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「装飾の少ないワンピースだからこそ、スタイルの良さが際立つのね。流石はソーニャ様、素晴らしいお見立てだわ」
「そうかしら。そう言ってもらえると、私も鼻が高いわ……」
素直なロザリーを前に、ソーニャは言葉を濁した。
(わざと地味な衣装を用意するなんて、子供のような真似をなさる。エミリアは意図を見抜いていたのに、敢えてその服を身に着けたのか)
そこまで考えて、エドワードは眉を寄せた。
ソーニャの意図を汲み取って、敢えて挑発に乗ったというのか。
(エミリアらしいな)
一見すると柔和で、周囲に合わせるように見えるが、芯は強い。
そうでなくては、とても一国を担えなかったろう。
協力を誓った以上、全力でエドワードを守る姿勢を見せてくれる。
エドワードは、頼もしさと美しさの両方に、ますます魅入られた。
「エミリア、こちらに」
エドワードは、エミリアを手招きする。
エミリアが近くに来ると、エドワードは立ち上がった。
そしてそのまま彼女の手を取ると、指先に口付ける。
手袋越しなのに、敏感な指先をかすめたせいか、エミリアは小さく息を飲む。
周囲の令嬢たちが、小さくどよめく。エドワードは、そのままエミリアの腰を抱くと、自分の元へ引き寄せた。
耳元で囁く。
「ありがとう」
(もう貴女を不安にさせるようなことはしない)
それは誓いだ。エミリアは、エドワードの思い詰めた様子を感じ取ったのか、すぐに緊張を解いた。優しい微笑みが口元に浮かぶ。
(何と美しい……)
この笑顔があれば、どんな困難も乗り越えられそうな気がする。
目下、困難は自分の母親である点が、心苦しい。
クロ―ディアは衣装への難癖がソーニャへの侮辱に繋がって、失言をしたと気付いたのだろう。
顔色を青くしている。
イヴリンはクロ―ディアの顔色で、自分がエミリアを褒めてはいけなかったと思い出した。
ソーニャとクロ―ディアを交互に見比べる。
「まあ♡エドワード様って、そんなに甘い仕草をなさるんですね。エミリアさんにだけですか?」
ロザリーだけが無邪気にエミリアに纏わりつく。
しかし、しっかり、エドワードとエミリアの間に割って入ったので、二人を引き離したとも考えられる。
「少し、距離が近いのでは?」
エドワードは意識して、牽制した。しかし、エミリアが眩しいばかりの微笑みを浮かべたので、ロザリーは悪びれ
もしない。
結局3人とも、ソーニャに招かれたエドワードのお妃候補だ。
エミリアを失意に追い込むよう、言い含められているはずだった。
「殿下って、お側に寄ると遠目に見る以上に背が高くていらっしゃるのね。腕も、お袖の上からもわかるほど逞しい」
ロザリーは、不意にエドワードの腕に触れた。その爪先は小さく、赤いマニキュアで彩られている。
「それに、髪も瞳もソーニャ様と同じ漆黒で、とてもお美しい」
ロザリーは、じっとエドワードを見つめる。
許可もなく勝手に腕に触れられて、エドワードは不愉快だった。しかし、ここで事を荒立てても仕方がない。
「そうかしら。そう言ってもらえると、私も鼻が高いわ……」
素直なロザリーを前に、ソーニャは言葉を濁した。
(わざと地味な衣装を用意するなんて、子供のような真似をなさる。エミリアは意図を見抜いていたのに、敢えてその服を身に着けたのか)
そこまで考えて、エドワードは眉を寄せた。
ソーニャの意図を汲み取って、敢えて挑発に乗ったというのか。
(エミリアらしいな)
一見すると柔和で、周囲に合わせるように見えるが、芯は強い。
そうでなくては、とても一国を担えなかったろう。
協力を誓った以上、全力でエドワードを守る姿勢を見せてくれる。
エドワードは、頼もしさと美しさの両方に、ますます魅入られた。
「エミリア、こちらに」
エドワードは、エミリアを手招きする。
エミリアが近くに来ると、エドワードは立ち上がった。
そしてそのまま彼女の手を取ると、指先に口付ける。
手袋越しなのに、敏感な指先をかすめたせいか、エミリアは小さく息を飲む。
周囲の令嬢たちが、小さくどよめく。エドワードは、そのままエミリアの腰を抱くと、自分の元へ引き寄せた。
耳元で囁く。
「ありがとう」
(もう貴女を不安にさせるようなことはしない)
それは誓いだ。エミリアは、エドワードの思い詰めた様子を感じ取ったのか、すぐに緊張を解いた。優しい微笑みが口元に浮かぶ。
(何と美しい……)
この笑顔があれば、どんな困難も乗り越えられそうな気がする。
目下、困難は自分の母親である点が、心苦しい。
クロ―ディアは衣装への難癖がソーニャへの侮辱に繋がって、失言をしたと気付いたのだろう。
顔色を青くしている。
イヴリンはクロ―ディアの顔色で、自分がエミリアを褒めてはいけなかったと思い出した。
ソーニャとクロ―ディアを交互に見比べる。
「まあ♡エドワード様って、そんなに甘い仕草をなさるんですね。エミリアさんにだけですか?」
ロザリーだけが無邪気にエミリアに纏わりつく。
しかし、しっかり、エドワードとエミリアの間に割って入ったので、二人を引き離したとも考えられる。
「少し、距離が近いのでは?」
エドワードは意識して、牽制した。しかし、エミリアが眩しいばかりの微笑みを浮かべたので、ロザリーは悪びれ
もしない。
結局3人とも、ソーニャに招かれたエドワードのお妃候補だ。
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「殿下って、お側に寄ると遠目に見る以上に背が高くていらっしゃるのね。腕も、お袖の上からもわかるほど逞しい」
ロザリーは、不意にエドワードの腕に触れた。その爪先は小さく、赤いマニキュアで彩られている。
「それに、髪も瞳もソーニャ様と同じ漆黒で、とてもお美しい」
ロザリーは、じっとエドワードを見つめる。
許可もなく勝手に腕に触れられて、エドワードは不愉快だった。しかし、ここで事を荒立てても仕方がない。
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