サレカノでしたが、異世界召喚されて愛され妻になります〜子連れ王子はチートな魔術士と契約結婚をお望みです〜

きぬがやあきら

文字の大きさ
上 下
74 / 131
異変

しおりを挟む
「何を愚かな。カルロの判定が真実なら、お前は正真正銘の招かれざる客だ。解放などするものか。この目で判定を確認次第、消えてもらう」

「早く外しなさい。リラはどこかって聞いてるの!」

「何たる口の聞き方か。これだから下賎な民は」

 マグヌスはカルロの手を借りながら立ち上がると、大仰に眉を顰めた。

 どうにもシオンを見下したいらしい。

 こちらの意を1ミリも顧みない高慢な態度と、募る危機感に、とうとうシオンの堪忍袋の緒が切れた。

「うっさい、このクソジジイ! 鎖を外せって言ってんのよ! 耄碌しすぎて理解できない? この、ボケ!」

「な、な……!? こ、の」

 マグヌスは顔を真っ赤に染めた。怒りで言葉にならないようだ。

「シュニー夫人、これ以上の侮辱は聞き捨てなりません。苦しみたくないなら大人しくしていてください」

「外せって言ってるのに、話が通じないのね、アンタたちは! 脅して言うなりになるとでも思うの!? やれるもんならやってみな」

「おのれ、不遜な!」

 カルロまで肩を怒らせ、シオンに向かい手を翳した。

 それが魔術の発動動作なのは、もう分かり切っている。

 どの形式で攻撃を仕掛けるのかと身構えると、身に掛かる負荷で先ほどと同じで空気を圧縮する魔術だとわかった。

 空気の圧縮は原子密度の操作に拠る。

 シオンの知識はまだ初級レベルで、基礎の原理を理解したに過ぎない。

 けれど、実際に一度その攻撃を喰らい、身体で学習している。

 シオンは重たい鎖ごと、自身の右手を突き出した。

 グッ、と掌にカルロの術式の核が触れる。

 掌にかかる圧を、握り込む。

 まるでーー蜜柑のように柔らかな果実のような感触だ。

「こんなんで私を倒そうと? 思ったより軽いわね」

 掌に力を込めると、柔らかな果実が果汁を迸らせるようにして、核が弾けて散った。

「ばっ、馬鹿な」

「どうしたカルロ、そのような小娘に後れを取るなど」

「申し訳ありません。しかし、これは……」

 カルロは呆然と自分とシオンの手を見比べた。

 霧散した魔力を再び取り戻そうとしているが、シオンは拳を解かない。

 魔力の質量が物を言うなら、絶対に手は緩めない。

「ええい、情けない。このような小物相手に手こずるとは。ならば私が直々に罰を下してやる」

 カルロが制裁をしくじっても、拘束されているからかマグヌスは安易に前に出た。

 手近にあった燭台を取る。

「待、お待ち下さい! 教皇様」

 あんな物で殴れば、確実にシオンの頭は粉砕される。

 消すなどと物騒な発言からして、本気でシオンを亡き者にするつもりらしい。

「神の代理人たるこの私を侮辱するなど、万死に値する。我が神の鉄槌を受けるがいい!」」

 マグヌスは燭台を振り上げ、シオンに狙いを定めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

結婚しても別居して私は楽しくくらしたいので、どうぞ好きな女性を作ってください

シンさん
ファンタジー
サナス伯爵の娘、ニーナは隣国のアルデーテ王国の王太子との婚約が決まる。 国に行ったはいいけど、王都から程遠い別邸に放置され、1度も会いに来る事はない。 溺愛する女性がいるとの噂も! それって最高!好きでもない男の子供をつくらなくていいかもしれないし。 それに私は、最初から別居して楽しく暮らしたかったんだから! そんな別居願望たっぷりの伯爵令嬢と王子の恋愛ストーリー 最後まで書きあがっていますので、随時更新します。 表紙はエブリスタでBeeさんに描いて頂きました!綺麗なイラストが沢山ございます。リンク貼らせていただきました。

所詮、わたしは壁の花 〜なのに辺境伯様が溺愛してくるのは何故ですか?〜

しがわか
ファンタジー
刺繍を愛してやまないローゼリアは父から行き遅れと罵られていた。 高貴な相手に見初められるために、とむりやり夜会へ送り込まれる日々。 しかし父は知らないのだ。 ローゼリアが夜会で”壁の花”と罵られていることを。 そんなローゼリアが参加した辺境伯様の夜会はいつもと雰囲気が違っていた。 それもそのはず、それは辺境伯様の婚約者を決める集まりだったのだ。 けれど所詮”壁の花”の自分には関係がない、といつものように会場の隅で目立たないようにしているローゼリアは不意に手を握られる。 その相手はなんと辺境伯様で——。 なぜ、辺境伯様は自分を溺愛してくれるのか。 彼の過去を知り、やがてその理由を悟ることとなる。 それでも——いや、だからこそ辺境伯様の力になりたいと誓ったローゼリアには特別な力があった。 天啓<ギフト>として女神様から賜った『魔力を象るチカラ』は想像を創造できる万能な能力だった。 壁の花としての自重をやめたローゼリアは天啓を自在に操り、大好きな人達を守り導いていく。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

稀代の悪女として処刑されたはずの私は、なぜか幼女になって公爵様に溺愛されています

水谷繭
ファンタジー
グレースは皆に悪女と罵られながら処刑された。しかし、確かに死んだはずが目を覚ますと森の中だった。その上、なぜか元の姿とは似ても似つかない幼女の姿になっている。 森を彷徨っていたグレースは、公爵様に見つかりお屋敷に引き取られることに。初めは戸惑っていたグレースだが、都合がいいので、かわい子ぶって公爵家の力を利用することに決める。 公爵様にシャーリーと名付けられ、溺愛されながら過ごすグレース。そんなある日、前世で自分を陥れたシスターと出くわす。公爵様に好意を持っているそのシスターは、シャーリーを世話するという口実で公爵に近づこうとする。シスターの目的を察したグレースは、彼女に復讐することを思いつき……。 ◇画像はGirly Drop様からお借りしました ◆エール送ってくれた方ありがとうございます!

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!

珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。 3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。 高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。 これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!! 転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!

【完結】魔力がないと見下されていた私は仮面で素顔を隠した伯爵と結婚することになりました〜さらに魔力石まで作り出せなんて、冗談じゃない〜

光城 朱純
ファンタジー
魔力が強いはずの見た目に生まれた王女リーゼロッテ。 それにも拘わらず、魔力の片鱗すらみえないリーゼロッテは家族中から疎まれ、ある日辺境伯との結婚を決められる。 自分のあざを隠す為に仮面をつけて生活する辺境伯は、龍を操ることができると噂の伯爵。 隣に魔獣の出る森を持ち、雪深い辺境地での冷たい辺境伯との新婚生活は、身も心も凍えそう。 それでも国の端でひっそり生きていくから、もう放っておいて下さい。 私のことは私で何とかします。 ですから、国のことは国王が何とかすればいいのです。 魔力が使えない私に、魔力石を作り出せだなんて、そんなの無茶です。 もし作り出すことができたとしても、やすやすと渡したりしませんよ? これまで虐げられた分、ちゃんと返して下さいね。 表紙はPhoto AC様よりお借りしております。

処理中です...