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新妻になりました

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 コンコンと、遠慮がちなノックと共にメイド頭のサラがドアから顔を出す。

「ここでなら、リラ様をご覧になりながらお食事ができますわ。お一人で召し上がるのは味気ありませんよね」

「いいんですか? 嬉しい、けど、手間じゃありません?」

「手間だなどと、滅相もありません。今まで気が利かず、申し訳ありません」

 サラは恐縮しきって頭を下げた。

「そんな、とんでもないです! こちらこそ、今までずっとお世話になってたのに」

「私どもに敬語は必要ありませんわ。奥様が私たちにお気遣いなさる必要はありません」

「そう……ですか?」

「そうですとも。では、こちらにお掛けになって。今御運びします」

 ここはシオンのために用意された部屋だ。本当ならリラのための子供部屋も別にあるのだが、目が届かないのは不安なので、同じ部屋に揺籠を置いてもらっている。

 用途は寝室なのに、以前住んでいたアパートの一室がすっぽり収まってしまうほど、この部屋は広い。

 ベッドにキャビネット、文机にテーブル、椅子と、大振りの家具が置いてあっても、相当な余裕がある。

 その上、日当たりの良いバルコニーまで付いている。

「リラ様は今日も良く眠っていらっしゃいますね。ここにいらした時より随分とふっくらなさって」

 手際よくテーブルにクロスを敷くと、サラはワゴンを運び込んだ。

 その間に、哺乳瓶を持ったセシルが退室する。

 食事をサーブしながら、リラの様子をチラリと確認する。

 まるで孫を愛でるような、慈愛に満ちた眼差しだ。

 サラやセシルだけではない。

 この邸で働く者は皆、誠実で心優しい人たちばかりだった。

 皆が優しく接してくれる理由は、皆が邸の主であるヴァイスに全幅の信頼を寄せているからに他ならない。

 シオンはそれをこの3週間で強く感じていた。

 ……とはいえ、肝心のヴァイスは、ほぼ3週間、ずっと邸を留守にしている。

 一緒に過ごしたのは最初の1日だけだ。

 この通り、家の人たちは皆大切に扱ってくれるし、リラは大変可愛いので、勿体無いくらいの待遇には感謝している。

 しかし、夫婦としてはどうなのだろう。

 階級の明確な社会であるようだし、生活様式を見る限りではイメージとしては日本の武家社会より、中世ヨーロッパあたりの貴族に近い。

 形式上の夫婦だったり、夫は遠征や単身赴任などで不在、なんて生活はザラにあるのか。

「大公様は国境領に現れた大型の魔物を討伐するため、国境伯と共に出征中です。今回は結構な大物で、長引いているようです」

「魔物! そんな危険なものがいるんですか?」

 シオンは目を丸くした。
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