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20.昔も今も

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結局ユーリス様が帰られた後、お父様は先走ってしまい話にならないし、夜も色々と考えてしまって眠る事ができなかった。


今日、またユーリス様はいらっしゃると言っていたけれど…。
昨日は勢いのまま言ってしまっただけでやっぱり昨日の発言…『私が婚約者に立候補しても…』は取り消したいなどと言われるかもしれない…。


そんな事を考えていると、扉がノックされた。

「おはようございます」

そこには、昨日よりも少しだけかしこまった服装のユーリス様の姿が。

「おはようございます…」

昨日は気が動転して気付かなかったが、ユーリス様は昔よりも随分と背が高くなり、身体つきも逞しく成長されていた。
そして、誰もが羨む端正な顔立ち。

昔と変わらないのはその綺麗なエメラルドグリーンの瞳。


昔はこの瞳が綺麗だと思って思わず見入ってしまっていた。そうするといつもプイッと顔を背けられてしまっていたけれど。


でも今は、昔と違ってユーリス様は私の目から目線を逸らさない。


(やっぱりユーリス様のエメラルドグリーンはなんて綺麗なのかしら…)


思わず見入ってしまうと、ユーリス様がその目を細めた。

「シャティア嬢…?」

(はっ!私ったらこんなに見つめてしまって…!)


「あっ…すみません、私ったら…ユーリス様の瞳があまりにも綺麗で吸い込まれてしまいそうで…」


(って私ったら、思った事を口に…!)


恥ずかしい…と思い、チラリとユーリス様の方を見るとユーリス様は驚いた顔をしながら顔を真っ赤にして顔を背けている。


(可愛い…)

思わず口に出てしまいそうになるが慌てて言葉を飲み込んだ。



「ありがとう…ございます。私の瞳といえば…。昔、貴女に私の瞳と同じ色の石を贈った事を覚えていますか?」


「勿論覚えています。私、とても嬉しくて今でも宝箱に入れてあります」


勿論覚えているし、何よりユーリス様も覚えてくださっていた事が嬉しい。


「本当ですか⁉︎嬉しいな、こんなに嬉しい事があっても良いのですかね…?あれは、あの石を見れば私を思い出してくれれば…と思って渡したのです」



「えっ⁉︎」



それならば、その狙いは十分に達成されている。
あの石を見る度にユーリス様の事を考えたのだから。
でも…一体なぜユーリス様は…。



「シャティア嬢、もう一度改めて申し込ませてください。私、ユーリス・マテリアは貴女の事が好きです。どうか私と婚約して頂けませんか?」


そのエメラルドグリーンに見つめられると目が離せない。

「あ…私はユーリス様に嫌われてしまっていたと思っておりました…。いつも私から目線を逸らせていらしたし、話しかけても口数少なく、時には素っ気無いお返事をされる事もありましたから…」

私が戸惑いを隠せずにいると、ユーリス様は驚いた顔をする。

「嫌われ…⁉︎そんな事あるわけ無いでしょう?私はいつも貴女が来るのを心待ちにしていました。その…目を見つめる事ができなかったり上手に話す事ができなかったのは、その…恥ずかしかったからで…」


モゴモゴと恥ずかしそうに頬を掻くその仕草に、昔のユーリス様を思い出す。

そういえば、昔のユーリス様もよくこうやって頬を掻いていらっしゃったけど、恥ずかしがっていただけだったのね…。


「ふふっ…」


昔を思い出して思わず笑ってしまう。

そんな私を見てユーリス様も微笑む。

あぁ、やっぱり幼い頃の私はユーリス様が好きだった。
そして今の私も今のユーリス様を知りたいと思っている。


でも、やはり婚約解消したばかりの身…。
そんな思いが葛藤する。


「勿論、今すぐにお返事を頂けなくても構いません。私の気持ちを伝えたかったのです。さぁ、良ければこの国の事を案内させてくれませんか?美味しいケーキがあるお店も知っていますよ?」


そんな私の葛藤に気付いてか、少し冗談めかしてユーリス様が私に提案する。



「ありがとうございます。美味しいケーキ。それは気になります」



そう言って差し伸べられる手を取るのだった。



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