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8.こんなはずでは(ダンテ視点)

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「ダンテ~ッ!授業で分からなかった所があるんだけど教えてくれない⁉︎2人で勉強しましょ!」


アリエラにシャティアを紹介した次の日から、何故かアリエラが僕に纏わりつくようになった。
学園に仲の良い友人がいないのだろうか…。

初めのうちはシャティアもいる事だし、アリエラの事を煩わしくさえ思っていた。


しかし、今まではユーリスに夢中で僕の事ことなんて少しも興味が無かったのに、その好意が自分に向くようになった事に少しずつ自尊心が満たされていく気持ちが生まれてきた。


その上、僕とアリエラが仲良くしているとシャティアの機嫌が少し悪くなったり、仲良くしないで欲しいだなんて我儘を言ったりするようになった。


シャティアが僕に嫉妬してくれている…。
シャティアは完璧で学力だって到底敵わない。政略結婚であって、僕には何も興味が無いと思っていた彼女が僕とアリエラに嫉妬している。


良くない事だとは分かっていても、こんなにも美人で素晴らしい女性が自分の事で嫉妬してくれる事が快感になってしまっていた。


しかし、アリエラの婚約者が卒業してから、さすがにアリエラの行動が酷くなってきた。シャティアが僕にヤキモチを妬いてくれる事は嬉しかったけれど、シャティアと2人で過ごす事ができないのでは面白くない。そろそろアリエラに距離感を考えろと言わなければならないなと思っていた時、事件が起こった。


なんと、アリエラがシャティアに見下されるように暴言を吐かれた、僕に近付くなと脅された、皆の前で恥をかかされたと、泣いて訴えて来たのだ。


まさか…とは思ったが、アリエラは泣いて震えている。僕はここまでシャティアを追い詰めてしまっていたのだろうか…。
嫉妬からこのような愚かな行為をしてしまう事は大いに考えられる。


さすがに僕の婚約者と言っても、僕の幼馴染を虐めても良い理由にはならない。ここはシャティアをきちんと叱り、どちらが上かをハッキリさせておくのも良い機会だろう。それに、それがシャティアの為だ。


そう思って、シャティアを呼び出し問いただそうとしたのだが…。


シャティアはそんな事言って無いと言うし、恥ずかしいのは僕達なのだと言う。
その上、僕とアリエラが恋仲であるかのように言うのだ。

(こんな女と!?冗談じゃない!!)


そう思って必死に否定したが、周りの生徒達の声にその場から逃げ出してしまった。


優しいシャティアならきっと追いかけて来てくれるはず…!!


そう思ったが、追いかけて来たのはアリエラだった。


「ちょっとダンテ!置いていかないでよ!!」

「アリエラのせいで!!シャティアに誤解されてしまったじゃないか!!もしかしてシャティアに暴言を吐かれたなんて嘘だったんじゃないか!?もう近付かないでくれ!」

もっと早くこうすべきだったのに…
よくよく考えると、立派な淑女であるシャティアがそんな愚かな行為をするとは考えにくい。


「はぁっ!?私に近付いてきて私の事好きなのはダンテでしょ?私のせいにしないでよ」

「なっ何を言ってるんだ!僕がアリエラの事を好きになった事なんて無い!」

「強がらなくて良いのよ、私が話しかけるといつも嬉しそうにしてたじゃない!」


「そんな事!!」


……無いと言い切れるのだろうか…。
ユーリスじゃなくて僕に興味を向けてくれて少なからず嬉しかった。シャティアが嫉妬してくれるのが嬉しかった……。


悪いのはアリエラだけでは無い。
アリエラを利用してシャティアの気を引こうとしたり、自分の自尊心を満たそうとしたりした僕の醜い心が原因だ…。


シャティアに会ったら、誠心誠意謝ろう。

そう思っていたが、彼女は1人で帰ってしまったようだった。


(しょうがない、週明け真っ先に謝ろう)


そう思っていたのに…。

その2日後に届いたシャティアのハードラー子爵家からの手紙には信じられない内容が記されていて僕は絶望するのだった。



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