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15.純真(エーリク、王女視点)
しおりを挟む∴エーリク視点
「友人になってくれませんか!!」
勇気を振り絞ってフルールさんにそう伝えると、フルールさんは驚いたような顔をして固まっている。
し、しまった……!!
助けた見返りに友人になってくれだなんて……!!
幻滅されてしまったのかもしれない……!!
「そっその!友人であれば助け合う事は当然なことであって、気を遣う必要が無いのではと思いまして…!いや、決して下心があるわけでは無く…」
ああああ
私は何を言っているんだ…。
必死に言い訳した方が怪しいに決まっているし、下心があると言っているようなものでは無いか…。
いや、下心は少しだけある…。
フルールさんと友人になれば、理由も無く会いに来ても不自然では無いし、できればもっと親交を深めたい…。って私は何を!
脳内が騒ぎ立てる中チラリとフルールさんを見ると、少し驚いた表情をした後、
「良いのですか…?私で良ければ勿論喜んで…!」
そう言って天使の微笑みをくれたのだった…。
あぁ勇気を出して言って良かった…!!
「では、そろそろ帰りますが何かあればいつでも頼ってください。その…友人ですから!」
友人…!なんと良い響きなのだろうか…!
「はい、ありがとうございます」
その笑顔に心浮き立つが、だらしない顔を見せたくない…!必死に冷静を装い礼をして店を出て行くのだった。
∴王女視点
私には優秀な護衛騎士がいる。
名をエーリクと言う。
真面目が過ぎるほど真面目なエーリクは今まで一度も休む事か無かったが、先日、血相を変えて突然1日休みが欲しいと懇願してきた。
私が人攫いに狙われても、矢が飛んできてエーリクの頬をかすめた時も顔色1つ変えずに冷静だったエーリクが必死になる理由が何か気になった私は少し意地悪をしてみる事にした。
「3日後ねぇ…。その日は少し難しいかもしれないわ」
「うっ…そこを何とか…」
「理由を教えてくれたら考えるわ」
「う…実は…」
3日後は何も予定は無いし、護衛騎士はたくさんいる。
その為、エーリクが1日休もうが何とも無い。
しかし、真面目なエーリクは観念したように話始めた。
フルールの夫がフルールを裏切っていて、そんなフルールを助けたい。だから休みが欲しいという。
フルールは努力家で気立てが良く、芯の強い素晴らしい女性だ。何度も仕立てに王宮にも来てもらっていてよく知っている。
エーリクがフリージアのオーナーのフルールに好意を持っている事は薄々気付いていたが、既婚者なのでエーリクの恋路を応援する事はできなかった。
しかし、そのような事情ならエーリクの背中を押そう。
「護衛騎士としてエーリクの腕は私が保証しますわ。私もフルールは好きよ。必ずフルールの力となってきなさい」
「はっ!必ず!」
そうしてエーリクを送り出した。
ー2日後。
「シャティ王女、おはようございます」
エーリクが部屋に入り私に挨拶をする。
表情も声もいつも通りだが、長い時間ともに過ごした私には分かる。
確実にエーリクは今、上機嫌だ。
「おはよう、エーリク。ふふ、その様子ではフルールと上手くいったようね」
「はっ、王女様のおかげです」
ほう…。
恋愛には疎いと思っていたエーリクが中々やるじゃない。
夫の元から奪い去ってもう自分のモノにしたのかしら?
「まぁ、それは良かったわ。進展があったようね?」
と探りを入れると、なんと…!!
「ゆ、友人になってほしいと言ったら了承を頂きました…」
とエーリクが少し頬を染めながら言ったのだ…。
ゆ、友人になって欲しい…?
戦場を駆け回り鬼神とも恐れられたこの男が…!
結婚適齢を越えた一人の男が…!
意中の女性を危機から救い出し、友人になれたと頬を染め喜んでいるのだ……。
「……貴方は護衛騎士としての腕前は保証するけど、男としてはまだまだダメなようだわ…」
「えっ、えっ!?」
王女は頭を抱えるのだった…。
∴次回、メリッサ視点です。
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