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改革の風、吹き荒れる!猫貴族と天才令嬢の奮闘記

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 カウネール邸の書斎。
 僕は地図を広げ、耳をピクピクさせながら新しい学校の設置場所を検討していた。

「ここに建てれば、周辺の三つの村から通えるはずにゃ」

 リリアが隣で頷く。「そうね。でも、先生の確保が課題になりそう」

 教育改革案が可決されてから一ヶ月。僕たちは具体的な実施計画の策定に奔走していた。

 そんな時、ノックの音。

「失礼します」ジェームズが入ってきた。「ロナウド様がお見えです」

 ロナウドは少し疲れた表情で入ってきた。

「やあ、二人とも。順調?」
「ロナウド!」僕は飛び上がって出迎える。「どうしたの?」

「実は、ちょっと厄介なことが起きているんだ」

 ロナウドの表情が曇る。

「クロフォード皇子の支持者たちが、改革に対する反対運動を始めているらしい」

「にゃんだって!?」僕の尻尾が驚きで膨らむ。

 リリアが眉をひそめる。「具体的に、どんな?」

「主に、貴族の子弟の特権が失われるという不安を煽っているようだ。それに…」

「それに?」僕とリリアが身を乗り出す。

「ウルの…その、人間じゃない姿を利用して、改革の正当性を疑問視する声も出ているんだ」

 僕は耳をぺたんと伏せた。「やっぱり、僕のせいで…」

「違うわ、ウル!」リリアが強く言った。「あなたの姿こそが、この改革の本質を表しているのよ。外見や出自に関係なく、才能と意志を尊重する。それが私たちの目指す教育じゃない」

 ロナウドも頷く。「そのとおりだ。それに、君たちの改革案を支持する声も多いんだ。特に、地方や庶民の間では大きな期待が寄せられている」

 僕は少し勇気づけられた。「そっか…じゃあ、僕たちにできることは?」

「そうだな」ロナウドが腕を組む。「まずは、改革の具体的な内容と意義を、もっと広く伝える必要がありそうだ」

 リリアが立ち上がった。「そうね。各地を回って、直接説明会を開くのはどうかしら」

「それはいい考えだ!」僕も尻尾を振って賛同する。

 その時、アルフレッド皇子が急に現れた。

「やあ、みんな。忙しそうだね」

「殿下!」三人で慌てて頭を下げる。

「いや、そんな堅苦しくしないで。実は、父上…国王陛下が、君たちに会いたがっているんだ」

「え?」
「どういうことでしょうか?」

 アルフレッド皇子は笑顔で答えた。「父上も、この改革にとても興味を持っているんだ。直接、進捗を聞きたいそうだよ」

 僕とリリアは顔を見合わせた。国王陛下との謁見。これは大きなチャンスだ。

「分かりました。しっかりと準備して伺います」リリアが答える。

 アルフレッド皇子が頷く。「期待しているよ。それと…」
 彼の表情が少し曇る。「クロフォード兄上の動きには注意したほうがいい。まだ諦めてはいないようだからね」

 僕たちは決意を新たにした。

 その夜、カウネール邸の庭園。月明かりに照らされた青い薔薇の下で、僕とリリアは静かに語り合っていた。

「ねえウル、私たち、きっと乗り越えられるわ」
「うん、一緒なら何だってできる」

 リリアが僕に寄り添う。その温もりが、僕に勇気を与えてくれる。

「それにしても」リリアがくすっと笑う。「国王陛下に、猫の姿で謁見するなんて、面白いわよね」

「うぅ」僕は少し赤面する。「緊張するにゃ…」

 二人の笑い声が、夜空に響く。

 明日からは、また新たな挑戦が始まる。
 でも、この絆があれば、どんな困難も乗り越えられるはず。

 青い薔薇が、そっと頷いているように見えた。
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