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新しい世界
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大人しく捕虜となって、助けを待つ道もあったかもしれない。
しかし、どうしても屈したくなかった。
エミリアはそっと、左手をエドワードの手の甲に乗せた。
すると表情が少しだけ和らいだ。その眼差しは慈愛に満ちている。
とても大切にされているようで、胸が熱くなった。
「それに、エドワード様や皆様のおかげで、私はようやく自由の身になりました。とても言葉では言い尽くせませんが、ありがとうございます」
「そんな。礼なんていいんだ。私は……」
エドワードは困ったように微笑んだ後、すっと自らの手を引いた。
「あの、エドワード様……?」
エミリアは、行き場を失った手を、膝の上でもじもじと動かした。エドワードは首を傾げている。
「どうしたの?」
「できたら、その、今までのように、接して頂けたら……嬉しいのですが……」
エミリアは、何と説明したら良いかわからず、言葉に詰まった。
エミリアの代理人として、リチャードが司教へと届け出を提出していた。
エミリアは不当な扱いを受けていた。
動かぬ証拠の提出と、一連の報道により離婚の申請は受理された。
今頃はフィリップの元にも正式な決定文書が届けられているだろう。
エミリアの行く末は、未だ定まってはいない。だが、ひとまず今だけは自由の身だ。
「今までのように? そうしているつもりだが」
エミリアは、自らの膝に戻された、エドワードの手に目を移した。
固く、大きくて、骨ばった男性らしい手だ。
エミリアを攫ったあの夜から、いつも、エミリアを守ってくれた。
エミリア自身は体中のあちこちを負傷している。
どれも打ち身程度だが、安静にするよう指示されていた。
「手を……握ってくださいませんか」
エミリアは、思い切って口を開いた。
今までは、何の用もなくてもエドワードは事あるごとにエミリアに触れた。
しかし、目覚めてから今までは、一度もない。むしろ、距離を取られているような気さえする。
怪我を気遣ってくれているのかもしれないが、今こそ、エドワードの温もりが恋しかった。
女性からかけるべき言葉ではないと、重々承知している。
それでも、今だけはエドワードから触れてほしい。
「手を?」
エミリアは、こくんと頷いた。
偽らざる本心ではあるが、羞恥心が勝り、顔が熱くなる。
「すみません……何でもありません」
慌てて取り下げようとしたが、それより早く左手を取られた。
しかし、どうしても屈したくなかった。
エミリアはそっと、左手をエドワードの手の甲に乗せた。
すると表情が少しだけ和らいだ。その眼差しは慈愛に満ちている。
とても大切にされているようで、胸が熱くなった。
「それに、エドワード様や皆様のおかげで、私はようやく自由の身になりました。とても言葉では言い尽くせませんが、ありがとうございます」
「そんな。礼なんていいんだ。私は……」
エドワードは困ったように微笑んだ後、すっと自らの手を引いた。
「あの、エドワード様……?」
エミリアは、行き場を失った手を、膝の上でもじもじと動かした。エドワードは首を傾げている。
「どうしたの?」
「できたら、その、今までのように、接して頂けたら……嬉しいのですが……」
エミリアは、何と説明したら良いかわからず、言葉に詰まった。
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エミリアは不当な扱いを受けていた。
動かぬ証拠の提出と、一連の報道により離婚の申請は受理された。
今頃はフィリップの元にも正式な決定文書が届けられているだろう。
エミリアの行く末は、未だ定まってはいない。だが、ひとまず今だけは自由の身だ。
「今までのように? そうしているつもりだが」
エミリアは、自らの膝に戻された、エドワードの手に目を移した。
固く、大きくて、骨ばった男性らしい手だ。
エミリアを攫ったあの夜から、いつも、エミリアを守ってくれた。
エミリア自身は体中のあちこちを負傷している。
どれも打ち身程度だが、安静にするよう指示されていた。
「手を……握ってくださいませんか」
エミリアは、思い切って口を開いた。
今までは、何の用もなくてもエドワードは事あるごとにエミリアに触れた。
しかし、目覚めてから今までは、一度もない。むしろ、距離を取られているような気さえする。
怪我を気遣ってくれているのかもしれないが、今こそ、エドワードの温もりが恋しかった。
女性からかけるべき言葉ではないと、重々承知している。
それでも、今だけはエドワードから触れてほしい。
「手を?」
エミリアは、こくんと頷いた。
偽らざる本心ではあるが、羞恥心が勝り、顔が熱くなる。
「すみません……何でもありません」
慌てて取り下げようとしたが、それより早く左手を取られた。
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