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32.生誕祭4

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「そして確か君は…レヨング伯爵家の息子だったな?君も何か騒ぎを起こしていたようだけれど…先程の不届者と君は関係があるのか?」


皇太子様が顔面蒼白で佇んでいるダンテに問いかける。

「あっ…」
「いえっいいえ!!何も関係ございません!!」

言葉が詰まるダンテの頭を再び押さえつけ、レヨング伯爵が慌てて答える。その額から一瞬の内に吹き出した汗が滴り落ちる。


「そうか。しかしどのような理由があれど、この私の祝いの場で騒ぎを起こすなど褒められたものでは無いな。それに…君は学園で色々と良くない噂も聞いているからな。次は無いと思え」

「うっ…はっはいっ…」

全身震えながらダンテが喉の奥から声を振り絞る。
それ程までに、皇太子様の声色は冷たく周りにも緊張が走る。

「さぁ、湿っぽいのはお終いだ。皆、存分に楽しんでくれ」

そう言って皇太子様が玉座へ向かい歩みを進められ、会場に張り詰めた緊張も少し緩む。

ダンテとレヨング伯爵はその場に佇み動けないでいたが、パーティが進むに連れていつのまにかどこかへ行ったようだ。

「シャティア、私達も改めて皇太子様の元へ挨拶とお祝いの言葉を贈りに行こう」

「はい」

ユーリス様と2人で皇太子様の元へ向かい、挨拶をしお祝いの言葉を述べる。

「皇太子様、改めましてシャティア.ハードラーでございます。本日は誠におめでとうございます。先程はお見苦しい姿をお見せして申し訳ございませんでした」

「君がシャティア嬢か。いや、良いんだ。あの女を追い出したのは私情もあってね」

ふふっと笑いながら皇太子様が言う。
皇太子様とアリエラが関わる事などあまり無さそうなので、予想外な返答に驚く。


「私情…ですか…?」

「あぁ。私の可愛い婚約者のマーガレットから君達の事は聞いていたんだ。"学園に何とも節操も教養も無い女がいて、友人が被害を被っていて不憫でならない"とね。マーガレットが陰であの女を注意したら、"僻みですか~?"なんて言われたと言うから、腹が立っていたんだ、な、マーガレット」

「あ、皇太子様。陰で注意した事は内緒でしたのに…。ふふ、でも結果的に良かったですわ。今のシャティア様はユーリス様と婚約されてとっても幸せそうですもの」

そう皇太子様の隣で微笑むのは、あの日私がダンテに大勢の前で覚えの無い罪で断罪された時に救い出してくださった友人のマーガレット様。

マーガレット様は皇太子様の婚約者という立場であっても、とても謙虚で誰に対しても分け隔てなく優しくしてくださった。
まさか、私の事を心配して陰でアリエラに注意してくださったり、皇太子様に相談してくださったりしていたなんて…。


そんなマーガレット様の事を皇太子様はとても深く愛されている。その事は周知の事実なのだが…。そんなマーガレット様に悪態をつくアリエラは余程何も考えていなかったのだろう。


今日の主役である皇太子様を独占するわけにはいかず、少し話をして失礼する。



やはり先程の件もあり、ユーリス様とお近づきになりたい人も多く、声をかけて来る人は後を絶たなかった。

やっと一息ついた時には流石に疲れが襲った。


「色々な方に、婚約の報告周りをして疲れたでしょう。夜風に少し当たりましょうか。飲み物を取ってきますね」

そう言ってバルコニーへ移動し、ユーリス様が私を気遣い飲み物を取りに行く。
疲れた頭に夜風が気持ち良い。

ふと後ろに人の気配を感じて振り返ると、そこにいたのはダンテだった。



散々、父に関わるなと言われ、皇太子様に皆の前で忠告されたのにも関わらず近付いてくる彼には最早拍手を送りたい程だ。


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