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26.愚かな者たち(アリエラ、他視点)

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ダンテの部屋を出た、レヨング伯爵夫人にメイドが声を掛ける。


「お、奥様…僭越ながらその…よろしいのですか?ダンテ様にあのような事を言われても…。その…旦那様に知れたらお怒りになられるのでは…」

今回の件で、レヨング伯爵は大層お怒りだ。
ダンテがシャティアにドレスを贈っただなんて知られたら次は謹慎どころではすまないかもしれない。

「うるさいわね!分かっているわ!だから絶対に旦那様には知られないようにしなさいよ!もしハードラー子爵家から手紙が届けば旦那様に見せる前に私の所に持ってきなさい!じゃないとアンタの首が飛ぶわよ!!」

「ひっ…わかりました…!」

鬼のような形相の夫人に恐れ慄いたメイドは足早にその場を離れていく。

1人その場に残された伯爵夫人は爪を噛みながら、その苛立ちを隠そうとしない。


「くっ…こちらが有責の婚約解消なんて、また後継から遠ざかってしまうわ…!何とかして…何とかして…婚約解消を無しにしないと….」


ダンテは伯爵家の三男だが、長男と次男とは腹違いの兄弟だ。
死に別れた前妻の子である2人の兄達は優秀だと言われているが、現夫人の子であるダンテだけは平凡でどこか頼りない。


それでも伯爵夫人は何とかしてダンテをレヨング伯爵の後継にしたかった。

そのためには、ただでさえ評価の低いダンテが有責で婚約解消するなんてあってはならない事なのだ。
しかもシャティアは優秀と噂の令嬢で、子爵家とはいえ、経済力も高く何としても繋がりを持ちたい相手だ。


何とかシャティアの機嫌を取り、婚約解消を無かった事にしなければならない。


「それに…!我が子が生誕祭という国1番のパーティでエスコートする相手も無く1人でいるなんて惨めで耐えられないわ…!大丈夫…シャティアだって1人で参加したくないハズだわ…」


そう自分に言い聞かせるものの、夫人は不安から爪を噛む事をやめられなかった。




生誕祭までもう少し。

愚かな考えを持つ人物がもう1人いた。



ーーーーーーー※アリエラ視点


「おかしい!おかしい!!おかしいわ!!!」

謹慎させられてから随分経ったけれど、誰も会いに来ないどころか、私の身を案じるような便り1つ無い。毎日私付きのメイドに確認するけれど、何も届いていないの一点張り。

何よりおかしいのは、もうすぐ生誕祭だというのにユーリスからドレスも宝石も花束も何1つ届かない事!!


「どうして…?ユーリスも生誕祭には参加するのは間違い無いのに、なぜドレスが届かないの?」

エスコートする相手に、パーティで着るドレスを贈る事は当然の事なのに。
それが、直前になってもまだ届かないなんて…。私の事を心配してユーリスも隣国から帰ってきたはずなのに…!!

「私から催促の手紙でも送ってやりたいけど、手紙1枚も送れないし…」


謹慎期間中お父様が目を光らせている為、全く外部と連絡を取る事ができない。

「はぁ…」

思えば、昔からダンテもだけどユーリスは顔は良いクセに女心を全く分かってなかったわ…。
パーティの前にドレスや花を贈る事も知らないのかしら…。もう、イヤになっちゃう。


生誕祭の会場で会った瞬間にいーーーっぱい溜まりに溜まった文句を言ってやろっと!!



仕方ないから、ドレスは自分で用意するか…。
って思ったけれど、ドレスも宝石も殆ど売ってしまったんだった…。


…チッ…どこまでもシャティアあの女は私を邪魔する……。


仕方ないから、ケビンお兄様のお嫁さんのドレスを勝手に借りちゃおう…。
お母様と私、あまりにも体型が違うのよね~。

ユーリスの瞳と同じエメラルドグリーンのドレスにしよーっと♪


ふふっ。
シャティアあの女は私にダンテを盗られたと騒いで婚約破棄したせいで1人でトボトボ生誕祭に参加するのよね。

残念でした~!
私はそのダンテよりも良い男ユーリスと参加しまーす!

私の姿を見れば、地団駄踏んで悔しがる事間違いナーシ!!
あぁ、楽しみだわ!!!


ふふっ


「あーーーっはっはっはっはー!!」


部屋の前を通りかかったアリエラの兄であるケビンがその笑い声を聞いて、
「遂に本当に狂った…」
と青褪め頭を抱えたのだった…。


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