サレカノでしたが、異世界召喚されて愛され妻になります〜子連れ王子はチートな魔術士と契約結婚をお望みです〜

きぬがやあきら

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お茶会

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 こちらのお国は多分、貞操観念が強い。

 日本でも過去には女性の純潔が重要視されている時代があった。

 それに現代の日本でだって、出会って1、2ヶ月で……はそうないのではなかろうか。

「違うのよ、シオン。責めてるわけじゃないの。私こそ不躾でごめんなさい。ただ、女性同士のほうが話しやすいこともあるでしょう。選択肢のない状況で結婚を強いられて、貴女が辛い思いをしていないか……気になっていたの。私の思い過ごしならいいのだけど」

 ヴェーシュはシオンの葛藤を察し、慌てて言葉を継いだ。

「辛いこと……」

 その言葉に、シオンはピタリと固まった。

 ヴェーシュはシオンを深く気遣ってくれていたのだ。

 シオンがヴァイスと結ばれた経緯を、ヴェーシュはネンゲルから聞いているだろう。

 ヴァイスは妻にするため、自分に並ぶ魔力を持つ女性を異世界から召喚した。

 その女性がシオンだ。

 ヴァイスはシオンを大変気に入り、密かに囲い、恋仲になった。

 そうしている間に子をなし、出産を機に正式に王室に報告し、子の存在を盾に結婚を承諾させた。

 シオンはヴェーシュの心配を的確に悟って、ごくりと唾を飲む。

(今まで誰も触れなかったからスルーしてたけど、やっぱりそうだよね。普通に考えれば、ヴァイス、すっごいヤバイ奴だ)

 捉え方によっては、「拉致・監禁・陵辱」と三拍子揃った、立派な犯罪案件だ。

 拉致・監禁は近からず遠からずである。

 もしもシュニー城の人たちが優しくなかったら、シオンは絶望のどん底に叩き落とされていただろう。

 ふと想像して、ゾッと怖気がした。

 だが、それと同時にこの一月、自分がどれだけ恵まれて幸せに過ごしていたのかを思い知った。

 突然故郷と離別して、丸きりの新生活に飛び込んだのに、シオンは毎日が楽しくて仕方なかった。

 悲惨だった過去を思い出す間もないくらいに。

 ……それは突き詰めれば、ひとえにヴァイスのお陰だ。

(ヴァイスの名誉のためにも、そこは、否定しておかないと)

「ヴェーシュ様。お気遣いいただきありがとうございます。確かに最初は戸惑いましたが、辛いと思ったことは一度もありません」

「本当?」

「はい」

 シオンはしっかりとヴェーシュの目を見て頷いた。

「ヴァイスは、その……常識破りで、強引なので、何を考えてるのか分からなくて不安になる時もあります。けど、根はとても生真面目で優しい人なんじゃないかと、感じるようになって」

「そうなの。それで、ヴァイスを好きになったの?」

 ヴェーシュはシオンを見つめ返し、探るように尋ねた。

「は……い、そんなところです」

 好きかと問われ、急に恥ずかしくなる。

 何となく身体が火照るような気がして、誤魔化すように頬を掻いた。

 良いタイミングで侍女が戻ってきて、カップに紅茶を注いでくれる。
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