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妹だと思っていた幼馴染が無理矢理ついてきたので

ヒューゴ(1)

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 アンは俺の3歳年下の幼馴染みだ。

 親同士の仲が良く、よく一緒に遊ばされたが、気が付けばいつも俺の後ろについてきていた。

 アンはどんくさくて、臆病で、泣き虫で、はっきり言って邪魔だった。
 でも、アンと一緒に遊ばないと親が怒るので、仕方なく遊んでやった。
 幸いあいつは俺の言うことは何でも聞いたので、なかなか使えた。

 俺が腹が減ったと言えばおやつを持ってきたし、おもちゃを寄越せと言えばすぐに渡してきた。
 アンが泣くと親がうるさいので、他のやつに苛められたり、迷子になった時は仕方なく助けてやったりもした。
 アンは俺のことを何度も好きだと言っていたが、俺にはそういう気持ちがよくわかんなかったから、好きって便利だな位にしか思っていなかった。

 俺は自分で言うのもなんだが、運動神経はいいし、喧嘩は強いし、頭もいいし、おまけに顔も良かった。
 村の学校に通い始めると、剣の試合ではいつも一番だったし、テストだって満点だった。

 アンは事あるごとにすごいすごいと俺を褒め称え、まわりの連中も俺を慕ってきていたので、あの頃の俺は自信の塊だった。
 本気で、俺に出来ないことはないと思っていた。

 18歳の時、隣町に王国の一団が来たと言うので皆で観光がてら見に行った。
 どうやら伝説の剣を抜ける人物を探しているらしい。
 詳細はよくわかんないけど面白そうなので皆でやろうと、人だかりへ向かおうとすると、アンにぐいっと服を掴まれた。

「…………何?離せよ、」

 アンは俺に行くなと言わんばかりに、力を入れていた。
 その顔は今にも泣き出しそうで、どこか怯えている。
 いつもと違うアンの様子に違和感を覚えたが、特に気に止めず人だかりへ再び向かおうとすると、更にぎゅっと服を引っ張られた。

「ま、待って!行っちゃだめ!」

 アンが俺に意見を言うことなんてなかったから少し驚いたが、腕を振りほどいて人だかりへ入っていった。

 皆伝説の剣を抜こうと次々に挑戦しては、諦めていく。

「っんんんんんん!!っはぁーー!やっぱだめだ!抜けねぇ!おい、ヒューゴやってみろよ」
 
 村で一番体のでかいテルーが挑戦するも、呆気なく断念する。

「おしきた!俺が抜いてやるよ!」

「ははは!俺が抜けなかったんだ!やれるもんならやってみろよ!」

 自分の番が回ってきて、剣を渡される。
 それは何処にでもありそうな平凡な剣に見えた。華美な装飾はなく、幾何学的な紋様が鞘や柄に彫られている。
 ただ、何かが普通じゃなかった。どこがどうとか上手く説明できないけど、ものすごくその剣に惹きつけられて仕方がない。

 俺が伝説の剣を手にすると、鞘が全体的に淡く光り始めた。握りしめた柄に手が吸い付いて、離れない。
 そのまま力を入れずにゆっくり引っ張ると、鞘から光輝く剣が出てくる。
全て引き抜くと、人だかりは静寂に包まれた。

 皆光輝く剣に目を奪われて、ポカンと立ち尽くしていた。
 しばしの静寂の後、地鳴りのような大歓声に広場は包まれた。
 そこでようやく自分でも何が起こったのか理解できた。

 伝説の剣が抜けた……つまり、俺が、勇者??

 回りの男達がバシバシと肩を叩いてくる。
 知らないおじさんに肩車され、空高く剣を掲げると、割れんばかりの歓声が辺りを包んだ。

こうして俺は勇者として魔王を倒す旅に出ることになったのだった。

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