サレカノでしたが、異世界召喚されて愛され妻になります〜子連れ王子はチートな魔術士と契約結婚をお望みです〜

きぬがやあきら

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異変

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「何を愚かな。カルロの判定が真実なら、お前は正真正銘の招かれざる客だ。解放などするものか。この目で判定を確認次第、消えてもらう」

「早く外しなさい。リラはどこかって聞いてるの!」

「何たる口の聞き方か。これだから下賎な民は」

 マグヌスはカルロの手を借りながら立ち上がると、大仰に眉を顰めた。

 どうにもシオンを見下したいらしい。

 こちらの意を1ミリも顧みない高慢な態度と、募る危機感に、とうとうシオンの堪忍袋の緒が切れた。

「うっさい、このクソジジイ! 鎖を外せって言ってんのよ! 耄碌しすぎて理解できない? この、ボケ!」

「な、な……!? こ、の」

 マグヌスは顔を真っ赤に染めた。怒りで言葉にならないようだ。

「シュニー夫人、これ以上の侮辱は聞き捨てなりません。苦しみたくないなら大人しくしていてください」

「外せって言ってるのに、話が通じないのね、アンタたちは! 脅して言うなりになるとでも思うの!? やれるもんならやってみな」

「おのれ、不遜な!」

 カルロまで肩を怒らせ、シオンに向かい手を翳した。

 それが魔術の発動動作なのは、もう分かり切っている。

 どの形式で攻撃を仕掛けるのかと身構えると、身に掛かる負荷で先ほどと同じで空気を圧縮する魔術だとわかった。

 空気の圧縮は原子密度の操作に拠る。

 シオンの知識はまだ初級レベルで、基礎の原理を理解したに過ぎない。

 けれど、実際に一度その攻撃を喰らい、身体で学習している。

 シオンは重たい鎖ごと、自身の右手を突き出した。

 グッ、と掌にカルロの術式の核が触れる。

 掌にかかる圧を、握り込む。

 まるでーー蜜柑のように柔らかな果実のような感触だ。

「こんなんで私を倒そうと? 思ったより軽いわね」

 掌に力を込めると、柔らかな果実が果汁を迸らせるようにして、核が弾けて散った。

「ばっ、馬鹿な」

「どうしたカルロ、そのような小娘に後れを取るなど」

「申し訳ありません。しかし、これは……」

 カルロは呆然と自分とシオンの手を見比べた。

 霧散した魔力を再び取り戻そうとしているが、シオンは拳を解かない。

 魔力の質量が物を言うなら、絶対に手は緩めない。

「ええい、情けない。このような小物相手に手こずるとは。ならば私が直々に罰を下してやる」

 カルロが制裁をしくじっても、拘束されているからかマグヌスは安易に前に出た。

 手近にあった燭台を取る。

「待、お待ち下さい! 教皇様」

 あんな物で殴れば、確実にシオンの頭は粉砕される。

 消すなどと物騒な発言からして、本気でシオンを亡き者にするつもりらしい。

「神の代理人たるこの私を侮辱するなど、万死に値する。我が神の鉄槌を受けるがいい!」」

 マグヌスは燭台を振り上げ、シオンに狙いを定めた。
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