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事件
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確かめてみたいけれど、今はそのような疑問を投げかけている時ではない。
まったく、タイミングの悪い話だ。せっかくエミリアの心が傾きかけたかもしれないところで。
横やりを入れられたら、まだ簡単に揺るぎかねない。
「ところで、どうなさいましたの? 何かあっていらしたのですよね?」
「実は……」
リチャードは説明しかけて、エドワードを伺った。
「私から話すよ。エミリア……これから宮殿に戻ると、多分、3人の女性が私たちを出迎える」
エドワードはため息交じりに告げる。隠し事をして後に露見すると、一番質が悪い。
それにエミリアは頭が切れるし勘もいい。適当に煙に巻いて誤魔化せる相手ではない。
「そうなのですか。……それはいったいどのような」
「貴女がヴォルティアの王妃だと、母上が気付かれたようだ。それで、有力な子女を集めて」
「ああ、なるほど。エドワード様の恋人候補として呼ばれたのですね」
エミリアは、こちらが言い切る前に手を叩いた。
無意識に紡がれただろう”恋人候補”の言葉が痛い。
エドワードは眉根を寄せる。エミリアの声が淀む素振りはない。動揺もしてくれないのか。
「そうでしょうね。当然の反応ですわ」
「理解してくれてると思うが、私にその気はない。愛しいと思うのは……妻にしたいと願う女性は貴女だけなんだ」
「そう……仰らずに。会ってみなければ分かりませんよ」
エミリアのこの回答に、エドワードはぐっと拳を握る。
これは、エミリアの気遣いだろうか? それとも本心だろうか?
「すると私は、とんだお邪魔虫ですわね。早々にお暇しなくては」
「いや、それは違う! 邪魔などではない。貴女はここにいて欲しい」
エドワードは慌ててエミリアの手を取った。
「お引止めくださって、嬉しいです。けれど、それがエドワード様のためなのですよ。もし、お許しいただけるなら、今晩お泊め頂いて、明日にでもお暇します」
エミリアの頑なさが、もどかしい。
エドワードがエミリアに夢中なのを知っていて、つれない態度を貫いている。
私のことを、どうとも想っていないから取れる態度か?
いや、確かにエミリアの心は動きつつある。
「お願いだ、エミリア。どうか私の願いを聞いてくれ」
「エドワード様、私……貴方を困らせるようなことはしたくありませんの」
エミリアは、やんわりと振りほどこうとする。しかし、エドワードもそう易々と手を放すつもりはない。
「ああもう! だから、私は余計に……!」
「リチャード様、どうかエドワード様をお願いしますね。後ほど、王宮でお会いしましょう」
エミリアは、そう言って、来た道を引き返そうとする。
エドワードはその手を引き寄せ、胸に抱き寄せた。
「きゃっ」
「貴女をこのまま連れ去りたいよ! もういっそ、拐って閉じ込めておきたい」
エミリアはエドワードの腕の中で、身を固くする。
「エドワード様……もう、お放しください。私は、そのようなことは望んでいません」
「……ならば、私を受け入れてくれる? 私に守らせてくれる?」
エドワードはそっと囁いた。
この腕から逃したくはない。けれど、それ以上にエミリアを守りたい。
「いかがしますか? このままお2人でどこかへ落ちのびる……、選択もございますが」
「それは、いけません!」
まったく、タイミングの悪い話だ。せっかくエミリアの心が傾きかけたかもしれないところで。
横やりを入れられたら、まだ簡単に揺るぎかねない。
「ところで、どうなさいましたの? 何かあっていらしたのですよね?」
「実は……」
リチャードは説明しかけて、エドワードを伺った。
「私から話すよ。エミリア……これから宮殿に戻ると、多分、3人の女性が私たちを出迎える」
エドワードはため息交じりに告げる。隠し事をして後に露見すると、一番質が悪い。
それにエミリアは頭が切れるし勘もいい。適当に煙に巻いて誤魔化せる相手ではない。
「そうなのですか。……それはいったいどのような」
「貴女がヴォルティアの王妃だと、母上が気付かれたようだ。それで、有力な子女を集めて」
「ああ、なるほど。エドワード様の恋人候補として呼ばれたのですね」
エミリアは、こちらが言い切る前に手を叩いた。
無意識に紡がれただろう”恋人候補”の言葉が痛い。
エドワードは眉根を寄せる。エミリアの声が淀む素振りはない。動揺もしてくれないのか。
「そうでしょうね。当然の反応ですわ」
「理解してくれてると思うが、私にその気はない。愛しいと思うのは……妻にしたいと願う女性は貴女だけなんだ」
「そう……仰らずに。会ってみなければ分かりませんよ」
エミリアのこの回答に、エドワードはぐっと拳を握る。
これは、エミリアの気遣いだろうか? それとも本心だろうか?
「すると私は、とんだお邪魔虫ですわね。早々にお暇しなくては」
「いや、それは違う! 邪魔などではない。貴女はここにいて欲しい」
エドワードは慌ててエミリアの手を取った。
「お引止めくださって、嬉しいです。けれど、それがエドワード様のためなのですよ。もし、お許しいただけるなら、今晩お泊め頂いて、明日にでもお暇します」
エミリアの頑なさが、もどかしい。
エドワードがエミリアに夢中なのを知っていて、つれない態度を貫いている。
私のことを、どうとも想っていないから取れる態度か?
いや、確かにエミリアの心は動きつつある。
「お願いだ、エミリア。どうか私の願いを聞いてくれ」
「エドワード様、私……貴方を困らせるようなことはしたくありませんの」
エミリアは、やんわりと振りほどこうとする。しかし、エドワードもそう易々と手を放すつもりはない。
「ああもう! だから、私は余計に……!」
「リチャード様、どうかエドワード様をお願いしますね。後ほど、王宮でお会いしましょう」
エミリアは、そう言って、来た道を引き返そうとする。
エドワードはその手を引き寄せ、胸に抱き寄せた。
「きゃっ」
「貴女をこのまま連れ去りたいよ! もういっそ、拐って閉じ込めておきたい」
エミリアはエドワードの腕の中で、身を固くする。
「エドワード様……もう、お放しください。私は、そのようなことは望んでいません」
「……ならば、私を受け入れてくれる? 私に守らせてくれる?」
エドワードはそっと囁いた。
この腕から逃したくはない。けれど、それ以上にエミリアを守りたい。
「いかがしますか? このままお2人でどこかへ落ちのびる……、選択もございますが」
「それは、いけません!」
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