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占い師の私と騎士団副団長
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「この薄汚い流浪の魔女ユーフェミーア!!今すぐこの街から出ていけ!!」
にぎやかな街の広場で、若い騎士を従えた銀髪碧眼で長身の美しい騎士が、その綺麗な顔を歪めて私を指差した。
もう、キレていいよね?
ずっとガマンしてきたんだから。
物心ついた頃から私は流浪の占い師をしていたおばあちゃんと一緒に旅をしてきた。各地を転々とする中で占いの技術を学び、この街に居を構えてすぐ亡くなったおばあちゃんの後を継いで 占いを生業としていたのだが、2年前に赴任してきた近衛騎士団副団長はどうも私が気に入らないのか、ことあるごとに絡んできては、言いがかりをつけにやってきた。
広場で占いをしていれば、「魔女だ!!」と罵られ、屋台で食事をしていたら、「下品な食べ方を!!」と言われるわ、街唯一の図書館で勉強のため占いの本を読んでいれば、「貴様のような奴が入る場所ではない!!」と追い出されるなど、ことあるごとに私に罵詈雑言を浴びせたり、嫌がらせをしてきた。あと、私の名前は
ユーフェミ-アではなくユフイミナだ。
今日にしても、若い男女を占っていたら、突然、副団長が怒りの形相で走ってやって来て、お決まりの罵詈雑言を浴びせた上、冒頭の台詞を言い放った。
「………わかりました。」
そう言うと、私はポカンとしている騎士様達を横目に仕事道具を片付け、鞄の中へと収納していく。
「おっ…オイ、何をしている……?」
「……そんなに言うのならば、出ていきますよ。サヨウナラ。」
そう言うと、鞄2つを両手に持って 騎士様達に背を向けて立ち去った。
「「「………………えっ!??」」」
「……っ、何でだあぁぁ!!」
私が立ち去ったあと、広場に副団長の叫び声が響き渡った。
「何で……何でなのだ?何でユーフェミーアは去ってしまったんだ?」
「何でって……副団長が行ったんですよ。『街から出てけ』って。」
「っ……それは言葉のアヤで、本気で言ったつもりではなかったんだ。」
「……ってか、副団長。いつもあの子にそんな態度で接してきたんですか?」
「は?それが何だ?」
「いや……あんな態度とられたら、嫌われると思われてもおかしくないですか。」
「はっ、嫌われているだと、ふざけるな!俺はユーフェミーアが将来、貴族の生活に困らないように教えているだけだ!!」
「『男に色目を使う何て!!』ってキレるのの何処が教えてるんですか。しかも、あの時恋人らしい女性がすぐそばにいたじゃないですか。」
「うっ………」
「副団長、さっき貴族の生活とか、騎士団の詰所でも彼女は自分が好きなんだって言ってますけど、どう見ても副団長の一方的な片思いですよね。」
部下のその一言がグサリと胸に刺さり、副団長は項垂れてしまった。
「………副団長?」
「………………せ。」
「へっ?」
「今、何ていいまし…「ユーフェミーアを探せえ~!!」…って、探してどうするんですか。」
「見つけ次第、俺の元に連れて来て………結婚する。」
「「はあぁぁ~!!??」」
「うるさい、さっさと探すんだ!!」
驚く部下2人を叱責すると、副団長は何処かへと立ち去ろうとしていた。
「どこに行くんですか?」
「彼女の家に向かう。おそらくまだいるはずだ。」
と、格好つけたのだけれどこの時、副団長は忘れていた。 数日前に大家さんを脅し私を家から追い出して、家具やおばあちゃんの形見の品をすべて処分したことを空き家となった元我が家を見て、大家さんに指摘されるまですっかり頭の中から消えていた。
「何でそんな事したんですか?」と部下が問いただすと、「家さえ追い出されれば、俺の元に来ると思ったし、何より囲いこめると思った。」とのことだ。
そんなことは知らない私は行商人の馬車に乗せてもらい3日後、行商人と別れ、隣国行きの船に乗るため港町に到着した。
その同じ頃、副団長が私が行商人と一緒にいるとの目撃情報から港町に向かって馬を走らせていた。
このあと私は無事、副団長から逃れ隣国に辿り着いたのか、それとも副団長に捕まったのか。
その結末は神のみぞ知る。
ーーー-------------------------------登場人物
ユフィミナ
16歳 祖母の後を継いだばかりの占い師 作中では語らなかったが、褐色の肌に黒髪黒目の容姿の持ち主。 実は家を追い出された時、副団長の策略で宿にも泊まることができず広場で寝泊まりしていた。
近衛騎士団副団長
28歳 2年前に赴任したばかり
ユフィミナに一目惚れし、ちょっかいという名の嫌がらせと言いがかりをつけてきた。
銀髪碧眼のイケメン。 貴族の三男坊で王都にいた頃は女性にモテモテだった。 自己中心的な性格
若い騎士2人
最近配属されたばかり。副団長に憧れていたが、今回の件で失望する。
にぎやかな街の広場で、若い騎士を従えた銀髪碧眼で長身の美しい騎士が、その綺麗な顔を歪めて私を指差した。
もう、キレていいよね?
ずっとガマンしてきたんだから。
物心ついた頃から私は流浪の占い師をしていたおばあちゃんと一緒に旅をしてきた。各地を転々とする中で占いの技術を学び、この街に居を構えてすぐ亡くなったおばあちゃんの後を継いで 占いを生業としていたのだが、2年前に赴任してきた近衛騎士団副団長はどうも私が気に入らないのか、ことあるごとに絡んできては、言いがかりをつけにやってきた。
広場で占いをしていれば、「魔女だ!!」と罵られ、屋台で食事をしていたら、「下品な食べ方を!!」と言われるわ、街唯一の図書館で勉強のため占いの本を読んでいれば、「貴様のような奴が入る場所ではない!!」と追い出されるなど、ことあるごとに私に罵詈雑言を浴びせたり、嫌がらせをしてきた。あと、私の名前は
ユーフェミ-アではなくユフイミナだ。
今日にしても、若い男女を占っていたら、突然、副団長が怒りの形相で走ってやって来て、お決まりの罵詈雑言を浴びせた上、冒頭の台詞を言い放った。
「………わかりました。」
そう言うと、私はポカンとしている騎士様達を横目に仕事道具を片付け、鞄の中へと収納していく。
「おっ…オイ、何をしている……?」
「……そんなに言うのならば、出ていきますよ。サヨウナラ。」
そう言うと、鞄2つを両手に持って 騎士様達に背を向けて立ち去った。
「「「………………えっ!??」」」
「……っ、何でだあぁぁ!!」
私が立ち去ったあと、広場に副団長の叫び声が響き渡った。
「何で……何でなのだ?何でユーフェミーアは去ってしまったんだ?」
「何でって……副団長が行ったんですよ。『街から出てけ』って。」
「っ……それは言葉のアヤで、本気で言ったつもりではなかったんだ。」
「……ってか、副団長。いつもあの子にそんな態度で接してきたんですか?」
「は?それが何だ?」
「いや……あんな態度とられたら、嫌われると思われてもおかしくないですか。」
「はっ、嫌われているだと、ふざけるな!俺はユーフェミーアが将来、貴族の生活に困らないように教えているだけだ!!」
「『男に色目を使う何て!!』ってキレるのの何処が教えてるんですか。しかも、あの時恋人らしい女性がすぐそばにいたじゃないですか。」
「うっ………」
「副団長、さっき貴族の生活とか、騎士団の詰所でも彼女は自分が好きなんだって言ってますけど、どう見ても副団長の一方的な片思いですよね。」
部下のその一言がグサリと胸に刺さり、副団長は項垂れてしまった。
「………副団長?」
「………………せ。」
「へっ?」
「今、何ていいまし…「ユーフェミーアを探せえ~!!」…って、探してどうするんですか。」
「見つけ次第、俺の元に連れて来て………結婚する。」
「「はあぁぁ~!!??」」
「うるさい、さっさと探すんだ!!」
驚く部下2人を叱責すると、副団長は何処かへと立ち去ろうとしていた。
「どこに行くんですか?」
「彼女の家に向かう。おそらくまだいるはずだ。」
と、格好つけたのだけれどこの時、副団長は忘れていた。 数日前に大家さんを脅し私を家から追い出して、家具やおばあちゃんの形見の品をすべて処分したことを空き家となった元我が家を見て、大家さんに指摘されるまですっかり頭の中から消えていた。
「何でそんな事したんですか?」と部下が問いただすと、「家さえ追い出されれば、俺の元に来ると思ったし、何より囲いこめると思った。」とのことだ。
そんなことは知らない私は行商人の馬車に乗せてもらい3日後、行商人と別れ、隣国行きの船に乗るため港町に到着した。
その同じ頃、副団長が私が行商人と一緒にいるとの目撃情報から港町に向かって馬を走らせていた。
このあと私は無事、副団長から逃れ隣国に辿り着いたのか、それとも副団長に捕まったのか。
その結末は神のみぞ知る。
ーーー-------------------------------登場人物
ユフィミナ
16歳 祖母の後を継いだばかりの占い師 作中では語らなかったが、褐色の肌に黒髪黒目の容姿の持ち主。 実は家を追い出された時、副団長の策略で宿にも泊まることができず広場で寝泊まりしていた。
近衛騎士団副団長
28歳 2年前に赴任したばかり
ユフィミナに一目惚れし、ちょっかいという名の嫌がらせと言いがかりをつけてきた。
銀髪碧眼のイケメン。 貴族の三男坊で王都にいた頃は女性にモテモテだった。 自己中心的な性格
若い騎士2人
最近配属されたばかり。副団長に憧れていたが、今回の件で失望する。
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