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3.流石にまずいです…
しおりを挟む「父上…落ち着かれましたか…?」
「あぁ…取り乱してしまいすまない…。」
ペンを折ったついでにインクをひっくり返してしまい大切な書類が大変な事になってしまった。父の仕事を増やしてしまった。反省だ。
今は改めて客間に移動してお茶を飲みながら向かい合っている。
「それで…エルカルト殿と婚約解消とはどういう事だ?」
「はい。エルカルト様は以前から私を初恋の相手と私を比べては貶めるような言葉ばかり投げかけてきていたのです。"シャティは本当に優しくて美しい。それに比べてお前は氷のように冷たい"など、会う度にそのような言葉を数多く言われました」
「なん…だと…!」
父の顔が怒りで見る見る赤色に染まっていく。
「なぜセアラは父である私に言わなかったのだ…!」
「ごめんなさいお父様…。お父様に心配をかけたくなかったのです…。彼は一応侯爵家の人間ですし、この伯爵家を継ぐことになる予定だったので父に悪い印象を与えるべきではないと思ったのです…」
「セアラ…馬鹿な事を…。心配くらいかけてくれ。親は子を心配する事が生き甲斐なのだからな」
そう言って微笑む父を見て今まで否定され続けてきた自分が、浄化されるような気分になった。
「お父様…ありがとうございます」
「しかし…エルカルトの奴め…。不貞をしていると言う事か?」
「いえ、そこまでは掴めていないのですが、エルカルト様は私の事を愛し合う二人を引き裂く悪魔と言っておりました」
「ぬぁっに……悪魔だと!?セアラほどの天使はどこにもいな…いやいや、ごほん。どの口がそんな事を言えるんだっ!!ルーツベット侯爵が余りにも切実に頼み込んできたのだぞ…!?数年前に起きた天災でルーツベット侯爵家も領地運営が傾いて来ていて憐れに思い婚約を了承したものの…!!許さん……!!こちらから婚約なぞ解消したいものだ!」
そこまでルーツベット侯爵は切羽詰まって婚約を取り付けたのね…。
恩を仇で返された父は怒りで震えている。
こんなにも怒りをあらわにする父は初めて見た。
いえ、それにしても17歳の娘を天使とは親バカが過ぎる…。
「しかし…それならばエルカルト様がどれだけ婚約解消を望んでも、ルーツベット侯爵が婚約解消を受け入れるとは思えません…」
「あぁ…。きっと息子から話を聞いて明日にでも馬を飛ばして謝罪に来るだろう。一度侯爵と話してみよう」
エルカルトが婚約解消を望んでも、父であるルーツベット侯爵が許可しなければ婚約解消は難しいだろう。
不貞をしている証拠は無いし、エルカルトは私と2人の時にだけシャティ様の名前を出すのだ。
そんな事は言っていないとしらばっくれられると非常に厄介だ。
「さあ…侯爵とエルカルトはどんな顔をしてどんな謝罪の言葉を並べるだろうな…屋敷に来た際に事故に見せかけエルカルトを亡き者に…いや流石にそれはまずいか…」
父が顎に手を当ててブツブツと呟いている…。
そうですね…流石にまずいです…。
どんな話し合いになるのだろう。
問題なく婚約が解消されますように…。
次回エルカルト視点です。
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