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舞踏会への招待状
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「どうやら、多少は効果があったようですね」
ルーカスはセルゲイの狙いに嵌っている。
ただでさえ、気になって仕方ない存在だ。
それなのに、あんな姿でうろつかれたら、多少焦るどころではない。
今夜は夢に見てしまうかもしれない。
これが週末まで続くなんて、拷問みたいなものだ。
それにルーカス自身がこんなに心乱されているというのに、どうして目の前の男はこんなにけろりとしているのだろう。
なんだか腹が立った。
「お前……実は面白がっているんじゃないか?」
ルーカスがむっとして問いかけると、セルゲイはしれっとした態度のまま答えた。
「いえいえ、そんな、少しだけです。団長の反応がちょっと新鮮だったもので」
「何が?」と問い返したルーカスの声は、少し低かった。
「他の婦女子に言い寄られても、普段は気にもなさらないじゃないですか。眼中にないと言わんばかりで。それが、靴が変わっただけでここまで目の色を変えられるとは……」
くっく、とセルゲイは笑いを堪えている。
「本当に、オリヴィエに執心なんですね」
「……」
ルーカスは押し黙ったが、否定の言葉は出なかった。今口を開けば墓穴を掘りかねないとわかっていたからだ。
(俺は……そんなにあからさまだったのか)
確かに他の女性相手では、ここまで取り乱すことはないと思う。
オリヴィエは特別だ。
それがどうしてなのかはわからない。
王族の中では、存在はないも同然の感情だが、これが本当に世にいう一目惚れなのか。
「そんなに心配なら、舞踏会を待たず、素直に彼女を口説くことです。団長が強く押せば、陥落するでしょう。……お互いに想い合っているのだから」
「なにを馬鹿な」
思わずルーカスは吐き捨てた。
「……まさか、それを探りに、昨日オリヴィエを連れ出したのか?」
が、途中で我に返り、言葉を付け足した。
「私は団長に関して、余計な情報は漏らしていませんから、ご安心を」
「ならばいったい、何を」
「……他愛のない、世間話ですよ。趣味や、ご兄弟についてなど」
ルーカスはじっと、セルゲイを観察した。
今、セルゲイは「互いに想い合っている」と発言したか?
聞き直したら素直に教えてくれるだろうか。
いや、教えてくれるかもしれないが、何か面白くない態度を取るに決まっている。
「なら、もういい。仕事に戻れ。引き留めて悪かったな」
ルーカスは、会話を切り上げる。
セルゲイも「やれやれ」といった様子で部屋を出ていった。
確かに今……他の男が自分と同じ目でオリヴィエを見るのは、堪らなく不愉快だ。
もしオリヴィエが、ルーカスと同様に強い思いを抱いてここまで会いに来てくれたなら……
そんな都合の良い解釈をしてもよいのか?
甘い期待と不安が、ない交ぜになって押し寄せる。
”俺のものにしたい” と告白しても許されるだろうか?
しかし、自分の欲求を優先した結果、オリヴィエを不幸にする結果を招いたら?
わかっている。
本当は解っている。
今の自分にオリヴィエを幸せにする自信がないことを。
ルーカスはセルゲイの狙いに嵌っている。
ただでさえ、気になって仕方ない存在だ。
それなのに、あんな姿でうろつかれたら、多少焦るどころではない。
今夜は夢に見てしまうかもしれない。
これが週末まで続くなんて、拷問みたいなものだ。
それにルーカス自身がこんなに心乱されているというのに、どうして目の前の男はこんなにけろりとしているのだろう。
なんだか腹が立った。
「お前……実は面白がっているんじゃないか?」
ルーカスがむっとして問いかけると、セルゲイはしれっとした態度のまま答えた。
「いえいえ、そんな、少しだけです。団長の反応がちょっと新鮮だったもので」
「何が?」と問い返したルーカスの声は、少し低かった。
「他の婦女子に言い寄られても、普段は気にもなさらないじゃないですか。眼中にないと言わんばかりで。それが、靴が変わっただけでここまで目の色を変えられるとは……」
くっく、とセルゲイは笑いを堪えている。
「本当に、オリヴィエに執心なんですね」
「……」
ルーカスは押し黙ったが、否定の言葉は出なかった。今口を開けば墓穴を掘りかねないとわかっていたからだ。
(俺は……そんなにあからさまだったのか)
確かに他の女性相手では、ここまで取り乱すことはないと思う。
オリヴィエは特別だ。
それがどうしてなのかはわからない。
王族の中では、存在はないも同然の感情だが、これが本当に世にいう一目惚れなのか。
「そんなに心配なら、舞踏会を待たず、素直に彼女を口説くことです。団長が強く押せば、陥落するでしょう。……お互いに想い合っているのだから」
「なにを馬鹿な」
思わずルーカスは吐き捨てた。
「……まさか、それを探りに、昨日オリヴィエを連れ出したのか?」
が、途中で我に返り、言葉を付け足した。
「私は団長に関して、余計な情報は漏らしていませんから、ご安心を」
「ならばいったい、何を」
「……他愛のない、世間話ですよ。趣味や、ご兄弟についてなど」
ルーカスはじっと、セルゲイを観察した。
今、セルゲイは「互いに想い合っている」と発言したか?
聞き直したら素直に教えてくれるだろうか。
いや、教えてくれるかもしれないが、何か面白くない態度を取るに決まっている。
「なら、もういい。仕事に戻れ。引き留めて悪かったな」
ルーカスは、会話を切り上げる。
セルゲイも「やれやれ」といった様子で部屋を出ていった。
確かに今……他の男が自分と同じ目でオリヴィエを見るのは、堪らなく不愉快だ。
もしオリヴィエが、ルーカスと同様に強い思いを抱いてここまで会いに来てくれたなら……
そんな都合の良い解釈をしてもよいのか?
甘い期待と不安が、ない交ぜになって押し寄せる。
”俺のものにしたい” と告白しても許されるだろうか?
しかし、自分の欲求を優先した結果、オリヴィエを不幸にする結果を招いたら?
わかっている。
本当は解っている。
今の自分にオリヴィエを幸せにする自信がないことを。
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