親子そろって悪役令嬢!?

マヌァ

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記憶と状況理解とゲーム知識。

8話『魔王は実は暇だった。1』

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※魔王様視点です。


山岳地帯の頂上付近にはマグマの火口がある。



頂上の火口の横に白亜の柱で出来た石の台座があり、

台座には魔法陣が掘り込まれている。



その台座に向かって歩いてくる人物がいた。



褐色の肌、白銀の髪を持ち、金の眼を持つ

2本のねじくれたヤギの角をもつ絶世の美青年だった。







私の名前はベリアル・ヴェルノーマ。



私は、魔王だ。



魔族の中で一番魔力が高いものが魔王になる。だけど、私は暇だ。

王なのだがら、忙しいように思うだろう。だけど、私は暇だ。



それはなぜか? 政務はもう100年後のぶんまで終わっているから。

それはなぜか? 宰相が先見の預言者だから。



……。



まぁ、暇だから、ちょっと転移の魔法陣の点検でもしながら

私達のことを語ろう。




人間達は私達のことを悪魔と呼ぶ。

だが、我等は魔族であって、悪魔ではない。



では、魔族とは何か? この説明が必要だろう。



我々の始祖達はこの大陸の傍にあった島に住まう民族だった。

彼らは、魔力が高く、褐色の肌と頭に角が生えていた。

もともとは、竜人と人間の掛け合わせで生まれた民族であろうと言われていた。

竜人とは人型を取った竜のことだ。竜人は子供達を残し、大陸を去った。



始祖達はそれでも平穏に過ごしていたそうだ。

だが、空から降ってきた流星によってその平穏は破られた。



島は流星によって、跡形もなく消え去った。



生き残った始祖達は隣の大陸、ロウマシー大陸へ移った。

だが、大陸の種族たちは始祖達を流星と共に来た侵略者だと言った。

さらに、始祖含め、我々を軽蔑の名称として魔族とさげすんだ。



安住の地をもとめる始祖が行き着いた場所が、魔族領ヴェルマだった。



という、昔話だ。



(こんな話をしたからと言って、私は別に人間を嫌ってはいない。)



魔族領は、山岳地帯全体をさす。

この呼び名は、主に魔族のみに呼ばれる名称である。

魔族の街ヴェルマに来た人間が、魔族領と言ったのが切欠だ。

ちなみに、私が名称を広めた。

人間の地図での表記では「地竜の背」と呼ばれている。



魔族領である山岳地帯は大陸の北部にある。

※ちなみに魔族領の魔王城と街は山岳の中にある。



大陸地図で見ると、この大陸は「C」の形にくねったツチドラのような形だ。

魔族領のある山岳地帯は首から上の頭の部分にかけて鋭くトゲトゲしい地帯だ。



※ ツチドラは日本で言うツチノコみたいな形の竜です。



ずんぐりした腹部には人間や亜人達で構成された国家が多数あり、

山岳地帯に近い国家は1つだけだ。



隣国ドルステン。地図のツチドラの胸部から首元にかけた横に広い国だ。



ドルステンの国王アスト・エルド・ノーム・ドルステンとは親友だ。

30年くらい前に、王国で起きた珍事件に巻き込まれたことが切欠だ。

今では、お忍びで王妃を連れて会いに来るほど仲良しである。



そのおかげで、ドルステン王国とは国交を交わしている。

ただ、周辺国家には内緒にだが。





目の前にある転移陣は、

ロウマシー大陸にすむ人間や亜人に始祖達が仕掛けた罠だ。



始祖達は大陸の住民を恨んでいた。

だから、大陸中に[禁忌の魔術書]という罠を張った。





『魔法陣を設置し、悪魔を呼びだす魔法陣。

 呼び出された悪魔は、呼び出した時の魔力量によって願いを叶える』 





実際は、魔族しか使えない一方通行の転移の魔法陣を

いろんな国や場所に設置させ、いつか復讐という名の侵略をするため。

だったらしいが……



ロウマシー大陸にすむ住民達は魔力が低く、魔方陣を設置するまで

かなりの時間が必要らしい。



実際に、1000年以上たっても、ロウマシー大陸にある転移魔法陣の数は

10も満たなかった。



1000年以上もたったから、恨みも薄れ、

新世代である自分達には始祖の目的は関係なくなっていた。



たまに誰かが魔法陣を設置して勝手に起動するが、

こちら側に人が近くにいないと意味が無い。

魔法陣両方から干渉して初めて道ができるのだ。





だが、最近の魔法陣は、親友がこちらに来るためにしか利用していない。

親友が使えるように、両側からでも転移できるように

改造したのは、1種類しかない。



そんなわけで、調整しないわけにはいかないのだ。



魔法陣を起動しようとした―――



その時だった。





魔法陣が急に光りだしたのは。


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