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第2話
しおりを挟むそんな幸せな日々がひと月ほどつづいた、ある吹雪の日のことです。
あまりにもひどいお天気なので、ターシャはお母さんから1日お外に出てはいけないと言われました。
今までならつまんないなぁ……とがっかりするターシャでしたが、今は違います。お星さまに絵本を読んであげたり、いっしょにあやとりをして遊ぶのです。
お星さまは両手のほかにとげとげにも毛糸を引っかけて複雑なあやとりをしてくれます。
それを見たターシャはやっぱり目をまるくして「すごいすごい!」と言うので、またまたお星さまがうれしそうにピカリと光ります。
楽しい時間の中、暖炉のそばで丸くなっていたマルクとオリガが突然立ち上がり、耳をぴんと立てて外のほうを見ました。
「マルク? オリガ?」
ターシャが声をかけても、2ひきはその場から動こうとしません。お父さんが困ったような顔をしていいました。
「まさか、誰かいるのか? こんな猛吹雪の中だぞ?」
「大変! きっと誰かが遭難しているんだわ」
お母さんもそう言ってドアを開けましたが、とたんにものすごい雪が風とともにぶわーっと入り込んできて、ドアの外は真っ白でなにも見えません。
お母さんはあわててドアを閉めて言います。
「ダメだわ。なにも見えないし、聞こえないわ。向こうもこっちが見えないでしょうし、どうしたらいいのかしら」
「しかたない。俺が様子を見てこよう」
出かけようとするお父さんを、お母さんはひっしで止めます。
「だめよ! あなたまで遭難してしまうわ」
「しかし、近くに誰かいるかもしれないんだぞ」
ふたりが言いあいをしていると、お星さまが突然こう言いました。
「あのう、僕が行ってもいいですか?」
「えっ!? お星さま、あぶないよ!」
ターシャは思わず大声をだしましたが、お星さまはほほえみます。
「大丈夫。僕は寒くないし、それにこの家の前から離れないから」
「?」
お星さまの言うことがよく分からないターシャを置いて、お星さまはドアの外に出てしまいました。するとすぐに窓の外がぱあっと明るくなります。
ターシャは冷たい窓ガラスにほっぺたをくっつけて外を見ました。
「お星さまが光ってる!」
「ああ、目印になってくれているのか」
お星さまは、以前オオカミを追い払ってくれた時のようにピカピカと光っています。そして宙にふわりと浮きあがり、おうちの屋根くらいの高さまで上りました。これなら猛吹雪の中でも、その黄色い暖かい光は遠くまで届きそうです。
そのまましばらくすると、マルクとオリガがワンワンと吠え始めました。そして。
コンコン、コン。
ターシャのおうちのドアをだれかがノックしました。お父さんがドアを開けると、ひとりの男の人が倒れるように入ってきました。ガタガタとふるえ、真っ青な顔でちいさくつぶやきます。
「た、たすけて下さい……」
「……早く暖炉のそばへ! ターシャはお湯をタライに入れてくれ!」
「はい、温かいお茶をどうぞ。ゆっくり飲むんですよ」
お父さんがその人を暖炉のそばのイスにすわらせ、ターシャが用意したタライに冷えきった手と足をつけて温めます。お母さんは男の人のくちもとにカップをあて、お茶を飲ませました。男の人の顔色が少し戻ると、彼は同じ村の少し離れたところに住む人間だとみんなも気づきました。
「なんでこんな日に出かけるようなバカなことをしたんだ!」
「すみません……子どもが熱を出して、ちょうど薬が切れていたので……少し無理をしてでもお店まで行こうと思って……」
「熱ざましならうちにありますから少しお分けしますよ。吹雪がやむまで休んでいってください」
「吹雪がやんだら犬ぞりで送ってやるから、今は温かくしているんだぞ」
お父さんとお母さんがくちぐちにそう言っている間にお星さまが戻ってきました。
「どう? だいじょうぶだった?」
「お星さまありがとう! お星さまが光ってくれたおかげで、ほら!」
ターシャが男の人とお星さまを引き合わせると、男の人はびっくりしましたが、すぐに涙を流してお礼を言いました。
「お星さま……お星さま、ありがとうございます。あなたが光でこの家を教えてくださらなかったら、私は今ごろ吹雪の中をさまよって死んでいたでしょう。あなたは命の恩人です」
「そんな……僕には光ることしかできませんから」
お星さまがてれながらもピカリと光るので、ターシャはにっこりしました。
「お星さまってすごいねぇ! また命の恩人になっちゃったよ」
◇◆◇◆◇◆
それから何日かたって。
お隣の家の人が犬ぞりでターシャのおうちにやってきました。
この人はうわさばなしやおしゃべりが大好きな人です。
「なあ、ここにお星さまがいるんだって? お星さまに命をすくわれた!……って村のはじに住んでる男が言ってたぞ」
「あ、ああ……いるぞ」
お父さんは少し困りながらもお星さまをお隣さんに紹介しました。お隣さんは面白そうにじろじろとお星さまを見て、あいさつをして帰っていきました。お父さんはその後ろすがたを見ながら、とても怖い顔をして言います。
「これは……まずいかもな」
ターシャはなにがまずいのかさっぱりわかりませんでしたが、良くないことが起きそうだと思いました。怖くなってお星さまにぎゅっと抱きつきます。
「ターシャ? どうしたの?」
最近のお星さまは、いつもぽかぽかしています。最初の時よりも、光もつよくなりました。お父さんもお母さんも「薪や油がせつやくできて助かるわ、ありがとうお星さま」といつも言っています。
……ふしぎです。とってもふしぎです。
『空から落ちた星はだんだんと力をうしなって、空に戻ることも光ることもできなくなって、ただの石になるんだよ』
お星さまはたしかにそう言っていたのに。
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*砕けた文体を使用しています。肩の力を抜いてご覧ください。暇つぶしにでもなれば。
*この物語はフィクションです。実在の人物、団体、場所とは一切関係ありません。
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