サレカノでしたが、異世界召喚されて愛され妻になります〜子連れ王子はチートな魔術士と契約結婚をお望みです〜

きぬがやあきら

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奥様は・・・な魔術師

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 サッと目を通したが、読み飛ばしてはいなかった。

 この項は、魔術の発現原理や歴史についてだ。

 その前頁は「魔力と属性」という見出しで、七大属性の紹介だったはず。

 最後は「実際に属性を感じてみよう」的なコラムで締めくくられていた。

 ……うん、内容は頭に入ってる。

 トラリオが嘘をつく理由もないから、間違っているのはシオンの体感時間なのか。

 再びトラリオを見送って、シオンは続きの本を台に広げた。

(まさか、ね……)

 頭に浮かんだ仮説を疑いつつ、気合を入れて頁を捲る。

 次にトラリオが砂時計を持って戻ってくるまでに、20分はかからないだろう。

 それから、シオンは一心に魔術書を読み進めた。

 トラリオが砂時計を持参し、ポットの中身が冷めても、集中力は途切れない。

 それどころか読み進めるほどに頭は冴え、脳の隅々までが活性化するようだった。

 結局この日は昼食まで、読書に没頭した。

 1時間を計測できる砂時計が1回転半するまでに12冊、初級魔術の基礎、下巻までを読了していた。

 それどころか……

「奥様、食後間もないうちに申し訳ありません。お耳に入れたいことがあるのですが」

 シオンは自室で食後のお茶を嗜みながら、リラの揺籠を揺らしてあやしている。

 部屋にはセシルもいたが、サラは不在だった。

 そこへトラリオ自ら、報告にやってきたのだから、急ぎの用事に違いなかった。

 手にはトレーを携えており、その上に何やら手紙を載せている。

「何かしら?」

「王城からの使者がお越しになり、書状を預かりました。奥様宛ですが、用件も承りましたもので」

「王城から? ネンゲル……殿下、かしら」

 シオンはトラリオから封書を受け取ったが、その差出人を見て首を捻る。

 このエルデがリアに呼ばれてから、僅か1ヶ月。

 それもシュニー城に留まり続けて、知り合いは皆無だ。

 差出人の名は、ヴェーシュ・エルデガリア。ファミリーネームがエルデガリアならば。

(ヴァイスの親戚の人? お名前から拝察するに、女性っぽいけど、ヴァイスのお母さんは亡くなってるのよね)

「用件とは何だったの?」

 ペーパーナイフを取り上げながら、シオンは不自然にならないように会話を続けた。

 こういう、プライベートな情報の共有不足は大変に困る。

 実際にはヴァイスと出会って1ヶ月しか経ていない。

 だが、名目上シオンがリラを生んでいるのだからヴァイスとシオンは少なくとも1年ほどの時を共にしている理屈になる。

 それでここまでお互いを知らないのは、不自然が過ぎる。

 次に顔を合わせたら、その辺の事情を突っ込んで聞いておかなければならない。
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