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事情

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 夕食の時間を告げる鐘が鳴り響く。

(いけない!)

 オリヴィエは飛び起きた。

 ここが慣れ親しんだ実家でないと思い出す。

 待っていても誰も起こしてくれないのだと、時計を見上げる。

 掛け時計は17時を示していた。

 慌ててベッドから立ち上がると、施設案内図を手に取る。

 食堂は管理棟の1階の端に位置していた。

(良かった。近いわ)

 ほっと息を吐いて、隊服に着替える。オリヴィエは、いそいそと部屋を出た。

「あ」

(鍵を忘れた!)

 部屋に引き返して鍵を掛ける。普段の習慣が身についてしまっている。

 ここでは何もかも、自分でこなさなければならないのだ。

 だが、廊下を進んでも、この階には誰もいないのか、物音一つしなかった。

 オリヴィエは再び施設図に目を落とすと、食堂までの経路を頭の中でシミュレーションする。

 5分ほど歩くと、食堂の入り口が見えてきた。

 両開きのドアは開け放たれていて、中からは楽しそうな笑い声が聞こえてくる。

(皆、もう集まっているんだわ)

 オリヴィエは慌てて中へ滑り込むと、厨房の奥にあるカウンターに向かった。

「こんばんは」

 そこにいたコックに声を掛けると、彼はオリヴィエの顔を見て一瞬固まったがすぐに笑顔を取り戻す。

「こんばんは、お待ちしていましたよ」

 オリヴィエは促されるまま奥へ進み、食事のトレイを受け取って食堂を見渡した。

 長テーブルが6つ、それに沿って白いクロスのかかった大小様々な椅子が並んでいる。

 テーブルの上には幾つかの調味料と、小さな花飾りが配置されていた。

 食事時のためか、席はほとんど埋まっていて、オリヴィエと同じ制服を着た団員が楽しそうに談笑している。

 中には食事は終えたのに、カップを片手にお喋りに花を咲かせている者もいた。

 オリヴィエは、窓際の空いている席を目指して進んだ。

「ここ、よろしいかしら?」

 先客に断りを入れて隣へ腰掛ける。角刈りの団員の皿はもう空っぽで、間もなく食事を終えると予測できた。

 と、思ったのだが――

「ん? あぁ……」

(お、大きい……)

 彼はすーっと立ち上がるとオリヴィエを見下ろして、目を瞬いた。

「あっ、あんたが例の、女騎士?」

 騎士が叫ぶと、食堂は俄かに騒然となった。

 食堂中の目が、一斉にオリヴィエに向けられる。

「え、えぇ……多分、そうです」

 オリヴィエは戸惑いつつ頷いた。

(この人、背が高いわ。もしかして2メートル以上あるんじゃない?)

 彼はまじまじとその大柄な身体で見降ろしてくるので、オリヴィエは居心地が悪くなる。
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