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寝室

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 ヴァイスはヴァイスなりに気を遣って揺らしたようだった。

 するとリラはピタリと泣き止んだ。ぐっと、息を詰める。

 一瞬顔を真っ赤にしたかと思うと、満足げに脱力した。

(あっ)

「シオンの言う通りにしたら泣き止んだぞ。良い子だな、リラ。わかってくれたのか」

 ヴァイスはリラが泣き止んだことに、いたく感動したようだ。

「もう寝そうだ。可愛いな……む?」

「ヴァイス。リラね、今」

 喜んでいるところに水を差すようで気が咎めたが、ヴァイスも異変に気が付いたらしい。

「リラから異臭がする気がする。だが、そんなはずは」

「あるっ、あるの! 今のきっと、うんちよ。 早くオムツを替えないと漏れちゃうから貸して」

「なるほど、お漏らしか」

 シオンは焦ったが、ヴァイスは動じなかった。

 この世界には紙オムツがない。

 布製なので、割とすぐに漏れてしまう。

 しかも今の感じだと、大きいほうの可能性が高い。

(下手に動かすと、被害が拡大しちゃう!)

「よし、すぐに綺麗にしてやろう」

「ヴァイスが替えてくれるの? そしたら赤ちゃん用の寝台があるからそこに……」

 一刻も早く処理しないと、ヴァイスまで汚れる。

 寝かせてもらっているうちに、布巾と替えの服を支度しよう。

 リラのお尻は残り湯で洗って……。

 頭の中で算段を整え、指示をしようと、シオンは寝台を指差す。

 しかし、振り返った時にはもう、ヴァイスは行動に移っていた。

「わあっ、ヴァイス! 何してるの!?」

「何って、綺麗にする」

 リラはヴァイスの手を離れ、ふわりと宙に浮いていた。

 サッと左手をかざすとリラのオムツ部分から神々しい光が溢れた。

 面食らっているうちに、おくるみから肌着から、見えない力で次々と剥がされ、オムツが外れると愛らしい小さなお尻が現れた。

 思わず注目するが、お尻は汚れていない。

 ついでに剥がれたオムツもチェックしたが、洗いたてのように真っさらだ。

「えっ、どうして? どうなってんの」

「清めた。こんなもので良いか、確認してくれ」

「清めたって、もしかして魔術で?」

 目を丸くして眺め回すが、浮いたままのリラは沐浴後と同様の清らかさで、汚れの痕跡さえ見当たらない。

 本人は宙に浮いている実感もないのか。浮遊と抱き心地の差異に驚きもせず夢と現を彷徨っている。

 思わずお尻に触れてみるが、肌触りはサラサラだ。

「どうなってるの……? 魔術って。汚れは、どこいったの??」

 普通なら、汚物はトイレに流して、オムツは洗濯する。

 リラはお湯で洗うか、お湯がすぐに支度できない夜間は濡らした布で拭く。
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