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娼館の制圧

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 館の周囲に街灯はない。入り口に申し訳程度の灯りがあるのと、各部屋からぼんやりと漏れる灯りのみが目の頼りだ。

 こちらからは門が確認できて、あちらからはオリヴィエが見えない、ぎりぎりの位置にいる。

 今頃内部では何が起きているだろう。

 無事に制圧したのか、まだ、動きがないのか、見当がつかない。

(皆が無事ならば、良いのだけど)

 まんじりともせず、時が経つのを待っていたが、ある時突如として炎が揺らめくような動きがあった。

 不審に思って目を凝らすと、灯りが揺らめいたのではなく、何者かの影が灯りを遮っているのだとわかる。

 その人物がこちらへ一直線に向かって来たので、オリヴィエは木の幹に身体を隠した。

 逃げるようなら追わねばならないが、迷いなくこちらへ向かってくるなんて。

(団員の、誰かかしら。……あっ!)

 生物との距離が吸う10mほどに接近して、それらが複数人であると気づく。

 更に5mで、少女2人だと理解した。

「止まりなさい」

 オリヴィエは素早く命じた。

 2人はびくっと静止した。互いの身体を摺り寄せ合う。

 今までオリヴィエの存在に気づいておらず、見当違いの方向をきょろきょろと見回している。

 暗闇ながら、さっと確認するが、やはり2人は少女で間違いなさそうだった。

 2人とも薄手の衣服の他、何も身に着けていない。

 武器のような物も所持していない。

「貴女たち、ギャレットに囚われていた子ね?」

「えっ、あなたは……? 聖騎士団の人ですか?」

「そうよ。私はオリヴィエ・シルバーモント。貴女たちは、逃げて来たの?」

「団員って、女の人だったんですね。私たち、レヴァンシエル様から言われてここに……」

「騎士団の人に会ったら、これを見せるように言われました。私たちを保護してくれるからって」

 後ろにいた長身の少女が掌を差し出した。

 小さくて見えにくい。だが、聖騎士団の徽章が載っている。

「わかったわ。近くに馬車が置いてあるから、案内するわ。他の子たちはどうしているかわかる? 団長……レヴァンシェルは何か言っていた?」

 少女たちは身ぎれいに着飾っているようだが、同年代の子たちと比べると体つきはほっそりしている。

 オリヴィエは2人を後ろから包むように肩を抱いた。

「見習いは、私たちの他に4人です。どうしているかは、わかりません」

 きゅっと目尻のつり上がった、気丈そうな少女が答えた。

「館の人達を捕らえて、リュート領へ引致すると言っていました。マダムと……あと誰か一人、王都へ……しょ、しょうえい? するとも」

「わかったわ。ありがとう、行きましょう」

(マダムクレアとフェルナンド子爵を詰問するのね。この子たちが私の元に辿り着くだろうタイミングで、団長たちは踏み込むに違いない)
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