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陰謀

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 変態かと疑われても仕方ない。

 オリヴィエは執務室で、唐突にキスされた再会初日を思い出した。

 途端に、もやっと、胸に黒い塊が出現する。

「それで、団長は……2人を呼んで、な、何をさせたの……?」

 まさか、保護対象に不埒な真似をするとは考えにくいが、ルーカスがどんな行為を「他愛無い」と捉えているのか。

 線引きがあるのなら、知りたい。

「最初に、お茶を注ぎました。それで、何かおもてなしをしなければって、手の甲にキスしたんです。そうしたら……今思えば、びっくりしたんですね。急に立ち上がって、お茶を零してしまって」

 オリヴィエは、固唾を飲んで耳を傾けた。

「それで、ティメオが零した紅茶を拭こうとして、そしたらふわぁって、カーテンがなびいて……気づいたら、身動きできないように捕まえられました」

「それで? どうなったの?」

 オリヴィエは半分、任務そっちのけで聞き入っていた。

 本当にそれだけなら、大分安心できる。

「一瞬怖かったけど、レヴァンシェル様は”危害は加えないから、心配するな”って。屋敷の中に何人いるのかとか聞かれて、それで、外に出してもらったんですよ。2階の窓から! あんなにスマートなのに、力強くって格好良いなぁって。それも、王子様みたいですよね」

「ティメオを降ろしてくれた人もいたんでしょ。その人は?」

 少しずつ興奮するリリアの口調に、イレーネは冷めた様子で口を挟む。

「それは、セルゲイ、様? よね? 助けてくれたいい人だけど、ちょっと、冷たい感じかな?」

「ええっ? 副団長が、冷たい?」

 無邪気なリリアに、思わずオリヴィエは聞き返してしまった。

 オリヴィエの中では、どちらかというと普段の生活で優しいのはセルゲイのほうだ。

 ルーカスも、少しはオリヴィエの存在を認めてくれたようだけれど、どこか態度はよそよそしい。

「淡々とレヴァンシェル様を遮ったり、ティメオを手荒く扱ったり。あの人はレヴァンシェル様の部下なんですよね?」

 どうやらリリアはセルゲイには良い印象がないらしい。

「セルゲイ様は、確かに団長の部下だけど、団長が最も信頼を置いている人よ。だから2人の間にはあまり、遠慮がないのよ」

「そういうものですか? それにどこか、他の人より態度も刺々しい気がして。だからあんまり、王子様って感じじゃあ」

「それはリリアが煩いからじゃない? そんな風にわからず屋だし。私はセルゲイ様も他の方と同じ、普通に見えたわ。それに、ギャレットの人達と比べれば、騎士団の人達は紳士で、みんな王子様みたいだった」

 イレーネは毛布を広げて膝の上に乗せた。
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