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家族
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広間には教皇のマグヌスを筆頭に、ネンゲル、ヴェーシュにセシルやそれぞれの側近たち……。
と、主要人物が勢揃いして、お待ちかねの様子だった。
(ヒエッ、ネンゲル殿下にヴェーシュ様……! どうやって、説明しよう)
ヴェーシュは祖父のマグヌスと共謀して、ネンゲルの不貞を暴こうとしていた。
シオンが聖殿を出てどれくらい時間が経過したのだろう。
2人は修羅場を迎えたのか……?
当然、藪蛇をつつくような真似はせず、口を噤んで傍観の姿勢を保つ。
ヴァイスの話通り、広間にぽっかり空いていた穴は塞がっていた。
「只今戻りました。ご覧の通り、シオンもリラも無事です」
ヴァイスが無事を宣言しても、我先にと口火を切る者はいなかった。
誰もが後ろめたいのか、戸惑った様子で口を噤んでいる。
カルロなど、ヴァイスが首を向けただけで、あからさまに目を背けた。
「リラを攫った魔物の正体は夢魔でした。消滅しましたので、もうリラが狙われる心配はありません」
どうなることかと、固唾を飲んで見守っていたが、ヴァイスは一言告げると、一同に背を向けて歩き出した。
「セシル、帰城の支度を。シュニー城へ帰るぞ」
呼ばれたセシルが面食らって、弾かれたように駆け出した。
「えっ? ヴァイス?? 皆さんに説明とか、するんじゃないの……?」
シオンも動揺を隠せない。
リラごと抱えられていることも忘れて、問いかけた。
「俺から説明できることはない。後は全て兄上次第だ。セシル、リラはもうじき空腹を訴える頃だから、馬車の用意をする間に食事を摂らせてくれ」
「か、かしこまりました。ですが、大公閣下、そのう、私は……」
セシルは傅きながらも、視線を上げられず、口籠る。
無理もない。
どこまで承知だったかわからないけれど、リラの危険にセシルも加担する結果となった。
セシルなりに良心の呵責に苛まれているのだろう。
「待ってくれ。……ヴァイスの言う通りだ。全ての原因は私にある。説明したいから、同席して欲しい」
ネンゲルの制止が入り、ヴァイスは意見を伺うようにシオンに目を向けた。
「私も、知りたい」
「疲れてはいないか?」
「説明を聞かずに帰っても、気になって眠れないわ」
シオンが微笑すると、迷いのない声でネンゲルが進み出た。
「では、手間をかけるが部屋を変えよう。リラにも食事を摂らせなければならないしな」
ネンゲルは自ら先導し、別棟にある応接室にシオンらを招いた。
そこで、シオンがエルデガリアに来る前の出来事が、詳らかに語られた。
リラの両親が、明らかになった。
と、主要人物が勢揃いして、お待ちかねの様子だった。
(ヒエッ、ネンゲル殿下にヴェーシュ様……! どうやって、説明しよう)
ヴェーシュは祖父のマグヌスと共謀して、ネンゲルの不貞を暴こうとしていた。
シオンが聖殿を出てどれくらい時間が経過したのだろう。
2人は修羅場を迎えたのか……?
当然、藪蛇をつつくような真似はせず、口を噤んで傍観の姿勢を保つ。
ヴァイスの話通り、広間にぽっかり空いていた穴は塞がっていた。
「只今戻りました。ご覧の通り、シオンもリラも無事です」
ヴァイスが無事を宣言しても、我先にと口火を切る者はいなかった。
誰もが後ろめたいのか、戸惑った様子で口を噤んでいる。
カルロなど、ヴァイスが首を向けただけで、あからさまに目を背けた。
「リラを攫った魔物の正体は夢魔でした。消滅しましたので、もうリラが狙われる心配はありません」
どうなることかと、固唾を飲んで見守っていたが、ヴァイスは一言告げると、一同に背を向けて歩き出した。
「セシル、帰城の支度を。シュニー城へ帰るぞ」
呼ばれたセシルが面食らって、弾かれたように駆け出した。
「えっ? ヴァイス?? 皆さんに説明とか、するんじゃないの……?」
シオンも動揺を隠せない。
リラごと抱えられていることも忘れて、問いかけた。
「俺から説明できることはない。後は全て兄上次第だ。セシル、リラはもうじき空腹を訴える頃だから、馬車の用意をする間に食事を摂らせてくれ」
「か、かしこまりました。ですが、大公閣下、そのう、私は……」
セシルは傅きながらも、視線を上げられず、口籠る。
無理もない。
どこまで承知だったかわからないけれど、リラの危険にセシルも加担する結果となった。
セシルなりに良心の呵責に苛まれているのだろう。
「待ってくれ。……ヴァイスの言う通りだ。全ての原因は私にある。説明したいから、同席して欲しい」
ネンゲルの制止が入り、ヴァイスは意見を伺うようにシオンに目を向けた。
「私も、知りたい」
「疲れてはいないか?」
「説明を聞かずに帰っても、気になって眠れないわ」
シオンが微笑すると、迷いのない声でネンゲルが進み出た。
「では、手間をかけるが部屋を変えよう。リラにも食事を摂らせなければならないしな」
ネンゲルは自ら先導し、別棟にある応接室にシオンらを招いた。
そこで、シオンがエルデガリアに来る前の出来事が、詳らかに語られた。
リラの両親が、明らかになった。
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