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悠馬
※episodeー6
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「かすみ、これ食いたいって言ってた出張のお土産」
「わあ、ありがとう!混んでた?買うの大変だったんじゃない?」
「すげー行列だったよ。なんかテレビで紹介されたとかで」
「そうそう!この前テレビでやってて食べてみたいなーって思ってたら、悠馬がそっちに出張行くって言うんだもん。つい無理言ってお願いしちゃった。並んでるのも女の人ばっかだったでしょ。恥ずかしかった?」
「いや、同僚も一緒に並んでたから恥ずかしくはなかったかな。それに結構男も並んでたし。多分、俺みたいなのが」
「うん、でもありがとう!わあ、美味しそう。悠馬も今食べる?」
「いや、俺はいーや。腹一杯だし」
「そうなの?帰りになんか食べてきた?」
「ああ、ちょっとな」
「一人?」
「……いや、同僚と」
「ふーん……もしかしてだけど、さっきから言ってる同僚って、女の人?」
「……も、いた。あー悪い、メールすればよかったな。もしかして作ってくれてた?だったら食べるよ」
「……いーよ別に。大したものじゃないし。お腹一杯なのに無理して食べてもらうようなもんじゃないし」
「悪かったって。じゃあ、取っておいて。明日食べるから」
「いいってば、本当に。予定があるなら無理して私のとこになんて来てくれなくて良かったのに」
「かすみ」
「同僚とご飯食べてくるから今日は行けない、ってメールすればいいだけじゃん。私に言われなきゃ黙ってるつもりだったの?それってさ、やましいことがあるからだよね。女の人もいたって言うけど、本当は二人だったんじゃない?出張だって仕事じゃなくてその人とふたりでー」
「かすみ!!」
「…っ」
「いい加減にしろよ。何でそう喧嘩腰なんだよ。メールしなかったのは悪いと思ってる。帰り際に急に決まって、食って帰るだけだからそんなん時間はかからないと思ってメールしなかった。出張はもちろん仕事だし、今回は俺含めた男二人女一人で行った。やましいことなんて何もない。今までだって、そんなこと一回もない。かすみは、そんなに俺のことが信じらんないのか?そんなに俺の言動は不誠実なものか?」
「……」
「こんなんばっかだな、最近。喧嘩ばっかだ。わざわざ会いに来て、こんなんとか」
「生産的じゃない、って?わざわざ来てくれたのに、私のせいで嫌な思いさせてごめんね。ほら、だから私のとこなんか来ないで、同僚と一緒にいれば良かったんだよ」
「揚げ足取るなよ」
「ほら、今からでも行きなよ。私のことなんてお構いなく」
「……」
「出張で疲れてわざわざ来たのにこんな彼女じゃ、そりゃ嫌だよね」
「……」
「すぐに怒って面倒臭いって思ってるでしょ。やっぱりさ、悠馬は私のことなんて、全然好きじゃないんだよ。私のことなんて、これっぽっちも考えてない。なんで私がこんなになっちゃうのか、全くわからないでしょ」
「……」
「……なんか、言ってよ」
「かすみ」
「……なに?」
「俺達、別れよう」
「……」
「別れたほうがいい。俺も、お前も。限界だろ」
「……」
「俺、帰るから。ここにはもう、来ない」
「……」
「いいんだな?」
「……わかった」
「……そうか、じゃあ……今まで、ありがとうな」
※ ※ ※
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