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退魔の輝き

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 オリヴィエは音を頼りに駆け続けた。

 徐々に視界が開け、森を抜ける。

 あの2人はどこへ運ぼうとしていたのやら、もう10分は走り続けていた。

 それくらいに離れた距離から、風が吹きつけていた。

 どれだけ巨大な魔物が現れたのか。

 さらに進むと、ようやく見覚えのある、柵が巡らされた建物が見えた。

 宿舎に辿り着いた。

 そこには、既に魔物の襲撃を受けた形跡が見えた。

 宿舎の壁は所々傷つき、建物の破片が土の上へ散っている。

 オリヴィエが呼吸を整えながらエントランスへ接近すると、何事かの話し声が聞こえて来た。

 高めの、女性の声……

 イレーネのものだと気づくのに、そう時間は掛からなかった。

「……騎士団の皆さんは今なお苦戦を強いられています。私たちは行かなくては」

 誰かと会話しているようだ。1人ではないらしい。

 いきなり乗り込むのではなく、様子を見よう。

 そっと身を屈め、扉の外から聞き耳を立てた。

「でも……危険です! それに、聖女様が行かれてしまったら、私たちは……」

「私たちなら、大丈夫です。聖女様がいるのですから。ここへは、聖女様の加護を宿した聖水を残して行きます。先ほど要所にも撒いておきましたので、魔の物が近づくことはできないはずです」

 口々に「聖女様」と声が上がる。

 話しているのはイレーネだが、その場にはリリアもいるようだ。

 声の種類から察するに、何人もの人間がエントランスに集結しているようだった。

 恐らく宿舎で働く使用人たちだろう。

「でも、聖女様は顔色が優れないようだ……」

「それでも立ち上がろうと、聖女様は強い心で決心されました。どうぞ、皆様も、成功を信じて応援してください。さぁ、聖女様」

 今まではそれほど多くなかったのに、やたらと「聖女」の言葉が頻発している。

 オリヴィエは息を潜めながらも、そんな事象を頭にひっかけていた。

 それに聖女としての力が目覚めた事実や、加護を宿す術があるなど初耳だ。

 何を企み、実行しようとしているのか、まったく見当がつかない。

 リリアの声は小さい。

 扉越しでは何と言っているのかわからない。

 すぐに足音が近づいたので、オリヴィエは慌てて身を翻した。

 曲がり角まで飛ぶようにして、身を隠す。

 扉が開いて、白いワンピース姿のリリアと、後ろに従うイレーネが外に出た。

 イレーネは手に小さな籠のようなものを携えている。

 使用人たちは、一様に不安そうな表情で2人を見送る。

「お気をつけて……」

「ええ、必ず成功させます」

 2人はオリヴィエに気付く様子もなく、足早に去って行った。

(魔物のいる方角へ向かう気だわ……団長からの指揮があった様子もないのに、どうして……?)

 まだ、頭の中がごちゃごちゃしている。

 しかし、魔物と騎士団の元へは、初めから合流するつもりだった。

 疑問だらけだが、こっそり2人を追尾することに決めた。

 幸い2人はオリヴィエの存在に気付いていない。

 先頭を、イレーネが入れ替わる。
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