。

ナナリー嬢達と反対側になる位置になるようにゆっくりと離れていく。



「ここ最近のエミリア様のご様子はいかがですか?」



マリエラ嬢はエミリア嬢のことを心配してくれているらしい。



(いい友をもったな。)



「まだ寝込んではいるが、あと数日でよくなると

 エミリア嬢の母君が言っていた」



ここ数日、寮のエミリア嬢の部屋にはエレノア姫が医師として

治療を行っている。あと数日経てば元気になるという。


「そうですか。ですが、こんなイベント、

 ゲームには無かったはずですわよね?」



は…………?



「マ、マリエラ嬢!?」



私は、自分の腕を掴む少女を見る。少女はうすく笑って見上げてきた。



「あら? 
 
 ベリアル王子も転生者だと思っておりましたが、違いましたの?」



マリエラ嬢は小さくつぶやいた。



「エミリア様に手を貸す様子を

 見ていたらそうじゃないかと思いましたのに」



マリエラ嬢も転生者?! 

では、エミリア嬢のことを分かっているのか?



「ふふふ。私も、エミリア様にご協力いたしますわ。

 ですから、私のことも協力して下さい」



何も言えずにいる私を知ってか知らずか、話を一方的にするマリエラ嬢。



「私とカイン様の婚約破棄を手伝って頂きますわ」



そう宣言したマリエラ嬢の瞳は、黒く濁り光が消えていた。




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