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古着屋に妖怪現る

8話

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「お話の途中ですみません。夕食の相談なのですが」

「もう、そんな刻限か。じゃあ、そろそろおいらも帰るよ!  どうもご馳走様でした」

 ぺこりと頭を下げた悠耶の袖を、さっと寛太が押さえた。

「いえ、よろしければ、お悠耶さんも召し上がって行きませんか。女将さんが仰っています」

 惣一郎は片眉を跳ねあげた。

「いいの?  ……でもさすがに夕飯までご馳走になったら、お父っつあんに叱られるなあ」

 自宅以外での食事に、あからさまに関心を示した悠耶だった。

 だが食事となると、おやつよりは障害が高くなるらしい。一応自粛するそぶりを見せる。

「風介さんには使いの者を出します。ならば、よござんすね。支度をしますから、まだゆっくりなすっててください。後ほど、女将さんもいらっしゃいますんで」

「おっ母さんが?」

 母の名が上がった時点で嫌な気がしていたのだ。

 悠耶と食事とは嬉しいが、そんなうまい話があるはずなかった。

「ぜひにとのご提案です。女将さんも若旦那の部屋で、一緒に召し上がるおつもりですよ」

「えっ、惣一郎のおっ母さんも一緒なの?  いいね!  楽しみだなあ!」

 いったい菊はどういうつもりなのだろう。

 悠耶は嬉しそうだし、今更、やっぱり飯は食わずに帰れとも言われない。

 もしや菊は悠耶との仲を勘繰って、何か探ろうという腹なのか。

 寛太が退室するのを、惣一郎は落ち着かぬ心地で見送った。横では悠耶がにこにこと楽しそうにしている。

 せっかく嬉しい気持ちでいたのに、解決できそうもない大事を前に惣一郎は消沈した。

「何、惣一郎、変な顔をして」
 
 惣一郎に目を戻した悠耶が、ぷっと吹き出す。

 ケラケラと笑って、呑気なものだ。

 俺の気持ちも知らないで、とお門違いの不満を惣一郎が抱いた、その時。

 きゃーっと、階下で女の悲鳴が上がった。

「何だ!?  何事だ??」

 続いて、寛太の声とバタバタと階段を下る足音が聞こえる。

 悠耶は咄嗟に立ち上がった。

 だが、惣一郎は体を持ち上げようとして腕や肩、あちこちが痛む。

 その姿勢で静止して僅かに身を乗り出しただけとなった。

「何があったんだ」

「おいら、見てくるよ!」

 言うが早いか、悠耶は鞠のように勢いよく部屋を飛び出した。身の軽い女子だ。

 惣一郎はついて行けない。

 座卓を支えに、よろけながら立ち上がった。

 まったく、こんな情けなくて不甲斐ない思いは、もう沢山だ。早く体を治さねば。

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