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8.不倫現場に突撃
しおりを挟む「そう仰るなら、自分の息子に直接浮気していないか問いただしてみてはいかがですか。本当に浮気をしていなければ私は、誠意を持って皆様に謝ります」
私の目が真剣な事に気付いた義父は少し怖気づいたようだが、義母は身を乗り出して答えた。
「え、ええ!では確認しに行くわ!あの子の事だもの!違うに決まってるわ!ねえ!アナタ!」
「あ、あぁきっとフルールの思い過ごしだ…」
そう自分達に言い聞かす義両親を連れてメリッサさんの家へ向かう。
外へ出ようと義両親の家の扉を開けると、エーリク様が立っていた。
そうだ、さすがに家の中までついてきてもらう事は気が引けたので家の前で待っていて貰っていた…。
義両親はエーリク様を見て一歩後ずさりする。
それもそうだ。
鍛え抜かれた身体な上長身で存在感がとてつもない。
「フ、フルール貴女、息子のことを浮気しているとかなんだ言って、貴女も男性と二人で仲良くしているようじゃない…」
義母が怯えながらも私に言う。
すると、それを聞いたエーリク様が義母に何かを見せつけた。
王宮の護衛騎士の証明バッヂだ。
「変な勘ぐりをして頂いては困る。私は護衛だ」
義母を上から見下ろしてそう言うと、義母はその迫力に気圧されてコクンと頷くだけだった。
時計を見るともう3時を少し回っている。
急がなければ…。歩く速度を上げる。
夫の不貞現場を見る為に急ぐなんておかしな話だ。
そしてメリッサさんに貰った地図の場所へ辿り着く。
義実家の家から歩いて15分程しか離れていない。
こんな近い場所で堂々と浮気しているなんて…。
私の夫はこんなにも馬鹿だったのか…そんな夫の愚行に私は気付かなかったのか…と不貞現場に乗り込む前に1度落ち込む。
「フルールさん、大丈夫ですか?辛ければ、代わりに私が乗り込んで取り押さえて来ますが…」
そんな私を見て、エーリク様が心配そうに私の顔を覗き込む。
「いいえ、違います。エーリク様お気遣いありがとうございます。しかし、私はこの目でしっかり見届けたいと思います」
そう言うと、エーリク様が頷く。
私もエーリク様を見て頷き、扉をノックする。
返事は無い。
今日はメリッサさんに直々に招待されている身だ。
ドアノブを握り扉を開く。
そこには誰もいない。
「あ、貴女人の家に勝手に入って知らないわよ…!やっぱり息子がこんな所にいるなんてデタラメを言って…」
「しっ!!」
義母の小言をエーリク様が遮る。
私達は静かに部屋に上がった。
奥の部屋からどうやら聞き覚えのある声が聞こえてくる。
義父はその声に気付いたようで、どんどん顔面蒼白になっていく。
奥の部屋に近づくに連れてその声は大きくなり、義母も気付いたようで青ざめていく。
「カルロさまっ!カルロさまっ!もっと私に愛していると仰ってくださいっ!」
「あぁ生意気なやつめ!!社長に向かってそんな生意気な事言う奴にはお仕置きだ!!」
「あぁぁ!早く奥さんと別れて私と結婚してええ」
「クッ!アイツが俺と別れたく無いって泣いて縋って俺の店から出ていかないんだよ!!」
随分とお楽しみのようだ。
…………もう証拠としては十分よね?
誰が社長?
誰が泣いて縋っているって???
誰の店って????
扉を開けようと手を伸ばす前に、
気付いたら、エーリク様が部屋の扉を蹴破っていた。
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