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23.招かざる者
しおりを挟む∴フルール視点
店の閉店後、
扉がいつ開くかとそわそわしてしまう。
なぜならば今日は、エーリク様が指輪を取りに来る予定の日だからだ。
他の女性への贈り物だとしても、エーリク様に会う事を楽しみにしている自分がいる。
共に来店できない相手…。もしかしたらもうすぐ隣国へ嫁がれる王女様に…?
そんな事を考えていると店の扉が開いた。
「エーリク様」
そう言って立ち上がろうとすると…
そこに居たのは待ち侘びたエーリク様では無く…
「カルロ……」
顔は酷くやつれて、髪は乱れ、服は汚れてボロボロだが、そこに立っていたのは間違いなく元夫カルロだった。
「フルールゥ…迎えに来た…!待たせたな…!」
「2度と顔を見せないでと言ったはずよ。私と貴方はもう終わったのよ。待っているはずが無いでしょう?」
「何だよ!!まだ拗ねているのか!!この半年本当に長かった!余りにも酷い仕打ちだ!!しかし、俺はそんなお前を許そう!!また結婚してやるよ!フルールには俺しかいないだろう!?」
何を言っているのだこの人は…。
本当に半年経てば再婚できると思っていたのか…。
許してやる?結婚してやる?俺しかいない?
私の仕事だけでなく、私をどこまで馬鹿にすれば気が済むのか…。
「貴方とやり直す気は全く無いわ!店に来たら不倫の慰謝料も払ってもらうと言ったでしょう?しっかり払って貰うわ!」
「こっの…。こっちが下から出れば調子に乗りやがって…!ちょっと仕置が必要なようだな!!こんな気の強い可愛気のない離婚歴のある女なんて俺の他に誰が拾うっていうんだ!」
そう言ってカルロがこちらに近付き私に手をかけようとしたその時。
「いてっっ!!」
「何を言っているんだ?こんなにも芯が強くて凛とした素晴らしい女性は私はフルールさんしか知らない」
突然現れたエーリク様が、あっという間にカルロの腕をひねりあげ床に押さえつけた。
「エーリク様!」
「フルールさん、遅くなってすみません。今日に限って仕事で足止めを食らってしまいまして…」
「おっお前はあの時も…!俺達夫婦の問題だ!もしかしてフルールと浮気しているのか!?許せなっううぅ!」
エーリク様がカルロを押さえつける力が強くなる。
「許せない?私はお前を許さない。フルールさんを傷付け、更に醜く未練がましく付き纏うお前を!」
「ぐぅっお、お前には関係…ないっ…」
「関係あるさ。私は今からフルールさんに結婚を申し込もうと思っているからな!!」
えっ!?どういう事…!?
エーリク様が…私に…!?
でも指輪は王女様にでは…!?
いえ、きっと今のは私を助けるための嘘だろう…。
そう思いつつも胸が早鐘を打つ。
「な、何だって…!?フルールは俺の嫁だっ!そして俺はまたこの店のオーナーになるんだっ…!そうだろ!?フルール!!そうだと言ってくれ!でないと俺はこれからどうすれば良いんだ!こんな男より共に過ごしてきた夫の方が大切だろ!?俺を選んでくれぇ…」
救いを求めた目で必死に訴えてくる元夫カルロ。
何て……
醜いのだろう…?
どっちを選ぶ?決まっているじゃない。
「さようなら、カルロ…私が貴方の名前を呼ぶのはこれで最後よ…」
そう言うと、カルロの顔は絶望に染まった。
終わる終わる詐欺申し訳ございません…!
25話にて完結です。
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