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「違います、エドワード様ったら。私の気持ちがまだ、あの人に残っていると思っていらっしゃるの?」
「だって、違うのか?」
エドワードはしどろもどろだ。
「逆ですよ。振り切れたから、そうしようと思えたのです。自分でも、少し早いような気がして驚いていますが、きっとエドワード様のお陰です」
「私、の?」
エミリアは、エドワードに伝えた。フリップとサンフラン嬢に裏切られ、惨めで狂おしい気持ちになったこと。
二人に報復を願うほど、恨んだ瞬間があったこと。
しかし、エドワードが与えてくれた喜びによって、その気持ちは浄化された。
性根はともかく、フィリップは公人だ。彼に不幸を強いれば、国民を傷付ける結果につながる。
「エドワード様を前にしては、どのような素敵な殿方でも影を薄くしてしまうでしょう。今は、そんな気持ちです」
エミリアはふふっ、と微笑んだ。
エドワードを――愛しているか、それとも一時の気の迷いなのかはまだ、わからない。
ただ、エドワードがフィリップの面影を消してくれたのだけははっきりしている。
好ましく思う自分がいる事も。
見上げれば、初めて受けたエミリアからの賛辞に頬を染めている。
「そんな、エミリア。揶揄わないでくれ」
「揶揄ってなど。言われ慣れているでしょう?」
「慣れ、てない。すごく嬉しい」
エドワードは口元を押さえて、もじもじした。
「そんな風に言われたら、断れなくなる」
「では、連れて行ってくださる?」
エミリアは強請った。
――この、”お強請り”は癖になりそうだ。
相手が受け入れてくれると知っていて、甘えるのは何と気持ちが良いのだろう。
甘やかされる心地よさを覚えさせて、エドワードはエミリアを逃れられないように躾けているのか。
「いいよ、約束だ。君をヴォルティアへ連れて行く」
「ありがとう、エドワード様……」
「その代わり、滞在中は私から離れないと、約束してくれ」
「エドワード様も来てくださるの? でも、エドワード様と親密にしていては、心象を損ねてしまうわ」
「約束できないなら、この話はなしだ。この城こそ、エミリアにとって一番安全な場だ。先方はエミリアを、何としても奪還したがる」
エドワードは、頑として譲らない。
「まさか。国王陛下は公爵令嬢を正妃にしたがっているわ。令嬢だって私が消えたほうが都合が良いはずですよ」
「いいや、ヴォルティア王は昨日、貴女の捜索隊を発足させた。貴女の足跡を辿ろうとしている。リチャードの仕事に抜かりはないはずだから、そう直ぐにヴァルデリアに結びつきはしないだろう。だが」
「……昨日になって。つまり国王陛下は私の不在を隠していたけれど、昨日誰かに気付かれた可能性が高いと仰りたいのね」
エドワードは気まずそうに眉根を寄せた。
「だって、違うのか?」
エドワードはしどろもどろだ。
「逆ですよ。振り切れたから、そうしようと思えたのです。自分でも、少し早いような気がして驚いていますが、きっとエドワード様のお陰です」
「私、の?」
エミリアは、エドワードに伝えた。フリップとサンフラン嬢に裏切られ、惨めで狂おしい気持ちになったこと。
二人に報復を願うほど、恨んだ瞬間があったこと。
しかし、エドワードが与えてくれた喜びによって、その気持ちは浄化された。
性根はともかく、フィリップは公人だ。彼に不幸を強いれば、国民を傷付ける結果につながる。
「エドワード様を前にしては、どのような素敵な殿方でも影を薄くしてしまうでしょう。今は、そんな気持ちです」
エミリアはふふっ、と微笑んだ。
エドワードを――愛しているか、それとも一時の気の迷いなのかはまだ、わからない。
ただ、エドワードがフィリップの面影を消してくれたのだけははっきりしている。
好ましく思う自分がいる事も。
見上げれば、初めて受けたエミリアからの賛辞に頬を染めている。
「そんな、エミリア。揶揄わないでくれ」
「揶揄ってなど。言われ慣れているでしょう?」
「慣れ、てない。すごく嬉しい」
エドワードは口元を押さえて、もじもじした。
「そんな風に言われたら、断れなくなる」
「では、連れて行ってくださる?」
エミリアは強請った。
――この、”お強請り”は癖になりそうだ。
相手が受け入れてくれると知っていて、甘えるのは何と気持ちが良いのだろう。
甘やかされる心地よさを覚えさせて、エドワードはエミリアを逃れられないように躾けているのか。
「いいよ、約束だ。君をヴォルティアへ連れて行く」
「ありがとう、エドワード様……」
「その代わり、滞在中は私から離れないと、約束してくれ」
「エドワード様も来てくださるの? でも、エドワード様と親密にしていては、心象を損ねてしまうわ」
「約束できないなら、この話はなしだ。この城こそ、エミリアにとって一番安全な場だ。先方はエミリアを、何としても奪還したがる」
エドワードは、頑として譲らない。
「まさか。国王陛下は公爵令嬢を正妃にしたがっているわ。令嬢だって私が消えたほうが都合が良いはずですよ」
「いいや、ヴォルティア王は昨日、貴女の捜索隊を発足させた。貴女の足跡を辿ろうとしている。リチャードの仕事に抜かりはないはずだから、そう直ぐにヴァルデリアに結びつきはしないだろう。だが」
「……昨日になって。つまり国王陛下は私の不在を隠していたけれど、昨日誰かに気付かれた可能性が高いと仰りたいのね」
エドワードは気まずそうに眉根を寄せた。
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