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舞踏会

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 入団したての一週間は、瞬く間に経過した。

 初の遠征は辺境にあるボッカの街だ。

 王都から3日ほどの路程なので、日曜日に開催される夜会に合わせるため、木曜の日暮れには出立した。

 ずっとルーカスにつきっきりで旅行に、舞踏会……

 出がけに少しだけ浮かれた気持ちを持ったが、甘い気持ちは直ぐに霧散して消えた。

 何と言っても、旅程は体力頼みの強行軍。

 手前の街リュートで、身なりを整える手筈だが、それまでは宿に泊まらず野営だった。

 自らに課した厳しいトレーニングによって、基礎体力は鍛えられたはずだったが、1日の半分を移動に費やすのは流石に堪えた。

 おまけに、野営時は天幕もなく、木の幹や草葉の影、馬上で毛布一枚にくるまって眠る。

(私……こんな調子で、本当に舞踏会に出られるのかしら)

 夜になって焚火に当たると、どっと疲れが出た。

 今日の移動で、足はむくんでぱんぱんだ。

「疲れたか? 初めは辛いだろうが、じきに慣れるよ」

 馬の手綱を引きながら、セルゲイが慰めてくれた。まるで、初めて遠征に参加する新人を気遣うように。

「はい、頑張ります」

 オリヴィエは元気な声を出したが、内心溜息が出そうだった。

 しかし、遠征があることくらい、試験前から知っていた。

 これくらい、本当の遠征に比べれば、何でもない。

 しかし翌日、リュートでようやく温かい夕食にありついた時には、オリヴィエはその味に感動した。

 温かい、美味しい食事は心も解きほぐす。

「明日は、この順番でボッカに入る。俺とオリヴィエは馬車、セルゲイは御者だ。それ以外は、明日先発して各任に当たれ」

 食事を終えた一同は、ルーカスの部屋に集合し直した。

 ルーカスは、地図を差しながら淡々と説明する。

「了解しました!」と団員達は声を揃えた。

「オリヴィエ、わかっているだろうが、明日が本番だ。今日は早めに寝ておけよ」

「は、いっ。それはご心配なく。放っておいてもぐっすりです」

 オリヴィエは、ぐっと拳を握って宣言した。

 誇張でもなんでもない、これだけ疲れていれば横になっただけで眠れる自信がある。

「ほう、頼もしいな」

 ふいに。

 本当に不意を突いて、ルーカスが笑った。しかも、ふっ、と声を出して。

 あまりに自然な笑顔だったので、オリヴィエは胸がくすぐったくなった。

 厳しい顔、冷たい態度。再開してからこちら、優しくされた記憶がない。

 だから、ルーカスはすっかり人が変わってしまったのだと、オリヴィエは自分を納得させようとしていた。
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